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2024.12.20

GIGAスクール構想の光と影 - 子どもたちの明るい未来のために
|岡川 たいき

デジタル化は時代の流れであり、教育現場でのICT活用には一定の意義があると思います。しかし、GIGAスクール構想による急速なデジタル化について、国内外から様々な研究報告や懸念が示されています。コロナ禍での一斉オンライン授業の経験からも、デジタル教育には光と影の両面があることが明らかになってきました。本ブログでは、実証的なデータに基づき、教育のデジタル化の現状と課題を明らかにし、具体的な対策を提言いたします。
 
GIGAスクール構想の光と影 – 子どもたちの明るい未来のために<br>|岡川 たいき
 

はじめに:世田谷区での現状

コロナ禍が始まり、ほぼ全生徒にデバイスは行き渡っています。しかし、学校によるデバイスの使用頻度の差が大きく、使っていない学校はあまり使われない文房具の一つになっており、デジタル教育とはとても言い難いとのことでした。一方で、世田谷区立駒繋小学校はテレビでも紹介されるほどデバイス教育に取り組んでおり、使っている学校が好事例を紹介し、情報共有しているとのことでした。
 教育委員会やご家族から伺う問題点としては、①重量、②充電、③自宅に忘れる、④故障、⑤保証、⑥買換え更新、⑦視力などですが、本当に問題はこれらだけなのか、海外の研究調査なども含めて紹介していきたいと思います。
 
■ デジタル教育の負の影響について
1.学習効果への影響
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2023年に「デジタル機器が生徒の学習を向上させるのではなく、むしろ妨げるという明らかな科学的証拠がある」と指摘しました。画面上での読解力と記憶力は紙媒体と比較して低下する傾向が示されています。
 
特に読解力については、OECDの学習到達度調査(PISA)において、デジタル機器の使用時間が長くなるほど、読解力・数学力の低下傾向が報告されています。
 
また他にも、東北大学が7万人以上の子どもたちを対象に実施した大規模調査で、スマホの使用時間が長くなるほど、学力の低下が見られるという調査結果を明らかにしました。これは、デジタル機器の使用が子どもたちの心身の健康に与える影響について、客観的なデータで示されました。(下記の図参照)
 
GIGAスクール構想の光と影 – 子どもたちの明るい未来のために<br>|岡川 たいき
引用元:朝日新聞Thinkキャンパス:https://www.asahi.com/thinkcampus/article-101101/
 
2.健康面への影響
文部科学省の2022年度学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満の小学生の割合は過去最高の37.8%に達しています。また、WHO(世界保健機関)は、子どもの視力低下防止のため、2歳未満の子どものスクリーン視聴を避け、2-4歳では1日1時間以内にするよう勧告しています。
 
3.電磁波の影響
フランスでは2015年に電磁波規制法を制定し、学校でのWi-Fi使用制限や、電磁波の人体への影響調査を義務付けています。特に発達段階にある子どもへの影響については、より慎重な検証が必要とされています。
 
4.精神面への影響
一日5時間以上スマホを見ている子供は自殺について考える割合が高くなる研究報告もされています。学校でデバイスを使用することで、自宅でのスマホ時間が増えるなどの懸念もあります。

 
GIGAスクール構想の光と影 – 子どもたちの明るい未来のために<br>|岡川 たいき
 

世界の教育現場での対応事例

各国では、これらの研究報告を踏まえた対策が始まっています。フランスでは2023年から学校でのスマートフォン使用を制限する法制度が施行され、オーストラリアでも2024年から同様の措置を実施します。
 
特筆すべき例として、スウェーデン政府は2023年に紙の教科書と書籍の購入に約90億円の予算を計上し、2024年、2025年にも毎年約66億円ずつ増額して紙の教材への回帰を進める方針を打ち出しています。
 
さらに、台湾の研究では、デジタル教科書よりも紙の教科書で学んだ生徒の方が、長期的な記憶定着率が高いことが示されています。これを受けて台湾でも、デジタル教科書一辺倒だった方針を見直す動きが出てきています。
 

具体的な政策提言

これらの研究報告と海外での取り組みを踏まえ、以下の政策提言を行います。
 

1. GIGAスクール構想の効果検証を第三者機関で実施すること

2. 学校でのデジタル機器使用時間のガイドライン策定(発達段階に応じた制限)

3. 紙の教科書と従来型の学習方法の併用の制度化

4. 電磁波を含む健康影響調査の定期的な実施

5. メンタルヘルスに関するモニタリング制度の確立

6. 教員へのデジタル機器活用研修の充実化

 
また、家庭での具体的な対策として以下を推奨します。

・学習以外でのデジタル機器使用時間の管理(小学生は1日1時間まで)

・休日の使用時間の明確な設定(午前中2時間などの具体的な制限)

・就寝2時間前からの使用制限(ブルーライト対策)

・運動や対面での交流時間の確保

・保護者と子どもの利用ルールの共同作成

 

最後に:未来に向けて

「子どもたちのために」という名目で進められるデジタル化政策ですが、その影響については、国際的な研究論文で様々な課題が報告されています。教育のデジタル化は慎重に進めるべきであり、子どもたちの健全な発達を第一に考えた政策が求められています。
 
私たちは引き続き、海外などの先進的かつ実証的な研究なども調査しながら政策提言を続けてまいります。デジタル化は避けられない流れかもしれませんが、その進め方は慎重であるべきですし、開始年齢なども再検討が必要ではないでしょうか。皆様の自治体ではどのようにデジタル教育は進められていますか?是非、教育委員会に聞いてみてください。
 

岡川 たいき
Okagawa Taiki
GIGAスクール構想の光と影 – 子どもたちの明るい未来のために<br>|岡川 たいき
所属議会
世田谷区議会議員(東京都)
経歴
京都産業大学経済学部 卒業
株式会社TIPPING POINT 勤務
 
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