2024.11.11
最高裁判所裁判官の国民審査における情報提供の充実と実効性確保に関する質問主意書
令和6年11月11日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『最高裁判所裁判官の国民審査における情報提供の充実と実効性確保に関する質問主意書』
提出者 北野裕子
衆議院選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査(以下、国民審査という)は、国民が最高裁判所裁判官の適格性を直接評価する重要な機会である。日本国憲法に基づき、裁判官は任命後初めて、そして十年ごとに国民審査を受ける。国民は信任しない裁判官に「×」をつけて罷免を求める意思を示し、過半数が「×」となれば裁判官は罷免される。今回の審査では、対象となった六人全員が信任されたものの、罷免票の割合は過去二十年間で最も高く、特に六人中四人が十%を超えた。これは、特定の裁判官への集中票ではなく、有権者が個々の裁判官について慎重に評価を下した結果とされる。
背景には、SNSやメディアの発展により、これまであまり注目されていなかった国民審査に対して関心が高まりつつあることがうかがえる。さらに、ジェンダーや人権問題などの国民の関心が高いテーマに関する判決が続く中で、今回の審査で罷免率の割合が高かったことは、裁判所の判断が民意と乖離していることを反映しているのではないか。特に、社会的課題に対する国民の価値観が多様化する現代では、国民が裁判官の個別判断やその背景に敏感に反応する傾向が強まっていると言える。しかしながら、現在の国民審査における情報提供は十分とは言えず、判断材料の少なさが国民主権を軽視する結果につながっている。国民審査が単なる儀式にとどまらず、国民生活に影響を与える裁判官の適格性を評価する実質的な機会となるよう、正確で充実した情報を提供し、有権者の意識を高める取組が求められるのではないだろうか。
以上を前提に質問する。
一
国民審査において、裁判官の適格性を判断するための情報提供が十分でないとの指摘がある。政府として現行の判断材料が十分であると考えているのか、具体的な見解を伺いたい。また、国民がより適切に審査を行えるよう、情報提供の拡充についてどのように考えているのか。
二
国民審査制度は、一九四九年の導入以来一度も罷免者を出しておらず、形骸化しているとの指摘がある。政府としてこの制度の実効性をどのように評価しているのか。また、広報内容や情報提供方法の改善として、NHKの政見放送のように各判事のプロフィールや過去の判断内容を紹介する放送や、投票所での裁判官情報の掲載などの必要性について、政府はどのように考えているのか。
三
現在の国民審査では「×」のみの記入形式のため、無記入が信任と棄権の両方を含む結果となり、民意が十分に反映されていないとの懸念がある。この点を改善し、「罷免可」「罷免不可」「棄権」の三区分を導入し、無記入を棄権として明確化することで民意を正確に反映する仕組みを導入すべきではないか。政府の見解を求める。
四
国民審査に関し、有権者が裁判官の適格性を理解し、判断材料を得られるよう、最高裁判所のウェブサイトに裁判官の情報提供や有権者からの質問に応じる仕組みを設けるべきではないか。このような情報提供システムの導入について、また既存の取組があるかも含め、政府の見解を求める。
五
国民審査は裁判官の任命後十年で行われているが、この期間は長すぎるとの声がある。例えば、衆議院・参議院議員の任期を踏まえ、四〜六年に短縮し、より頻繁に適格性の評価を行うべきではないか。また、現行の十年という審査間隔の根拠について政府の見解を求める。
右質問する。