2024.12.03
中国との友好都市提携を通じた影響力工作への警戒と情報共有に関する質問主意書
令和6年11月28日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『中国との友好都市提携を通じた影響力工作への警戒と情報共有に関する質問主意書』
提出者 吉川里奈
我が国の多数の自治体は、中国との友好都市提携を結んでおり、一般財団法人自治体国際化協会によれば、本年十月時点で友好都市提携千八百二十四件中三百八十二件(二十一%)が中国との提携で、米国(四百六十四件、二十五%)に次ぐ規模である。一方、欧米では中国が友好都市提携を相手国への政治的影響力拡大の手段として利用しているとの懸念が高まっている。
「地方公共団体における国際交流の在り方に関する指針(昭和六十二年三月自治省)」では、地域レベルでの国際交流の意義として、①住民の国際認識・理解を養成、②地域イメージを国際レベルで高揚、③地域アイデンティティを確立、④地域産業・経済の振興、⑤必要な情報を収集・提供、⑥行政主体としての国際協力を行うこと等が挙げられている。これらの取組は、国際社会での理解増進に貢献するものであり、その活性化は奨励されるべきである。
しかしながら、中国は、我が国とは異なる政治体制を持ち、また我が国とは領土問題を抱えており、その軍事力は安全保障上の深刻な脅威となっている。また、中国共産党政府指導の下、平時から情報戦や影響力工作が軍民の区別なく展開され、他国の政治に介入していることが国際的に広く認識されている。中国との提携には、より慎重な対応が必要であることは言うまでもない。
米国国家情報長官室の国家防諜安全保障センター(NCSC)が、二〇二二年七月に公表した「米国の州および地方レベルの政府およびビジネスリーダーを中国の影響力工作から保護する」と題した報告書によれば、中国政府は「米国の政策に影響を与え、自国の地政学的利益を促進するために、地方政府との関係を利用しようとする傾向が強まっている」「米国の国内政策を、中国にとって望ましい方向へ唱道する代弁者として、州や地方のリーダーを利用しようとする可能性がある」と警告しており、州や地域リーダーに対して、友好都市提携に際しては、「透明性、互恵性、説明責任といった原則に基づき米国の戦略的利益に反しないようにすべき」と注意喚起している。
一方、我が国の自治体は、中国との友好都市提携を一般財団法人自治体国際化協会が支援しているが、中国側では中国人民対外友好協会が推進役を担っている。
しかし、この中国人民対外友好協会について、ポンペオ米国国務長官(当時)は二〇二〇年九月二十三日の、ウィスコンシン州マディソンの州議会での演説で、「中国の外交官や中国共産党の要員が全米の州政府や議会の関係者に対し、スパイ活動や影響力拡大のための工作を展開している」と指摘し、「米国における中国との友好都市提携は、中国人民友好協会の管轄下にあり、この団体は中国統一戦線工作部の一部であり、共産党のプロパガンダ機関である」と述べ、警戒の必要性を訴えている。
さらに、二〇二三年八月九日付の産経新聞によれば、同年七月末に台湾で開催された、日米欧豪など四十カ国の議員連盟「対中政策に関する国会議員連盟(IPAC)」の年次総会に参加した議員に対し、訪台を取りやめるよう中国側から電話やメールでの圧力があったほか、日台交流サミットの際も、中国総領事館が宮城県や神戸市に対し「台湾は中国の一部」として開催中止を求めるなど我が国の自治体に対しても露骨に内政干渉をしている。
最近では、日本国内に中国の地方公安局の海外派出所が複数設置され、在日中国人に対する監視活動が行われていたことが報じられているが、これに関しても、国際人権NGO「ヒューマンライツウォッチ」は、本年十月九日付のウェブサイト記事「日本:中国当局が海外にいる政権批判者に対して嫌がらせ」で、中国当局が日本で人権侵害を批判する中国出身者の口封じを試みているとし、日本政府に対し、「国境を越えた人権弾圧を許容しないと明確にするべきだ」と訴えている。
しかし、自治体関係者への聞き取りでは、こうした中国の影響力工作に関する十分な知識が自治体に共有されていないことが判明している。我が国も米国のカウンターインテリジェンス機関のように、具体的な事例や分析を自治体と共有し、工作活動に対する注意喚起を行う必要があると考える。
以下質問する。
一
政府は、米国の国家防諜安全保障センター(NCSC)のように、我が国自治体に対して講習や研修などを通じて、中国が友好都市提携を利用して行う工作の実例を共有し、具体的な注意喚起を行っているか。
二
政府は、中国による我が国自治体への工作と思われる事例について、自治体が認知した際に報告を義務付けるなど、体系的な情報収集を行っているか。また、その傾向や手法を分析し、自治体の首長や国際担当部門にフィードバックする体制を構築しているか。
三
警察白書は「中国の動向」「我が国における諸工作等」で、中国による情報活動について「巧妙かつ多様な手段」や「積極的な働き掛け」を記載しているが、毎年ほぼ同様の内容であり、具体例に乏しい。このような重要テーマについて、政府は、国民に具体的事例を示し、注意喚起する責任があるのではないか。特に「警察白書」においては、可能な限り我が国の事例を積極的に公開し、海外事例との比較分析や最新の傾向と手法を明らかにすることで、防諜意識の向上に役立つ内容とするべきである。「警察活動に支障がある」として一切の回答を拒否する姿勢は、責任放棄と考えるが、この点について政府の見解を求めたい。
右質問する。