2024.12.19
我が国のカウンターインテリジェンス強化に関する質問主意書
令和6年12月19日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『我が国のカウンターインテリジェンス強化に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
私が提出した「我が国のカウンターインテリジェンス強化に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第八五号)に対する答弁書(内閣参質二一一第八五号)を受け、改めて以下のとおり質問する。
答弁書において、政府は、「諜報活動の取締りに関して各国が置かれている状況は様々であり、お尋ねの「諜報活動の検挙事例」の件数の多寡について評価を行うことは困難である。」としているが、本件で問うているのは、「なぜカウンターインテリジェンスの重要な成果である諜報活動の検挙事例がこのように少なく、処分も軽微なのか、その根本的な問題がどこにあるのか」であり、件数の多寡の話ではない。我が国がスパイ天国と呼ばれる原因はどこにあるのか、その根本的問題について問うたものである。
目下、我が国をめぐる安全保障環境はますます厳しくなっており、我が国に対する外国からの影響力工作の展開、プロパガンダの流布、サボタージュや諜報活動は一層活発化していることに疑いの余地はない。それにもかかわらず、これら有害活動に対して、関係当局による積極的な検挙や啓発活動を通じて、効果的に抑止できていると国民が信じるに足りる十分な情報が公開されていないため、我が国のカウンターインテリジェンスが、いわば「ブラックボックス化」しているのではないかとの懸念を国民は有していると考える。
「ブラックボックス化」とは「内部構造がどうなっているのか分からない状態」を言うが、インテリジェンスには特殊事情があるため、一定程度の「ブラックボックス化」は理解できる。しかし、少なくとも「インプット」と「アウトプット」は不断に検証されなければならず、万一、インテリジェンスの責任を負う組織が、その構造や能力に欠陥を有し、期待される効果を得られていないのであれば、「ブラックボックス」の内部構造についても精査、検証せざるを得ない。それは国民の代表として選ばれた国会議員の重要な責務である。
目下、ウクライナや台湾周辺海域は、かつてないほど緊迫した情勢を迎えており、対米共闘でロシアと連帯する中国は、我が国の防衛力を探るため、我が国の領空や領海に接近する威力偵察を頻繁に行っている。同様に、我が国の政治、経済及び社会に対する情報工作活動も一層活発に展開していることに疑いの余地はない。
このような状況の中、警察庁ホームページに掲載された警察白書の「中国の動向」のうち「我が国における諸工作等」の記載内容は、令和元年から令和六年までほぼ変わらず、具体的事例が乏しく一般論に留まっている。一方、昭和四十九年から昭和五十四年の警察白書では、多数の検挙例が具体的に示されており、内容も豊富で、その背景も明らかにされており、当時の捜査当局のプロフェッショナルとしてのプライドを十分に感じさせるものとなっている。
答弁書において、政府は、「外国による諜報活動に関する取締りの結果や捜査の過程で解明された事項について、警察において、適切な公表に努めている」としているが、前記で指摘したように過去の警察白書と比較して、現在の内容は適切に公表がなされているとは言い難い。この違いが生じた原因を時代背景の違いなど抽象的な理由で説明すべきではない。
警察白書の記載内容について、過去と比べて近年は具体的事例が乏しく一般論に留まっている理由として、有識者は以下を挙げている。
① 過酷な情報戦を闘った世代が第一線から引退するにつれ、その知識経験やノウハウが十分に後進世代に伝えられず対決姿勢が希薄になっていること
② 警察などを暴力装置と断じる革命勢力による世論闘争、法廷闘争など、いわゆる警察対策の積み重ねにより組織が委縮してしまっていること
③ スパイ防止法等有害な情報工作活動を取り締まるための法整備への熱意も、それを阻止せんとする外国情報機関やその影響下にある団体の反対運動に屈してきたこと
本質問主意書では、我が国の緊迫化する情勢の中でカウンターインテリジェンス能力の向上に障害となっている点を問い、政府に率直な見解を求めるとともに、この問題を広く知らしめて国民世論の喚起を目指している。
以上を踏まえて、質問する。
一
現在の警察白書の内容、特に「中国の動向」などの内容について、昭和五十年代と比較して一般論が目立ち、具体的事例やその背景説明が乏しくなっている理由を示されたい。
二
外国による諜報活動の取締り結果や捜査の過程で解明された事項について、過去の警察白書と同様に具体的な内容を積極的に公開する考えはあるか示されたい。また、外国情報機関の活動について、広く国民に警鐘を鳴らし、カウンターインテリジェンスへの理解を深めるための方策を検討しているか示されたい。
三
近年の経済安全保障等、技術情報流出防止に向けた政府の取組は評価できるが、外国からの対日有害活動は、影響力工作の展開、プロパガンダの流布、サボタージュや諜報活動等、態様が様々であり、これらの有害活動に対応できる法整備も不十分である。有害活動を取り締まるのに効果的とみられる、米国等で導入されている外国情報監視法(FISA)や外国代理人登録法(FARA)などを参考に、我が国の実情を踏まえながら、これに準じた有害活動を取り締まるための法の整備について、政府は研究又は検討を進めているか示されたい。
右質問する。