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2024.10.02

オーバーツーリズム対策に関する質問主意書

令和6年10月1日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『オーバーツーリズム対策に関する質問主意書』
 
 近年、日本への訪日外国人旅行者は増加傾向にあり、コロナ禍で一時的に減少したものの、おおむねコロナ前の水準まで回復している。従来、政府はインバウンド政策を推進しており、日本経済への貢献や日本の認知度向上など、プラスの効果が期待される側面もある。しかし、同時にオーバーツーリズムと呼ばれる弊害も顕著になっている。訪日外国人旅行者の著しい増加により、国民生活、自然環境や景観に対する負の影響(渋滞、混雑、マナー違反など)が深刻化している。
 
 GDP全体から見れば、訪日外国人旅行者による旅行消費額はGDP全体の一%未満であり、インバウンドによる経済効果は限定的である。このため、オーバーツーリズムによるマイナス面が大きくなるのは割に合わず、社会的コストが経済効果を上回れば本末転倒である。また、訪日外国人旅行者の流れは二国間関係や国際環境などの外的要因に左右されやすく、過度な依存は日本経済の安定的な発展にとってリスクとなる。
 
 観光業の大部分が日本人の国内旅行に依存していることを考慮すれば、対策が日本人の観光を阻害するべきではない。訪日外国人旅行者の旅行消費額は全体の五分の一未満であり、日本人のレジャーや娯楽を重視する必要がある。例えば、宿泊税を国内外問わず一律に引き上げることは、既に増大している税負担を更に増やし、国民に過剰な負担を強いるため、慎重にすべきである。
 
 他方、二〇二四年七月十九日の観光立国推進閣僚会議において、岸田内閣総理大臣は、「全国三十五カ所の全ての国立公園において(中略)、国立公園制度百年を迎える二〇三一年までに、地域の理解と環境保全を前提に、世界水準のナショナルパーク化を実現すべく、民間活用による魅力向上事業を実施していただきたい」と述べ、高級リゾートホテルの誘致を含めた方針が示された。しかし、自然公園法は「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与すること」を目的としている。国立公園内に大規模な宿泊施設を誘致することは、自然環境や景観の破壊を引き起こす可能性がある。また、外資系ホテルが日本の奥地にまで進出することについて、安全保障上の懸念も指摘されている。
 
 さらに、観光などの短期滞在ビザが免除された外国人が、日本入国後に失踪、不法滞在や不法就労に至るケースや、根拠の薄い難民申請を繰り返す現象も発生している。テロ防止も重要な課題であり、訪日外国人旅行者を受け入れる際には、これらのリスクを十分に考慮する必要がある。
 
 以上を前提に、以下質問する。
 
一 
岸田首相は二〇三〇年に訪日外国人旅行者数六千万人、旅行消費額十五兆円を目指す目標を掲げているが、現在の訪日外国人旅行者数は、二千五百万人である。目標達成のためには、五年程度で約三倍にする必要があるが、オーバーツーリズム対策は十分に取れると考えているか。また、これまでの対策の実績と効果をどのように評価しているか。
 
二 
インバウンド政策において、旅行消費額の増加などプラス面にのみ焦点を当てていないか。社会的・経済的コストや、インバウンドに過度に依存するリスクを十分に検討し、必要な試算を行っているか。
 
三 
オーバーツーリズム対策を進める上で、特に日本人の国内観光への影響について、どのように配慮しているか。また、日本人旅行者が影響を受けないような施策が検討されているか。
 
四 
国立公園内に大規模宿泊施設を誘致する計画があるが、これに伴う自然環境や景観保護については、どのような対策を講じているか。外資による施設建設が進む中、外国人による土地取得に対する規制が不十分な現状において、安全保障上のリスクをどのように考えているか。
 
五 
観光地の環境保護、インフラ維持、地域振興を目的に、訪日外国人旅行者に対して、国立公園や文化財、特定の観光施設での入場時に追加料金を徴収し、その収益を観光地の保全や地域社会への還元に充てることは可能か。制度の導入について政府の見解を示されたい。
 
六 
二〇二四年四月二十四日の衆議院国土交通委員会において、政府は、乗り合いバスの運賃設定について、人種や性別などによる差別的取扱いが禁じられており、インバウンドと他の利用者で異なる運賃を設定する際は、目的と手段の適切性を個別に判断すべき旨の答弁をしている。この点、定住外国人を除く外国人旅行者に対し、他の利用者より高い運賃を設定し、その上乗せ分をオーバーツーリズム対策に限定して使用する場合でも、道路運送法における差別的取扱いに該当するか。また、合理的な政策目的に基づく二重価格設定は、一般的に差別的取扱いに該当するか政府の見解を示されたい。
 
七 
短期滞在ビザ免除の外国人による不法滞在や不法就労に対する対策として、現在どのような取組が進められているか。また、日本版電子渡航認証制度の検討状況及び導入の見通しについて示されたい。
 
 右質問する。

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