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2023.05.30

【質問主意書】 岸田首相が掲げた花粉症対策に関する質問主意書

令和5年5月30日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『岸田首相が掲げた花粉症対策に関する質問主意書』

 政府は、本年四月十四日、首相官邸で関係閣僚会議を開き、六月までに花粉症対策を取りまとめるよう指示を出したと報道されている。

 今や花粉症は、日本人の四割以上が発症しているとされ、主にスギやヒノキなどの植物の花粉が原因で、アレルギー症状を引き起こす疾患と定義されている。しかしながら、同じ時期にピークを迎える黄砂や、PM二・五などの微小粒子も花粉症と似たようなアレルギー症状を引き起こし、花粉症状がある場合には、症状を悪化させると言われている。

 スギ花粉問題の背景には、一九六〇年代にスギの戦略的な植林が行われたことが挙げられる。当初は、建築資材需要や地域経済の促進が目的であったものの、外国木材の輸入自由化などによる需要の減少とともにスギの伐採数も減少し、森に多くのスギが残されることになった。また、黄砂現象は従来、自然現象とされてきたが、近年ではその頻度と被害が大きくなっており、中国大陸での過放牧や農地転換による土地の劣化などとの関連性も指摘されている。また、PM二・五増加の主因は、中国の経済活動による大気汚染の影響であることが指摘されている。

 当時の政府は、後に多くの日本人が花粉を始めとするアレルギー疾患に苦しむことになるとは考えていなかったと思われる。これらの事例は、人間の経済活動が自然に及ぼす影響が、思いもよらない結果をもたらすという教訓としなければならない。

 スギの活用は、日本の内需を考える上でも重要である。スギが多すぎることが問題なのであれば、生物多様性を高め、より持続可能な環境を作り出すために、かつての里山に存在したクヌギやナラなどの広葉樹への転換が望ましい。

 しかし、農林水産省が四半世紀近くにわたってスギの植え替え方針を立ててきたものの、その効果が十分に上がっていないと指摘されている。この問題の要因は単純ではなく、日本が直面している地方の過疎化による高齢化、「働き手」の喪失、海外からの安価な木材輸入の増加、木材需要の変化と競合産業の発展、さらに町村合併による「危機管理」の不確かさなど、複合的な要素が絡み合っている。

 これらの課題には、林業・木材産業の振興だけでなく、環境問題や持続可能な社会の構築など、広範な社会問題が関係している。そのため、スギの植え替えを通じてより良い環境と持続可能な社会を実現するためには、地域立て直しの課題として「花粉症対策」を位置付けた総合的なアプローチが必要である。

 以上の認識に立って、質問する。

 林野庁は、従来から花粉症対策に関する施策を進めており、本年三月には「スギ花粉発生源対策推進方針」を改正し、花粉が少ない種類のスギ苗木への植え替え推進、広葉樹の導入を進めるなどの方針を盛り込み、都道府県にも既に通知している。

 その後、四月十四日の花粉症に関する関係閣僚会議で岸田首相は、花粉症を「我が国の社会問題」と位置付け、実効性のある対策を六月までにまとめて迅速に実行する考えを強調した。この岸田首相の述べた対策は、「スギ花粉発生源対策推進方針」とは異なる独自の施策を盛り込んで詳細が示されることになると思われるが、わずか二か月で検討できることは相当限定的であろう。具体的にどのような省庁が関わり、どのような方針で検討を進めるのか。

 政府は、国民が花粉症を発症する原因は、何であると考えているか。また、花粉症発症者のうち、スギ花粉を原因とする花粉症発症者はどのくらいの割合になると分析しているか。スギの植え替えが進めば国民の花粉症はどのくらいの割合で改善すると分析しているか。

 黄砂やPM二・五は、花粉症と同じようなアレルギー症状を引き起こし、花粉症の症状を悪化させる原因にもなると言われている。アレルギー対策には原因物質の排除や免疫力の向上が重要視されるところ、今回の政府の花粉症対策には、原因物質の排除や免疫力の向上に関する内容も盛り込まれる予定か。

四 政府は、これまでスギの植え替えがなかなか進まなかった背景について、どのように分析しているか。

 政府は、花粉症対策を進めるに当たって、地方の過疎化をどのように転換して林業の担い手を確保するか。林業復興策について政府の見解を示されたい。

 右質問する。

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