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2024.11.11

令和五年度における児童生徒のいじめ・不登校に関する質問主意書

令和6年11月11日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『令和五年度における児童生徒のいじめ・不登校に関する質問主意書』

提出者 北野裕子

 
令和五年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査結果が十月三十一日に文部科学省から公表された。この調査では、いじめ認知件数、不登校児童生徒数とも過去最多を記録している。いじめの認知件数は、小・中・高等学校及び特別支援学校を含め、七十三万二千五百六十八件(前年度六十八万千九百四十八件)であり、前年度比で五万六百二十件(七・四%)増加した。後者の小中学校における不登校児童生徒数は三十四万六千四百八十二人(前年度二十九万九千四十八人)であり、前年度と比べ四万七千四百三十四人(十五・九%)増加した。
 
不登校につき文部科学省は、当該調査結果の概要において不登校児童生徒数の「増加率は前年度と比較して若干低くなった(令四 二十二・一%→令五 十五・九%)。」と述べている。しかし、当該記述は、実態を覆い隠し、不登校問題の深刻さを直視していないと言わざるを得ない。
 
なぜなら、不登校人数の増加について、単年度でなく令和二年度からの直近三年間での増加率で表すと、約一・七七倍の増加率となる。この増加率は直近三年間がコロナ禍にあったとはいえ、あまりに大きな数字であり、過去に例がない増加率となっている。不登校問題は、今回の調査結果において最も問題視すべきものの一つであり、その原因と対策を例年以上に検証・検討すべきことは論をまたない。
 
以上を踏まえて質問する。
 
 
不登校児童生徒のうち九十日以上欠席した者は十九万三百九十二人(五十五%)にのぼるが、調査統計上は、欠席日数は「九十日以上」と一括りにされ、九十日~百八十日、百八十一日~三百六十五日、三百六十五日以上といった細分化された区分が設けられていない。
 

1 なぜこのように「九十日以上」を一括りとする形式が採られているのか、その根拠について政府の見解を求める。

 

2 また、不登校期間が三百六十五日(一年)以上の場合と数か月の場合において、その深刻度や対策(解決)方法について大きな差異があると思われるが、この点についても、政府の見解を求める。

 
 
不登校の背景として当該調査結果は、①関係法の趣旨から無理に登校させなくても良いとする保護者の意識変化、②コロナ禍の影響、さらに③特別な配慮が必要な者への指導・支援に課題があったなどを挙げている。特に問題とすべきは、不登校の背景が③である場合であるが、ここで障がい者(疑い含む)を除いた場合、具体的にはどのような事例(事態)を主に指すのか、政府の見解を求める。
 
 
不登校児童生徒について把握した事実が、①学校生活にやる気が出ない、②不安・抑うつ、③生活リズムの不調など十四項目にわたり、その割合(%)が記述されているが、各項目の深刻度(軽・中・重度)が不明である。こうした深刻度を含めて経年調査を行うことこそが、不登校の対策・解決に資するとも考えるが、政府の見解を求める。
 
 
当該調査結果によると、「いじめの解消状況について」の結果報告があり、全学校で解消されているものの割合が七十七・五%と示されている。しかし、不登校の解消状況についての結果報告は見当たらない。不登校に関する解消状況の調査結果がないのはなぜか、またその調査を行っていない理由について、政府の見解を求めたい。加えて、今後、不登校の解消状況についての調査を行う意向がないのか、政府の見解を求める。
 
 
不登校児童生徒のうち、全体の三十八・八%に当たる十三万四千三百六十八人の児童生徒が、学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない。確かに、そのうちの十一万九千六百九十九人は担任等から週一回程度以上の継続的な相談・指導等を受けていることは多とするが、相談・指導等者が担任等と学校外の専門機関等とでは相談・指導等の内容において差異があることを踏まえると、三十八・八%の数字は到底看過できるものではない。そこで政府は、そもそも学校外の専門機関等による相談・指導等を一層増やす計画があるのか、またどんな数値目標をもっているのか。併せて、担任等の相談・指導等すら受けてない不登校の児童生徒が一万五千人弱いたわけであり、この児童生徒たちは調査結果が出てから今日までの一年間どのような対応がなされたのか、担任等の相談・指導等を受けることができたのか、政府の見解を求める。
 
 
今回の調査結果において、不登校問題以上に問題視すべきことが、いじめの重大事態の結果である。その発生件数は千三百六件であり、前年度から三百八十七件(四十二・一%)も増加してしまった。しかも直近三年間では、約二・五五倍もの増加となっている。この増加率は先の不登校児童生徒数の増加率以上であり、過去最悪な結果である。
 

1 この結果を政府はどう重く受け止めているのか。

 

2 増加の背景として、①関係法の理解が進み積極的な認定がなされた、②保護者の意向の尊重により増加したと述べているが、相当な違和感を覚える。①については、単なるいじめの認知ならまだしも、ことは重大事態である。いじめの重大事態の認定は当然行うべき当たり前のことであり、裏読みすれば、これまでは重大事態を軽視して認定に消極的であったと述べているのに等しいのではないか。この点の認識について政府の見解を求める。

 

3 ②については、いじめの重大事態に該当する客観的事実があれば、その重大性から秘匿を望む等の保護者の意向により左右されることなく認定されるべきものではないのか。この点の認識についても政府の見解を求める。

 
 
いじめの重大事態の増加の背景として、もう一つ③早期発見・早期対応の課題と教員が一人で抱え込む組織的対応への課題が挙げられている。この③の割合はいじめの重大事態事案のなかでどのくらいだと把握しているのか。またどのような対策を立てて、いじめの重大事態の早期発見・早期対応や組織的対応の改善を図ろうとしているのか、政府の見解を求める。
 
 
いじめの重大事態の認定につき、文部科学省は「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を今年八月に改訂し、いじめの重大事態の調査主体は原則的には学校主体ではあるが、例外的に被害者と加害者の主張が異なるケースなどには、学校外の第三者委員会が主体となって調査ができるとなった。これは評価すべき改訂であるが、第三者委員会設置の要件を満たし、かつ、学校長がその設置を教育委員会に依頼しても、教育委員会等が財政的負担の多額さを理由にして断っている事実が報道されている。
 

1 文部科学省はこのような事実を把握しているのか。

 

2 もし把握しているのであれば、各自治体の財政状況により第三者委員会設置がなされていない状況を文部科学省は放置せず、教員不足の中での学校側の負担の重さと当該ガイドラインの改訂の趣旨の貫徹さらには第三者委員会での報告内容がいじめの重大事態の防止に資することになることも考慮するならば、国が財政的支援をすべき場合があると考えるが、政府の見解を求める。

 
右質問する。

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