2024.11.11
投票時間繰上げの基準と公職選挙法第四十条の解釈に関する質問主意書
令和6年11月11日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『投票時間繰上げの基準と公職選挙法第四十条の解釈に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
総務省によると、令和六年十月二十七日投開票の第五十回衆議院議員総選挙では、全国の約四割の投票所が法定の午後八時よりも早く投票を締め切ったという。この内容が令和六年十月二十七日の読売新聞(オンライン版)で報じられると、ネット上では「「八時までならギリギリ間に合う」と予定していた人の投票権を奪うのはおかしい」、「これはアウトだ。経費節減のために投票所を閉鎖することが許されるなら、民主主義の根幹を揺るがす暴挙だ」といった批判が巻き起こった。
同記事によれば、栃木県では全ての投票所が午後七時までに閉鎖され、茨城県や福島県でも同様の措置が採られているという。また、各地の選挙管理委員会によるアンケートや説明によれば、投票立会人の確保が難しいことや、職員の時間外手当の削減が繰上げの背景にあるとされている。
この点、公職選挙法第四十条は、投票時間の繰上げを「選挙人の投票の便宜のため必要がある」又は「選挙人の投票に支障を来さない」と認められる特別の事情がある場合に限ると規定している。しかし、アンケート結果から見える繰上げ理由は、「投票立会人の確保」や「職員の時間外手当の削減」といった行政側の都合が中心であり、法の趣旨に沿った運用がなされていないという強い懸念がある。
投票時間の繰上げによって、本来投票できたはずの有権者が投票の機会を失う恐れがある。この状況を放置することは、有権者一人一人の選挙への参加権を軽視するものであり、民主主義の基盤である「平等な投票機会の確保」という原則を大きく損なうものである。選挙は、全ての有権者が公平に参加できることが大前提であり、行政側の都合を優先して繰上げを行うことは、選挙制度への信頼をも揺るがす懸念がある。
以上を踏まえ、以下質問する。
一
報道によると、各地の選挙管理委員会のアンケート結果では、投票時間繰上げの理由として「投票立会人の確保」や「職員の時間外手当の削減」といった行政側の事情が挙げられている。このような運用がある可能性について、政府はどのようにして公職選挙法の趣旨に照らして適切であるか確認しているのか。また、適切な運用を確保するために、実態調査を行うべきではないか。政府の見解を示されたい。
二
公職選挙法第四十条では、投票時間の繰上げが認められるのは「選挙人の投票の便宜のため」または「投票に支障を来さないと認められる特別の事情」がある場合に限るとされている。この「特別の事情」とは具体的にどのような状況を指すものと解釈されるか。政府の見解を示されたい。
三
投票時間の繰上げによって、実際に投票できなかった有権者が存在する可能性があるが、こうした影響を最小限に抑えるために、政府として具体的にどのような対策を講じているか。また、今後、選挙管理委員会に対して投票機会を最大限に確保するよう指導する考えはあるか。
四
政府は、「選挙投票所の閉鎖時刻に関する質問主意書」(第二百四回国会質問第七四号)に対する答弁書(内閣参質二〇四第七四号)で「総務省においては(中略)十分な検討を行い適切に対応するよう、都道府県の選挙管理委員会を通じて市町村の選挙管理委員会に助言してきている」と答弁しているが、その「助言」とは具体的に何を指すのか。選挙管理委員会が法の趣旨を理解し、「選挙人の便宜」を守るための具体的な指示や指導はあったのか。総務省の助言が、実際の現場における具体的な対応につながったのかも含めて示されたい。単なる指針の提示ではなく、各市町村の選挙管理委員会がどのように改善すべきかを示した具体的な内容と、その成果を明らかにされたい。
五
期日前投票の利用が促されているが、こうした情報が全ての有権者に適切に周知されているか、政府はどのように確認しているのか。また、期日前投票の利便性を高めるために、更なる施策を講じる考えはあるか。具体的な対応策について示されたい。
六
投票時間の繰上げの実施状況には地域によって大きな差が見られるが、このような地域間格差が選挙の公平性に影響を及ぼす可能性について、政府はどのように考えているのか。また、地域ごとの判断に任せるだけでなく、国として統一的な基準を設ける考えはあるか。政府の見解を示されたい。
右質問する。