岸田総理は、分配をより重視する姿勢を打ち出して政権に就いたが、税制改正の中で分配を重視する考え方は具体的にどのように貫かれているか。また、分配というキーワードをあえて挙げているのは、日本の所得の分配において不公平感が高まっているというデータがあるからか。
岸田総理は、分配をより重視する姿勢を打ち出して政権に就いたが、税制改正の中で分配を重視する考え方は具体的にどのように貫かれているか。また、分配というキーワードをあえて挙げているのは、日本の所得の分配において不公平感が高まっているというデータがあるからか。
岸田内閣は、成長と分配の好循環の実現、分配の鍵となる賃上げなどを目指している。
NISAの抜本的拡充・恒久化により、貯蓄から投資へのシフト、家計の資産所得倍増を目指し、スタートアップエコシステムの抜本的強化、研究開発税制の見直しなどを通じ、企業がより多くの付加価値を生み出すことで、賃上げ努力等と相まって家計の所得向上につながることが期待される。同時に、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等を行うこととしている。
成長と分配の好循環という考え方の背景は、1980年代以降、市場に依存し過ぎることにより公平な分配が行われず、結果として格差が拡大してきたという認識がある。
1990年代以降、社会保障や税による再分配後の所得のジニ係数はおおむね横ばいで推移する一方、資産の格差は拡大をしていると指摘される。
2021年9月に自民党総裁選に挑まれた岸田総理が政策の柱に掲げたのが、令和版所得倍増だったが、いつの間にか資産所得倍増に変わり、NISA制度につながった。
資産所得倍増プランは、家計に眠る現預金を投資につなげることで企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で企業にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を実現させるために制定されたものだと言った。
日本も1980年代後半までは、日本人の家計の現預金が銀行や保険会社を通じて日本企業に投資され、日本の企業が上げた利益の多くが金融機関に配当され、そこから預金者である国民に分配されていた。国民は銀行にお金を預けておくだけで、金利という形で十分な利益を享受できたが、国際的な規制を掛けられたことで日本の金融機関が日本企業の株を持てなくなり、その多くを外国人投資家に買われてしまい、国内でお金が回る仕組が壊された。
日本の金融機関が持っていた日本企業の株をこのときに国民に買わせておけば、日本企業が生み出す利益が国民に分配されていたはずだが、その後の政権は、ROEを上げろ、株主に配当だと言い続け、日本企業の上げた利益の多くが海外投資家に流れて、日本人の所得が上がらなくなってしまった。これが、失われた30年の一つの要因だと思う。
NISA拡充で集まった資本の何割が日本企業への投資に回るのか。
資産所得倍増プランでは、5年間でNISAの買付額を現在の28兆円から56兆円に倍増させるということになっている。
他方、NISA制度における国内外別の投資の内訳は把握していないが
現状のつみたてNISAの適用商品:221本
国内資産のみを対象とした商品:52本
国内資産と海外資産の両方対象:108本
海外資産のみを対象とした商品:61本
今後ともNISA対象の投資に海外資産が含まれるということは事実で、投資対象のトレンドは、その時々によって、経済状況によって変わり得るので、日本への投資について確たることを申し上げることは難しい。
投資の対象として魅力ある日本の金融資本市場が構築するということが重要。
NISAの積立てで利回りがいいのはアメリカのS&P500、外国資本に流れるという傾向だとすると、日本の資本が流出しているということになる。
外国人の投資家に負けない金融教育が必要。金融リテラシーの向上政策に向けて方針はあるのか。
外国の資産に投資する場合、為替リスクやカントリーリスクを正しく理解しておくことが重要。
金融経済推進会議が定めた金融リテラシーマップの中に、円高・円安の意味、為替相場の変動が経済に及ぼす影響等についての項目が入っていて、金融商品の選択を理解する項目が入っている。長期積立てによる投資、投資先も地域に分散していくという手法は、リスクを軽減するのにも役立つ。
健全な金融市場が広がっていくように取り組んでほしい。
民間と協力し、国産のSNSを開発し、国民の資産を投資してもらって利益を上げて、国民に非課税でその配当を払う仕組を考えてほしい。国の情報セキュリティーも向上し、民間の事業も生まれ、国民の資産も有効に活用でき、国民に利益を分配できる。
世界では、再公営化も進んでいる。何の事業に投資するかを国民が選べるようにすれば、国民の政治参加意識も高まる。
多額の資本が必要で、日本企業が手を出せず、外国資本に持っていかれそうな事業を国と日本企業が組んで、NISAなどで集めた国民の資産で事業を行い、国民に非課税で配当を渡すといった仕組を考えられないか。
資産を確実に増やすこと
国に必要な事業の税負担を減らして、その利益が国民に分配されること
この2つの取組についてはどう考えるか。
我が国の家計金融資産、2,000兆円超、その過半が現預金として保有されている中で、貯蓄から投資へシフトさせることは重要。
家計のその投資対象として我が国の魅力を高め、投資が向かいやすい経済環境を整えていくことが重要。
岸田内閣では、政府が民間の予見可能性を高めるため、効果的・効率的な支出を思い切って行うことで民間投資を喚起する。
国民は、国産のSNSや戦闘機の製造、水道事業を外国資本に取られたくないという思いが強い。
国民の家計の資本集めて何かやろうという機運があるのであれば、有効な事業を国が旗振りをして民間企業を引っ張って、かつてのように護送船団と言われてもしっかりと国民の富が国内で循環する仕組をつくってほしい。