2024.06.14
【法案反対理由】出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案について
今回の法案改正に関し、我が党は、「永住許可制度の適正化(取消事由の追加)」等の措置には賛成であるが、「育成就労制度の創設」等には反対する。
本法案は、現行の技能実習制度を廃止し、人手不足分野での人材確保および育成を目的とする「育成就労制度」を創設するものである。この新制度は、外国人労働者の受け入れを積極的に進め、日本国内の労働力不足問題を解消することを目的としており、事実上移民を受け入れる門を開くことは明白である。
1 「育成就労制度」の本質は、移民受け入れ制度である
「育成就労制度」は、日本で培われた技能、技術、または知識を開発途上地域に移転し、その地域の経済発展に貢献することを目的していた「技能実習制度」とは全く異なり、外国人労働者の積極的な受入れと労働力不足の解消を目指すものである。
すなわち、「育成就労制度」は、特定技能の在留資格に移行できる人材を育成することを目的としている。この点、特定技能2号の在留資格では、更新の継続により事実上無期限の在留と家族の同伴が可能となることから、「育成就労制度」は、移民受け入れに繋がる制度に他ならない。
政府は、「移民政策」を「国民の人口に比して、一定程度規模の外国人やその家族を、期限を設けることなく、受け入れることで国家を維持する」ことと極めて限定的に捉え、問題を直視しないが、これは我が国にとって、極めて重要な政策転換である。
2 他国の失敗例に学んでいない
他国の例を見れば、適切な移民政策を実施しないままに外国人を受け入れることが、社会コストの増大や問題の解決困難な状況を招いている。
例えば、EUは受け入れ規制を強化する新制度に合意し、米国ニューヨーク市では不法移民の急増による受け入れ能力の限界を理由に非常事態を宣言し、「私たちの思いやりは無限だが、資源は無限ではない」との声明を出している。カナダ・ケベック州でも、難民増加に伴う受入れ能力の「崩壊点」への接近を懸念し、連邦政府に対して流入抑制と費用の拠出を求めている。オーストラリアでも、家賃の高騰やホームレスの増加などの問題により、移民制度の崩壊を認め、首相が移民数を「持続可能なレベル」に戻す必要があると主張する事態となっている。これらの例は、外国人流入の増加には限界があり、慎重な政策設計が必要であることを示している。
我々は他国の例に学び、制度導入について国民全体で慎重な議論を行うべきである。
3. 社会コストの具体的な試算と国民の意見の反映が不足している
政府は、「特定技能2号の対象拡大による外国人労働者の受け入れ」に当たり、具体的な数値試算を行っていない。また、受け入れ数上限も、短期的な労働需要の解消に基づいており、長期的な社会への影響が考慮されていない。
他国の例に鑑みれば、育成就労制度導入の段階で、教育、医療、インフラへの影響や社会統合の問題など、長期的な社会コストを考慮した上で持続可能な政策を設計することが重要である。
我々が党内部で行った独自調査では、2212名中9割近くが育成就労制度に反対している。労働環境や社会保障制度の負担増など、国民に対する多岐にわたる影響を考慮する必要がある。政府は、拙速な制度導入をせず、国民の意見を反映させるべきである。
以 上