2023.06.08
【質問主意書】 食料自給率向上と農業従事者支援の充実に関する質問主意書
令和5年6月7日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『食料自給率向上と農業従事者支援の充実に関する質問主意書』
日本の食料自給率は、平成二十二年度にカロリーベースで再び四十%を切って以降、令和三年度時点で三十八%と低水準のまま推移している。あわせて、令和四年には、基幹的農業従事者の平均年齢が六十八・四歳に達するなど、農業従事者の高齢化が進んでおり、この傾向は今後も続く見込みである。今後見込まれる高齢化した従事者の後継者不足による農業従事者数の減少は、農業生産量の減少をもたらし、食料自給率の低下に大きな影響を与える可能性がある。
農業従事者減少の影響は、食料自給率の低下だけにとどまらない。食料・農業・農村基本法第三条によれば、農業は、食料供給の機能だけでなく、国土保全や水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能を持つとされており、国土の良好な保全、豊かな水源や自然環境、景観を守ること、地域文化の継承などの面からも農業従事者数の減少の問題は深刻である。
政府は、平成二十四年以降、「人・農地プラン」を実施するとともに、平成二十六年度からは、農業生産の効率化を図るために農地バンクの創設や農地の集積・集約化に取り組んできたものの、この間も我が国の耕地面積は減少し続けており、水田稲作を見ても単位面積当たりの収量はほぼ横ばいとなっている。政府目標を達成するためには、より踏み込んだ施策を講じるべきである。
一部メディアでは、「日本の農家は国からの補助金に依存しており、過保護だ」という論調があるが、農業への保護政策は、世界的に見て決して特異なものではない。EU加盟国では直接支払制度を通じて農業経営体の所得を支えており、アメリカでは価格支持融資制度などが農業経営体を経営困難から救い農業生産を維持する仕組みが整えられている。実際、こうした保護政策は日本よりも充実しており、日本の農業に対する保護政策が他国と比べて過度であるという事実はない。農業の特質上、保護政策がなければ、消費者は手頃な価格で食料を入手することが困難となり、農業従事者も安定した経営を維持することが困難となることは明らかだ。
日本の農業は、他国とは地理的条件等が異なるため、農業競争力に差が生じることは避けられない。しかし、そのことをもって農産物供給を海外からの輸入に頼ることは、食料自給率の向上で食料安全保障を図るという現代世界の要請に背を向けることになる。食料の輸入依存度を減らし、食料自給率の向上に注力するために日本農業が置かれた条件に見合った政策を実施する必要がある。何よりも生産者が経済的に安心して農業を継続し努力すればそれに見合った収入を得られるよう、国や行政が主導した支援策やスキームへの誘導が必要である。
以上の観点から、以下質問する。
一 昭和三十五年に千百七十五万人であった農業従事者数は、六十年後の令和二年には、約九割減の百三十六万人となった。政府は、これらの数値の推移に基づいて、農業従事者数の確保に向けた目標を年次的にどのように設定し、その達成のための取組をどのように計画しているのか。
二 同じく昭和三十五年から令和二年にかけて、カロリーベースの食料自給率は、七十九%から三十七%と半減した。食料・農業・農村基本計画では、令和十二年度までに飼料の自給率と食料国産率の向上を図りながら、カロリーベースで総合自給率四十五%、生産額ベースの総合食料自給率を七十五%に高める目標設定をしているが、こうした数値目標は耕作地と農業従事者確保、経営の効率化などが図られなければ単なる画餅となりかねないものである。前記一への答弁と併せて、令和十二年度までの食料・農業・農村基本計画の目標数値の達成をどのような取組で担保していくのか、具体的に示されたい。
三 現在、農業生産を拡大し促進する取組の一つとして、都市部での水耕など、限られた空間を最大限に活用し効率的な食料生産を実現する新しい農業展開が試みられている。これらの新しい事業について現状と政府の今後の支援策、目標について説明されたい。
四 農業従事者の減少は、耕作放棄地の増加という形にも現れている。耕作放棄地が長期間放置されると、農地としての再利用可能な土地が減少することにつながる。耕作放棄地について、それが放棄されてきた年数が五年以内のもの、五年以上のもの、十年以上のものそれぞれの面積と割合、都道府県別の分布、それぞれの地域における農地全体に対する割合を示されたい。あわせて、政府は、これらの耕作放棄地の再生と有効活用についてどのような対策を構想しているのか、具体的に示されたい。
五 令和四年十一月三十日公表の農業経営統計調査「令和三年 農業経営体の経営収支」によれば、令和三年全農業経営体の平均農業所得は百二十五・四万円となっている。低水準の所得が農業従事者数の減少の一つの要因となっている。今後、農業生産発展の方向性と併せて、平均農業所得をどのように引き上げていくのか、年次的な数値目標を含めて政府の取組を示されたい。
六 同調査では、我が国の主食である米を生産する水田稲作経営の一経営体当たり農業粗収益は三百五十・三万円となっている。これから農業経営費三百四十九・三万円を差し引くと、農業所得は、一万円となり、前年に比べて九十四・四%減となっている。これらの数値は、水田稲作以外の農作物生産の所得も含まれているのか。また、水田稲作専業経営体と他の作物を並行して生産している経営体の実数、割合についても示されたい。水田稲作を専業にしている経営体のみを見た場合の平均農業所得はいくらになるのか。
七 政府は、持続可能な農業経営を支援するため、農業経営体の収入向上策についてどのような目標とテンポをもって進めようとしているのか。また、政府は、米の消費拡大の取組と農業従事者振興策に関する質問主意書(令和五年二月二十八日提出質問第二九号)に対する答弁書(内閣参質二一一第二九号)で、「需要に応じた生産による農業者の所得の向上が、農業従事者の育成に資すると考えている」と答弁しているが、「需要に応じた生産による農業者の所得の向上」のための施策はどのような内容なのか。
八 日本の農地は、傾斜地の多い中山間地域にも広く点在しているため、農地の集約・大規模化には限界がある。小規模農家による経営がこうした地域では重要な役割を果たしているが、これらが農業生産を存続するために、どのような支援策を講じているのか。
九 政府は、若手農業従事者の創出・育成や、失業者に対する事業転換支援などについて、どのような施策を実施しているのか。計画している内容を含めて、数値目標と併せて示されたい。
右質問する。