2024.11.15
ごみ回収の有料化は形を変えた増税ではないか|長田 拓也
兵庫県川西市議会議員の長田たくやと申します。
日常生活に必ず発生するゴミ。その回収は、重要な生活インフラの1つと言っても過言ではありません。指定のゴミ袋代だけではなく、そこに回収手数料が上乗せされていることを“有料化”と定義されています。現在、約68%の自治体が有料化となっています。
ちなみに、北海道のえりも町は、日本一ごみ袋が高いとされています。45リットルのゴミ袋1枚あたり何円だと思いますか? ――― 答えはなんと200円です!
本市では、まだ議案に上がってはいないのですが、燃えるゴミの有料化を進めています。しかも、目的が財政ではなく“ごみを減らすため”というのです。税金、社会保障費、物価、電気代等、あらゆるものが値上がりしている昨今にて、それを今やるべきではない!と議会を通じて訴えています。なお、本市の1人あたりのごみ排出量は、国・県の平均よりも少ない状況です。
しかし、残念なことに環境省は「ごみ有料化に関する手引書」をつくり、強く推奨しているのです。有料化をし、ごみ袋代が高ければ高いほどごみが減るという論文もあるのですが、あくまで有料化した場合なのです。無料の自治体と比べたデータはあるのかと環境省に問い合わせたところ、それはないとのこと。
じゃあ、自分で調べるかということで、環境省から得られる一般廃棄物のデータ(1998~2022年)を分析してみました。町村まで含めると煩雑となるため、市と東京都のみを分析対象としています。有料化している自治体と無料の自治体を比べた結果は以下のとおりでした。
驚くほど大きな差がないことがわかりました。なお、総ごみ量というのは、生活ごみ(家庭)と事業所ごみ足したものを意味します。次に1998年をゼロとして、総ごみ量・生活ごみ・事業所ごみ、それぞれの変化量を比べてみました。
ご覧の通り、果たして有料化してまでの恩恵があったと言えるのでしょうか。
そこで、有料化した自治体における1人1日あたりのごみ排出量の変動に着目し、視覚化してみました。有料化した年をゼロとした場合、5年間の変化は以下のとおりです。
2004~06年頃は、非常に高い減量効果が認められ、2007年には、環境省が“有料化の手引き”を作成しました。それに便乗するように有料化した自治体の減量効果は、あまり大きくないことがわかります。つまり、ごみの減量を目的として有料化は、近年に至ってはあまり大きな意味をなさないのではないかと私は考えます。
では、なぜ無料の自治体もごみ排出量が減っているのか気になりませんか?
経済が豊かになればごみが増えるとイメージできますが、1人当たりのGDPとごみの排出量を比べてみると、2005年以降は特に相関していませんでした。そこで、紙の消費量に注目しました。IT化が進み、紙媒体が少なくなっているのを皆さんも感じられていると思います。1人あたりの紙消費量と、ごみ排出量をグラフ化してみました。
相関関係が強く表れていることがわかります。決定係数も0.76でした。つまり、技術革新がごみ排出量と関係していると考えることができます。
自分で調べた結果、「ごみを減らすため」に有料化をするというのは、市民の負担が増えるだけと言うのが私の結論です。
本市では、市民への説明会にて“ごみの減量が温室効果ガスの減少にもつながる”と解説していました。2023年に有料化となった静岡県浜松市の市民アンケートによると、全年齢層の6割以上の方が、ごみの減量が必要である一番の理由に、温室効果ガスを減らすことと回答しています。本当にそうなのでしょうか?
全国温暖化防止活動推進センターのデータによれば、日本のCO2排出量のうち、家庭が15.3%であり、さらにそのうちの3.9%がごみに関係するとされています(実際にはもう少し多いと考えられる)。ごみをゼロにしたとしても、世界的に見て何の影響もないことがわかりますね。
このような客観的な情報を与えず、地球温暖化などと言った全体把握がしにくい状況にしたうえで、市民へ説明している市の対応に対して強く抗議しています。
「元々ごみ袋なんて買っているし、そんなに影響はないよ」と考える方もいるとは思いますが、有料化すれば、いつでも値段を吊り上げることができるということにもなります。生活インフラであるごみ回収は、市税で賄うのが基本であり、そうあるべきだと私は考えます。議会がどのように動くかは今後の状況次第ですが、「ポイ捨てしたら無料、しっかりとごみ出ししたら有料」という状況にならないように、市民と協力して反対していきたいと思います。
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長田 拓也
Nagata Takuya
所属議会
川西市議会議員(兵庫県)
経歴
大阪府生まれ。
京都薬科大学大学院を卒業。外資系製薬会社に入社し、医薬品開発に従事。
その後、中規模病院に薬剤師として転職。2022年10月川西市市議会議員選挙に立候補し初当選。コロナ禍で露骨となった情報統制社会をどうにかしたいと考えている。
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