NEWS

2024.05.21

次世代の教育を支えるための奨学金制度拡充に関する質問主意書

令和6年5月17日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『次世代の教育を支えるための奨学金制度拡充に関する質問主意書』
 

 日本国憲法第二十六条第一項は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定め、教育の機会均等を理念に掲げている。この理念を実現するために、日本学生支援機構(JASSO)は、経済的理由で高等教育の機会が限られる学生に奨学金を提供している。現行の奨学金制度は「給付型」、「貸与型(無利子)」、「貸与型(有利子)」の三形式が存在する。
 

 一九四三年以降、奨学金制度は多様化し、給付型奨学金では国立大学の学生に年間三十九万九千六百円、私立大学の学生には年間五十一万円が支給されている。しかし、現在の大学の学費は、国立で年間約五十三万五千八百円、私立では平均約九十五万九千二百五円と高額化しており、給付型奨学金だけで学費を賄うには不十分である。さらに、給付型奨学金の対象者も限定されており、その結果、多くの学生が貸与型奨学金に依存している。そのため、卒業後に高額な借金を背負うこととなってしまう現状がある。
 

 国際的な観点から見ると、スウェーデンなどの福祉国家では学費が無料で、学生の生活支援も充実しており、学生は経済的な負担なく教育を受けることが可能となっており、我が国とは大きな違いがある。この違いから学ぶべき点は多く、特に学生の経済的負担を軽減するための政策が求められる。
 

 労働者福祉中央協議会の調査によると、奨学金の返済が生活に与える影響について、「結婚に影響がある」と回答した人は三十七・五%、「出産に影響がある」と回答した人は三十一・一%に達している。さらに、我が国は、若者の自殺率も高く、政府は二〇二二年以降、自殺者統計に「奨学金の返済苦」を新たに追加した。これは、奨学金の返済が若者の精神的な健康に及ぼす影響が顕著であることを示唆していると考える。
 

 政府が提唱する「次元の異なる少子化対策」の一環として、給付型奨学金制度の拡充だけでなく、返済中の世代への支援も急務である。経済的な制約に左右されずに公平な高等教育を受ける環境を整えることは、教育の機会均等を実現し、国の未来を担う若者を支援する上で極めて重要である。このような取組は、持続可能な社会の構築にも不可欠であることから、具体的な施策の迅速な実施が求められる。
 

 以上を踏まえ、質問する。
 


我が国においては、大学院卒や大学卒と高校卒との間に顕著な賃金格差が生じており、高等教育の有無は将来生活を左右する社会的ステータスとみなす先入観が形成されていると見られる。学歴で卒業後の就業での賃金格差が顕著である現状を、政府はどう見るのか。例えば、令和五年賃金構造基本統計調査によれば、高卒者の平均年収は大卒者のそれ(約三百六十九万円)に対して九十万円近くも下回る約二百八十二万円であり、現在の我が国では共稼ぎしたとしても結婚に支障を来す水準と考えるが、政府はどう見るか。高卒者を含む若年労働者の所得引き上げについて、政府はいかなる計画を持っているのか。
 


国公立・私立を問わず、大学の学費が高騰している。特に私立大学は、平均でも四年間で三百六十八万五百十四円となり、国立大学の同値(二百十五万四千五百四十四円)を百五十万円以上も上回り、その差は一・七倍である(総務省統計局小売物価統計調査(動向編)二〇二三年)。そして、私学の理系、医歯学系学部を見ればそれは更に大きな額面となり、例えば、川崎医科大学の六年間の学納金は四千五百五十万円に達する(同大学ウェブサイト、二〇二三年度)。国立大学医学部の平均納入額(六年間)は約三百五十万円で、この十三倍にも達している。この落差は何から生じていると考えるか。適切な学費額の基準設定を含め、政府として学費高騰を抑えるための仕組みが必要なのではないか。
 


我が国における奨学金返還免除制度が、「教育又は研究の職に係る」ものについて廃止され、教育大学院卒の教員に限定して適用されるようになった理由は何か。また、現在の教員不足の具体的な数字と、この制度導入による教員不足の解消見込みをどのように見積もっているか。また、教員の働き方の見直しや処遇改善、育成支援に先立って奨学金返還支援が優先されている理由は何か。あわせて、教育・研究職のほか公務員などの公共サービスに従事する卒業生に対する奨学金返済免除や猶予制度等を導入する計画はあるか。
 


政府は、外国人留学生を受け入れる介護施設に対して、一人当たり約百六十八万円の奨学金に充てる補助金を拡充するとのことであるが、留学生が卒業後または在学中に自国に帰国してしまう場合、支給された分にあたる奨学金への対応策をどのように考えているか。また、日本人学生に対する同様の補助金の検討はされているか。
 


現在の若年者が置かれた経済状況を踏まえ、奨学金の返済条件を見直すべきと考える。返済開始の所得基準を含め、見直しを検討しているか。具体的に示されたい。
 


奨学金制度は、将来の優れた働き手の育成を通じて国の未来を切り拓くことを本旨としており、海外諸国の制度が我が国の制度よりも優れているのなら、積極的に導入を検討する必要があるのは当然のことと思われる。政府として、海外の奨学金制度を我が国の同種制度と比較して優れたものがある事例を認識していれば、示されたい。また、比較の指標として、国内の経済状況・生活水準や納入学費の実額と比較して十分な支援給付となっているか、制度の実効性が卒業後の進路での実績に示されているか、国民の所得・生活水準の向上に貢献できているか、などがあると考えるが、この面で例えば主要先進国と日本の制度の優劣はいかなる状況にあるのか。日本の奨学金制度の将来像について、主要先進諸国の中でいかなる地位を我が国が占めていく見通しを持っているのか。認識と将来計画の在り方など、奨学金制度の長期的な展望や目標をどのように設定しているか。次世代の学生に対する教育支援のビジョンについて、具体的に説明されたい。
 


 二〇二二年以降、自殺者統計の理由に「奨学金の返済苦」を加えることになった理由を示されたい。
 

  右質問する。

BACK