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2024.06.20

我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問主意書

令和6年6月19日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問主意書』
 

 政府は、今後五年間で特定技能の在留資格で最大八十二万人の外国人労働者を受け入れる方針であるという。これは、制度導入時の二〇一九年度から二〇二三年度の想定である最大約三十四・五万人の二・四倍に相当し、規模的に過去に前例のない多さになる。こうした政策が進められれば、五年後には外国人労働者数は、三百万人前後に達すると予想される。
 
 この状況に対し、国民の中からは不安や戸惑いの声が上がっている。参政党が独自に実施したアンケートによると、回答者二千二百十二名のうち、外国人の逃亡については九十五%、社会保障費の増大については九十二%、地方政治への影響については八十九%、社会統合の困難については八十七%の人が「大きな懸念がある」と回答した(参政党ウェブサイト)。
 
 国民生活に大きな影響がある外国人労働者の受け入れ拡大について、政府は丁寧な説明を行うべきである。しかし、この間の質問主意書に対する政府答弁(内閣参質二一三第七三号、以下「本件答弁書」という。)は、特定技能制度について、「これまでも、出入国在留管理庁のウェブサイトにおいて同制度に関する資料を掲載するなどしてきた」「今後も適時適切な情報発信等に努め」るとの答弁にとどまり、育成就労制度については、「現時点で…国民に丁寧に説明するための方法と、その説明を行う予定の時期の詳細についてお答えすることは困難」としている。このような姿勢で国民の不安や戸惑いを払拭することはできない。
 
 併せて、政府が「移民」の定義を明確にせず「移民政策を取っていない」と表明することは、政策の一貫性と透明性を欠くことを示すものと言わざるを得ない。曖昧な態度は、移民の増加がもたらす長期的な社会的影響への議論を避けることにつながる。
 
 例えば、アメリカやイギリスでは、移民の増加が特にブルーカラー労働者の賃金低下をもたらす傾向があることが報告されている。オックスフォード大学の移民・社会政策研究センターによれば、移民の割合が一%増加すると、平均賃金が〇・三%低下し、最低賃金労働者の賃金は〇・六%減少するという。また、ドイツでは、二〇一五年の難民危機で多くの中東難民が流入し、公共スペースの利用や宗教行事に関する誤解が原因で文化的摩擦が発生した。スウェーデンでは、移民集中地域で生活習慣の違いが衝突を引き起こし、ストックホルム郊外で文化的摩擦が表面化している。イタリアでは、北アフリカからの移民増加が治安悪化を招き、移民コミュニティと現地住民の間で摩擦が生じている。このような状況が日本で起こらないとも限らない。
 
 政府は、外国人労働者の受け入れ拡大にあたり、国民の懸念に真摯に向き合い、丁寧な説明と透明な情報公開を徹底する必要がある。そうでなければ、外国人労働者の急増による社会的影響が深刻化し、日本社会の安定が損なわれる恐れがある。適切な政策と対策を講じ、経済的利益を享受しつつ、社会的な混乱を回避することが求められるのではないだろうか。
 
 以上を踏まえ、以下質問する。
 

本件答弁書では、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を「移民政策」としているが、そうであるなら、政府の言う「移民」の定義は、論理的にみて、「期限を設けずに日本に定住し、家族を帯同して生活する外国人」を指すのではないか。
 

育成就労制度や特定技能制度は、実際には外国人が長期間滞在し、永住権を取得する道を開くことにつながっている。この実態を無視することで、移民政策の長期的な社会的影響についての議論を避けることになるのではないか。透明性のある議論を行うことで、国民に対する説明責任を果たすべきではないかと思われるが政府の考えは如何。
 

政府は、外国人材の受け入れの拡大にあたり、日本人の雇用への影響や社会保障等に係るコストの増大といった懸念を踏まえた慎重な検討が必要であると認識している旨答弁したが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、これらの懸念に対する具体的な検討はいつまでに、どのような方法で行う予定か。
 

政府によれば、育成就労制度では、特定技能制度と同様に、賃金を含め、国内労働市場への悪影響を生じさせることがないようにするとのことであるが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、それは、具体的にどのような判断基準や方法論に基づいているか。賃金水準の維持や労働市場への影響を評価するために使用している具体的な指標やデータ、分析手法について如何。また、これまでの特定技能制度で実施された具体的な評価結果や事例があれば示されたい。
 

政府は、特定技能制度を創設した二〇一九年以降、外国人労働者の増加による経済効果と社会的影響をどのように評価し、検証してきたか。また、二〇二四年度から二〇二八年度までの受け入れ見込み数を最大八十二万人とし、これまでの約二・四倍に設定するにあたり、上記の検証と評価をどのように生かしたのか。さらに、この受け入れにより、五年後には外国人労働者が約三百万人に達することが予想されるが、その社会への影響をどのように検討し、評価しているのか。
 
 右質問する。

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