2024.08.25
【国会 8/23】 利上げなぜ今なのか?株価暴落を機にルール見直しを
令和6年8月23日、神谷宗幣 参議院議員が
臨時の財政金融委員会で質疑を行いました。
訴えたのは主に以下の2点です。
・日銀の利上げのタイミングが良くなく
デフレ経済につながってしまう。
・岸田総理の外国資本の呼び込み政策が
日本の株式市場を荒らす原因になっていて、
日本国民の富が食われる結果につながっている。
動画はコチラから視聴できます。
https://youtu.be/DEcNw0Bjn_M
神谷宗幣 議員は、
7月31日に発表された利上げに関して見解を述べ、
植田和男 日銀総裁へ質問しました。
「日本経済の復調が確実となるまでは、
利上げはもう少し慎重に行うべきではないか?」
そう今年4月の委員会で要望を出していた。
日本経済の状況を見ると
企業の経常利益は一見好調に見えるが、その主な要因は、
投入コストの低下と製品価格の転嫁によるものであり、
労働分配率は依然として上昇していない。
さらに、実質雇用者報酬は下がっていて、
実質可処分所得も20年以上前の水準まで落ち込んでいる。
※労働分配率とは、
付加価値額に対しての人件費を示す指標であり、
企業が新たに生み出した価値のうち
どれだけ人件費に分配されたかを示す指標。
(引用:大和証券HP 金融・証券用語解説「労働分配率」)
※実質雇用者報酬とは、
実質賃金に就業者数をかけた値。
※可処分所得とは、
収入のうち税金や社会保険料などを除いた所得。
こんな状況での日銀の利上げは、
短期プライムレートや住宅ローンの変動金利の上昇を引き起こし、
消費の抑制や企業の賃金引き上げを阻害する可能性が高い。
※短期プライムレートとは、
銀行から最も信用力の高い企業に対して貸し出す際の、
貸出期間が1年未満の最優遇貸出金利のこと。
(引用:東海東京証券HP 証券用語集「短期プライムレート」)
日本経済がデフレに逆戻りするリスクが高まるのではないか?
金利引き上げをなぜ今のタイミングでやらなければいけないのか?
「国民の皆さんにもう少し分かりやすく
簡易な言葉で説明いただきたいと思います」
植田総裁の回答は以下のようなものでした。
利上げを決定した背景は、
7月にかけて手に入ったデータ・情報から
経済・物価情勢を判断したところ…
・これまでの見通しに概ね沿って推移している。
・円安もあって輸入物価が再び上昇に転じている中で、
物価の上振れリスクにも注意する必要がある。
この2点に着目して、
金融緩和の度合いを少し調整することが適切である
というふうに判断した。
金利の引き上げが、
市場金利や短期プライムレートの上昇を通じ、
貸出し金利あるいは住宅ローンの一部に影響することはあり得る。
他方、預金金利等の利回りも上昇し、
家計の所得にプラスになる要因もある。
その上で、こうした金利収支の変化だけでなく
賃金がしっかりと上昇していることも合わせて、
全体の経済の状況を評価する必要がある。
我が国全体を見ると、
実質金利は大幅なマイナスが続いており、
緩和的な金融環境は維持されている。
「どうして金利を調整していくのか?」については、
物価の安定が持続的・安定的に維持されるということが、
経済の持続的な成長の基礎になるものであり、
その持続的・安定的な実現を目指して、
適切な金融政策を行う中での緩和度合いの調整であったということ。
それによって物価の安定と、
それをベースにする経済の持続的な成長が進むことが、
国民経済全体にメリットがあると考えている。
神谷議員はこの回答を受け、
「引き続き慎重な姿勢で臨んでいただきたい」
と要望するとともに、改めて疑念を伝えました。
「もう少し賃金が確実に上がって、
国民が『経済が良くなってきたな』と実感してからで
良いのではないか?」
神谷議員は次の質問に移りました。
政府は「資産所得倍増」を掲げ
NISAや新NISAを推奨してきたが、
今回の株価の大暴落と外資による記録的な買い戻しで、
国民の資産は増えるどころか
逆に外資に大きく奪われるような結果になっているのではないか?
このようなことが繰り返されると、
国民の富はますます海外に流出してしまう。
今回の事態を大きな教訓として、
今後の政府の政策運営に反映させる必要がある。
こうした思いを前提に、次のような質問を総裁へ展開しました。
円高が進行すると外国人投資家が日本株を売却し、
結果として日経平均株価が下落するということは
過去の事例からも十分に予測ができたことではないか?
今回の円高は、明らかに
日銀の利上げもしくは利上げを進める意思表示が原因であり、
円高と日経平均株価の暴落には強い関係性がある。
日銀総裁は今回のような市場の反応を
ある程度予測されていたと思うが、
利上げ方針の発表が円高と株価暴落を引き起こすリスクについて、
どのように評価されていたか?
植田総裁は答えました。
為替レートの変動要因・決定要因は、様々なものがある。
その中で、金融政策の影響を受ける国内外の金利差が
1つの重要な要因として指摘されてきている。
また、為替の変動は、株価に影響を及ぼす要因の1つでもある。
今回の株価や為替の大きな変動の背景には、
米国の景気減速懸念の強まり、
そのまたベースに8月入り後に発表されたデータが
予想比弱かったということがあった。
それを契機に、世界的にドル安と株価の下落が進んだ。
加えて、ポジションの巻き戻しという要因も
追加的な要素になった可能性がある。
もっとも今月中旬以降、我が国の株価は
大きく下がった水準からは戻ってきている。
アメリカ経済に関する過度に悲観的な見方が後退した、
あるいは我が国の企業の収益力が評価されたということもある。
いずれにせよ、現在も市場は引き続きやや不安定な状況にある。
その動向そのもの、
あるいは経済・物価情勢への影響については、
高い緊張感を持って注視してまいりたい。
神谷議員は、植田総裁の回答を…
「利上げそのもののリスクはそれほど高くなかったけれども、
アメリカの経済の発表が良くなかったので、
そちらの方が主な要因であろう」
と解釈し、次のように要望しました。
「また同じような状況になることがあると思いますので、
その時にまた暴落したとなるとマズイので、
是非そのリスクを今までよりも少し大きめに考慮していただいて
政策決定していただきたい」
そして、鈴木俊一 財務大臣へと相手を変え質問を続けました。
岸田総理は就任時に掲げた「所得」倍増という目標を、
いつの間にか「資産所得」倍増にすり替え、
国民に投資を促してこられた。
しかし、所得倍増でなく資産所得倍増を目指すということは、
貧富の格差を広げることにつながるのではないか?
実際、今回の株価暴落の際も、
投資経験が浅くて資金の少ない人は、
値下がりを恐れて株式を売却せざるを得なかった方が多い。
一方、投資経験が豊富で資金に余裕がありお金がある方は、
逆に安価に株が下がったところを狙って購入した。
どんどん投資が広がるんだけれども素人が入っていくとなると、
却って格差が拡大していくような状況が生まれるのではないか?
この点に対する大臣の見解と、
もし「問題がある」という考えであればその対策についてもと、
問いかけました。
鈴木大臣は答えました。
今月初めに株価が急変動した状況について、
大手証券会社へのヒアリングを行った。
それによると、NISA口座の利用者全体では、
買付金額が売付金額を上回っており、
売付一方向の状況にはなかった。
個別に見れば、株価の急変動に動揺し、
株式等を売却された方もおられる。
NISA口座の利用にあたっては、
長期積立て分散投資の特徴や重要性を認識し、
市場が変動する際にも冷静に判断いただくことが重要。
金融庁では兼ねてより金融機関に対し、
長期積立て分散投資の意義や投資リスクについての周知、
顧客本位の業務運営に基づいた丁寧な説明や
販売後のフォローアップなどの対応を求めてきた。
今回の株価の急変動にあたっても、
J-FLEC(金融経済教育推進機構)や金融機関から、
改めて長期積立て分散投資の重要性等について
周知説明が行われた。
株価が急落した翌日8月6日にも、
金融庁では改めて金融機関に対し、
顧客への丁寧な情報発信や説明を行うよう求めた。
「国民の皆さんが安定的な資産形成を進められるよう、
引き続き長期積立て分散投資の意義を発信するとともに、
金融機関に対して特に市場の急変時における
丁寧な顧客対応を求めてまいります」
それを受けて神谷議員は、
今回の株価大暴落の要因の1つとして、
岸田総理の「インベスト イン キシダ」という
イギリスでの演説から始まってるのではないかと、
私見を説明していきました。
日本は金利が安くて資金調達が簡単たったため、
外国の機関投資家は日本の株をたくさん買った。
彼らの株式保有率は全体の30%であり、
取引全体の70%は外国人が行っているのが日本の株式市場。
市場で利益を確定させようと思うと、
必ず誰かに株を売らないといけない。
安く買って売らないといけない。
外国人の投資家のそれを買わされたのが、
今回、日本人の個人投資家だったのではないか?
実際、新NISAは
今年1月から4月ぐらいまで毎月1兆円ぐらい資金を集め、
その内の多くの金額が日本株にも投資された。
その結果…
7月11日 日経平均株価が市場最高値を更新、
7月31日 日銀が利上げを発表、
8月1〜2日 アメリカが失業率の悪化を発表、
9月 「FRBが利下げするんじゃないか?」
という憶測につながり急激な円高となった。
※FRBとは、
日銀と同樣の米国の機関で、
中央銀行制度の最高意思決定機関「連邦準備制度理事会」。
外国人はここぞとばかりに日本株を売って利益を確定する。
その結果、8月5日に日経平均株価が歴史的な暴落をし、
翌日には暴落した株がバーゲンセールのような状態になって
外資がまた記録的な買い戻しを行った。
ブラックロックなどの大手外資系のファンドは、
日本の主要会社の株を大量に買い占めた。
大量保有報告書が8月5日に出されている事実がある。
要するに、実質的な経済を
「内需拡大でやっていく」というやり方じゃなく、
「外国資本を活用して金融で日本経済を活性化しよう」という
総理の方針自体に誤りがあったのではないか?
やりすぎたのではないか?
それによって、外資に多くの資産をまた持っていかれたのではないか?
神谷議員は、常々委員会で訴えてきたように
今回も改めて要望を明確に伝えました。
「これから色んな形でまた
外資を入れていくという話があると思うんですけども、
それが進むと…やればやるほど…
日本の経済的な主権が奪われるような感覚をもっています」
「ぜひ今回の株式下落をきっかけに
金融担当者の方々に認識を変えていただいて、
もう少し国民に市場の説明とか規制をきちっと作って
外資に持っていかれないようなルール設計をお願いしたい」
詳細は動画をご視聴下さい。