2024.06.08
【国会 6/4】外国ファンドのリスクと宗教法人ブローカーによる買収
令和6年6月4日、神谷宗幣 参議院議員が
財政金融委員会で国会質疑を行いました。
今回の質疑は、
「事業性融資の推進等に関する法律」
が対象です。
質疑のポイントは以下です。
・法律の目的:企業の資金調達の円滑化により
国民経済の健全な発展に寄与すること。
・融資の貸し手:国民経済の発展に寄与するため
国内金融機関に限定すべきでは?
・事業価値の評価:評価基準が不明確。
企業の無形資産が不当に安く買われる可能性も?
・懸念事項:悪意ある企業や計画倒産を狙う経営者によって
悪用される可能性がある。
・後継者不足と宗教法人:宗教法人ブローカーによる買収が増加している。
動画はコチラから視聴できます。
https://youtu.be/_iFgWN3dcwY
まず始めに神谷議員は、
「事業性融資の推進等に関する法律」
についてその目的を
確認しました。
この法律の目的は、
「不動産担保や個人保証を伴う
融資慣行を是正し、
企業の資金調達を円滑化することで
事業の継続と成長を支え、
国民経済の健全な発展に寄与すること」
となっています。
神谷議員は、
国民経済の発展に寄与する意志のある
国内の金融機関に貸し手を限定すること、
また国が貸し手に対して
何らかの保証を加えること、
などによって
国内の金融機関の新たな挑戦が可能になる。
そしてそれは
制度の理念に合致するのではないか
という考えを述べました。
その上で、
なぜ制限を加えず
プライベート・デットファンドや
再生ファンドなども
貸し手になれるようにしたのか
質問しました。
※プライベート・デットファンドとは、
主に信用力の低い中堅・中小企業を対象に直接融資を行うファンドのこと。
(参考:日本銀行ホームページ「プライベートデット・ファンドの実態と金利上昇下の動向」)
金融庁の答えは以下です。
昨年2月の金融市場の報告書で
・成長資金等を供給できる与信者に対して
広く利用を認めるべきという提言があった。
・金融機関だけに強い保権を与えるのではなく
債権者間の公平性を確保するということが
論点となっていた。
以上の観点から
商社等の一般事業会社も利用できる制度にした。
「債権者間の公平性」については、
国際ルールや条約によるものではなく、
有識者や政府部内の議論を踏まえて
報告書の提言等に基づき
判断したということです。
神谷議員はさらに突っ込んで、
無形資産を含む事業価値の評価は
誰が行うのか?
そしてその評価に対して
ガイドラインや基準を設けるのか?
と質問しました。
金融庁の回答です。
事業価値の評価を行うのは、
金融機関。
債権者が金融機関でない場合は、
その債権者。
事業性融資を推進するために
金融機関が企業の実態や将来性を把握し、
事業全体の価値を適切に評価する必要がある
とのことです。
具体的な評価方法は
各金融機関が創意工夫し、
経営判断で定めることが期待され、
金融庁は好事例や
モデルケースの公表などで
支援を行うということです。
神谷議員は、
「ちょっと答えが分かりにくかった」
として、
「特にガイドラインなどはなく、
貸し手側が自由に事業価値を評価できる。
貸し手が外国ファンドの場合もあり得る」
と回答を整理しました。
5月30日の参考人質問でも
明らかになりましたが、
今回の制度は
これから事業を始めようという
スタートアップには
すぐには当てはまらないと
考えられます。
また事業継承に活用するという点では、
経営者を目指す個人が
投資家の支援を受けながら
企業の事業継承を指導していき、
継承先の経営に関わっていくという形の
サーチファンドというような制度あります。
※サーチファンドとは、
経営者を目指す個人が投資家の支援を受けながら
企業のM&A/事業承継を主導し、自ら承継先の経営に携わる活動。
(参考:株式会社サーチファンド・ジャパンホームページ「サーチファンドとは」)
神谷議員は、
無理して新しい制度を作らなくても
上記のような既存の制度を
活用すればいいのではないか
という見解を示しました。
また、事業性融資の制度が
LBOや企業買収に利用されるケースが
多いのではないかと指摘しました。
※LBO(Leveraged Buyout、レバレッジド・バイアウト)とは、
買収する事業から生じる資産等を担保に借り入れし、
その借入金を活用して買収する手法。
(参考:日本政策投資銀行HP 「LBO/MBO」)
神谷議員は
具体的に想定される事例を示し、
事業性融資制度の
潜在的な問題を指摘しました。
(想定される具体例)
金利上昇や円安で資金繰りに困った企業「J」が、
無形資産を担保に融資を受けるケース:
企業「J」の取引銀行が事業性融資の
ノウハウを持っていないため、
再生ファンド「A」が
企業「J」の無形資産を不当に低く評価し、
融資を実行します。
その後、企業「J」が経営不振に陥り、
無形資産が再生ファンド「B」に
売却されるようなことが
起こり得ます。
神谷議員は、
このような悪意あるケースの
発生防衛策をどのように考えているのか
鈴木財務大臣に問いただしました。
鈴木財務大臣の回答は
以下のようなものでした。
今回の法案では、企業価値担保権の
実行手続きを公平にするための仕組み
を導入する。
担保権者ではなく、全ての利害関係者に
注意を払う管財人がスポンサーを選定し、
事業承継の際には裁判所が
労働組合などの意見を聴いて許可する。
さらに、スポンサー選定や
裁判所の許可の際には、
雇用や取引関係の維持を重視して
最適な承継先を選択する。
法案成立後は、ガイドラインを公表し、
金融庁が実行手続きの運用を監視し、
必要に応じて制度の見直しを行う。
次に神谷議員は、
少し違う視点からの
質疑を行いました。
後継者不足は
中小企業だけの問題ではなく、
宗教法人も檀家数の減少や
経済的困窮・後継者不足に陥っている。
その中で宗教法人ブローカー
と呼ばれる人々が、
宗教法人の税制優遇などを求める企業に
宗教法人の売買を仲介している実態があります。
買い手は日本人だけではなく
外国人投資家も多く含まれている
との報道もあります。
特に宗派から離脱した
単立宗教法人は自由度が高く、
寄付を装って宗教法人格を売却する
という手法が取られています。
このような実態がある中で
政府は昨年2月の国会審議や
首相答弁を受けてより具体的に
不活動宗教法人対策を進めてきました。
神谷議員は、
一連の状況に対して
監督強化や取り締まりが
功を奏しているか質問しました。
まずは、第3者による法人の不正取得と
悪用を防ぐことが重要である。
というのが文化庁の回答です。
そして、
不活動宗教法人対策として、
以下のような取り組みを
行っているとのことでした。
1.宗教法人法に基づく事務所備え付け書類の
写し提出の徹底を都道府県に通知
2.不活動宗教法人の整理を促すための予算補助
3.不活動宗教法人対策マニュアルの整備
これにより、各都道府県も
国の予算補助を用いて
不活動法人対策を実施している。
日本宗教連盟でも問題が認識され、
全国の宗教団体向け説明会において
取り上げられている。
引き続き、
宗教法人の法人格の不正取得と
悪用を防ぐ対策を進める、
との答弁でした。
宗教法人のブローカーは
法人買収のメリットを説明する際に
税務所対策を強調しています。
宗教法人を隠れみのにした
脱税やマネーロンダリング等が
行われている可能性もあります。
最後に神谷議員は、
国税庁がこのような事態を
認識しているのか。
またどのような対策を
行っているか質問しました。
国税庁の回答です。
国税当局は、
課税上有効な資料情報を収集し、
申告書等を分析して、
問題が認められる場合には税務調査を行い、
適正公平な課税の実現に努めている。
このような対応は宗教法人や
その他の法人でも同様である。
今後も法令に則り、
適正公平な課税の観点から
適切に対応していく。
神谷議員は、
宗教法人の買収は、もともと法律が
予定していなかった事態であるため、
代表変更や事実上の売買に当たる場合には、
厳しい条件でチェックを行う必要がある
と強調して質問を終えました。
詳細は動画をご視聴下さい。