2024.06.09
【国会 6/6】一連の金融政策と市場開放について 〜「今日より明日は明るい」制度運営を 〜
令和6年6月6日、神谷宗幣 参議院議員が
財政金融委員会で国会質疑を行いました。
6月4日に引き続き
『事業性融資の推進等に関する法律案』についてです。
神谷議員は、今回の質疑の後、
次のように発信しています。
「懸念事項はある程度網羅して質問できましたが、
不安は残ります。
新しい担保権の創設によって融資が広がるメリットと
外資やファンドのマネーによる企業買収のデメリットの
比較衡量に悩みました」
動画はコチラから視聴できます。
https://youtu.be/Uu78rTBX4uQ
神谷議員はまず、
「資金の貸し手には制限をかけない」事に関わる
状況について説明を始めました。
機関投資家や個人投資家から資金を集めて
非上場企業の非公開株への投資を行う
プライベート・エクイティファンドや、
投資家から集めた資金を企業などに直接貸し付ける
プライベート・クレジットファンドも
投資が可能という事。
しかし、プライベート・クレジットの市場は
アメリカを中心に現在加熱しており、
海外でも制度の脆弱性や不透明性が指摘され、
「国際的な監視の強化が必要である」とされている。
昨年、アメリカのブラックストーン・グループが
大和証券グループ本社と提携し、
米国企業に直接お金を貸し付ける
日本初の公募プライベート・クレジットファンドを立ち上げ、
「日本の投資家の資金が海外に流れる」
という状況が生まれている。
つまり、日本が市場を開放していくと、
海外で規制が強化されたこれらファンドの資金が
日本に流れ込む可能性が考えられる。
「日本はこれから市場になる」
というコメントを実際、彼らは出している。
以上の状況を踏まえ、神谷議員は3点質問しました。
海外の経験を積んだファンドが、日本の金融機関と組んで
事業性融資の貸し手となった場合、
裁判所及び管財人は担保権の実行手続き全体を通し、
貸し手の申し立ての適正さ・実行のリスクをどう判断するのか?
「担保権の行使が適切でない」と判断した場合、
管財人や裁判所は適正な事業譲渡先などの
代替手段を見つけられるのか?
事業譲渡が一旦認められた後も切り売りなどされることなく、
事業を一体として運営させるモニタリングはできるのか?
鈴木俊一 内閣府特命担当大臣(金融)は順番に答えました。
まず1つ目、
担保権実行の申し立ての適正さと、
事業の継続・再生の可能性があるにも関わらず
担保権が実行されるリスクについて。
実行手続きには相応の費用がかかる。
そのため、事業の継続・再生が見込まれる場合には、
実行手続きの申し立てを行わず、
再生等を通じた事業価値の向上を図る方が
融資の弁済可能性が高まる。
その機会を放棄して実行手続きの申し立てを行うことは、
経済的な観点からは想定されない。
その上で、担保権実行の申し立ては、
裁判所が実行の手続きを開始決定をする。
その他、実行手続き開始後であっても、
被担保債権全額の弁済がされれば
実行手続きを終了することが可能。
そのようにして、全体として適正性の確保を図っている。
2つ目、
適切な事業譲渡先の選定について。
雇用継続と全体としての事業譲渡に向け、
管財人が最大限の努力を尽くして事案の性質に応じた
適切なスポンサーを探索する仕組みになっている。
さらに譲渡先の選定の公平性を確保するため、
管財人が事業譲渡するには裁判所の許可が必要。
仮に管財人が選定した譲渡先が不適当だと
裁判所が判断した場合、事業譲渡の許可をしない。
その場合、再度、管財人が適切な譲渡先を探索する。
3番目、
事業譲渡後の運営について。
譲渡先における事業を、
管財人や裁判所が監督する権限は盛り込んではいない。
しかし、裁判所の監督に服する管財人が、
労働条件も含めた譲渡にかかる契約条件全体を考慮した上で、
適切な譲渡先を選定することになる。
そのため、事業譲渡された後も
譲渡先において適切に事業の運営がなされると考えている。
神谷議員は、
質問で想定した色々なリスクには
”裁判所と管財人でチェックが及ぶ”
という回答であったと解釈し、
「そのチェック機能をしっかりと監督していって頂きたい」
と釘を刺し、次の質問へ移りました。
「事業性融資という新しい制度を入れることに
反対するつもりは全くありませんが、
自由競争はもう少し段階を踏んで行うべきではないか?」
神谷議員は、この質問の意図として
次のような懸念を伝えました。
日本は長期間にわたり低金利政策を続けてきたため、
日本では資金調達が容易だった。
その結果、外国資本が日本株を多く所有することになり、
株価が過去最高値を記録、
外国投資家は多額の円資産を現在保有している。
しかし、円安のためにドルへの換金が難しく、
円の行き場を探しているような市場の状況がある。
そんな中、先日可決された金商法の改正により、
事業の企画だけを担う資産運用会社の設立が容易になった。
さらに、金融資産運用特区をつくり、
海外金融機関を誘致する計画が発表されている。
これにより、海外投資家は
日本で資金を集めてファンドなどを設立し、
この『事業性融資』のスキームも活用できることになる。
(参照:金融庁HP 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案(令和6年3月15日提出、令和6年5月15日成立)説明資料)
一方、日本企業はコロナ禍のダメージで
多くの企業が融資を受けており、
景気が回復しないまま金利が上がると、
返済が困難になる企業が増えてくる。
国内の金融機関も決して状態が良いとは言えない。
このような状況で、
資金力や経験値のある海外金融機関と同じ市場に入れることは、
”弱った羊の群れに狼を入れ” 競争させるようなもの。
日本の企業や金融機関にもう少し体力をつけさせ、
”囲い” の中で経験値を積んでもらってから競争させないと、
”資産運用 立国” にするつもりが ”資産運用 亡国”になってしまう。
以上について、神谷議員は大臣の考えを尋ねました。
鈴木大臣は答えました。
企業価値担保権制度の貸し手の範囲については、
昨年2月の金融審議会の報告書の提言、
債権者間の公平性等を確保する観点を踏まえ、
債権者の範囲に制限を設けず、
外資の金融機関も活用できるとしている。
他方、例えば国内の地域金融機関は、
地域経済動向の把握や地域企業との密接な関係性等の面で、
外資の金融機関にはない強みもある。
こうした強みを生かし、
顧客の資金調達ニーズに応じた資金供給が図られることが
地域金融機関に期待される役割。
そのため、金融庁は2019年に監督指針改正を行い、
人事ローテーションの確保を求めないことにした。
これにより、金融機関において
融資担当者が長く同じ顧客を担当する中で、
その顧客の事業の理解を深めるような取り組みを可能とした。
また地域金融機関を念頭に、
「業種別支援の着眼点」を2023年より公表し、
その研修を継続的に実施をしている。
このようにノウハウの取得・蓄積を後押し、
「地域金融機関がその役割を果たせるよう支援をして参りたい」。
神谷議員は、
この答弁は “範囲を絞った” ものであって、
一連の金融制度改正などにより
外資が入りやすい状況ができているという
“全体” に対するものではなかったと感想を述べ、
機会を改めて質問するとして次の質問へ移りました。
「どういった状態になっていれば今回の制度は成功で、
どういった状態だと問題があると考えておられるのか?」
『事業性融資』の運用がスタートして一定期間後、
制度の検証と見直しが当然行われるものだとして、
神谷議員は制度運用の目標について問いました。
鈴木大臣の回答は次の通りです。
創設される企業価値担保権は、
事業性融資を行う際の新たな選択肢として、
事業性融資をこれまで以上に推進していくエンジンとなり得る。
具体的には、
有形資産に乏しい事業者の資金調達の円滑化が図られること、
金融機関によるタイムリーな経営改善支援が行われること。
これらを通じて、
事業者の継続的な成長が実現し、国民経済の発展に寄与していく。
これが実現されることが成功した事例であると考えている。
「見直しの時のタイミングで、
大臣の設定された目標通りになっているか
チェックできればと思います」
神谷議員は、
制度の見直しと目標のチェックの必要性を強調した上で、
「懸念事項はある程度網羅して質問できたものの不安が残る」
という想いから、自らの体験を踏まえて次のように訴えました。
「私は今年で47歳なんですけど、
子供の頃は日本社会も経済も元気で、
『明日は今日より明るくなる』という希望
があったように思います」
「しかし、バブル崩壊後の『失われた30年』
というのも見てきまして、
小さい会社だったんですけど私の父の会社も倒産し、
担保に入れていた会社も実家も全て担保権の実行で失いました。
政治家になってから、
バブルやその後の不良債権処理の実態というものを後で学ぶと、
日本人としては非常に胸が痛むようなことが
沢山あったんだなと感じています」
「そうした経験から、今後また
バブル崩壊後の不良債権処理の時と同じように、
日本の資産が安く買われてしまわないかと
個人的に大きな懸念を抱いています。
あの時もハゲタカ・ファンドが日本にやってきて、
日本国内で資金を調達して日本の資産を買ったわけです。
非常に悔しい時代だったと思います」
「以前の質問で、
『長銀の処理は失敗じゃなかったですか?』と聞いた時、
失敗とは考えておられないという事でしたので、
ああいう事は起きないよう本当にしてもらいたいと思います」
「財政金融委員会で2年ほど審議させてもらっているんですが、
私が心掛けているのは、
20〜30年経った時、子供たちの世代から
『なんでこんな制度作ったの?』
『なんでこんな法案を作ったの?』
と責められないような制度運営をして頂きたいということ」
「子供たちが『今日よりも明日の方が明るい』と
感じられるような経済を、制度運営を、
しっかりとやって頂きたい」
詳細は動画をご視聴下さい。