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2023.10.20

【質問主意書】 再生可能エネルギー事業に伴う森林開発に関する質問主意書

令和5年10月20日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『再生可能エネルギー事業に伴う森林開発に関する質問主意書』
 
 現在、山間地などを含め我が国の至る所で太陽光発電パネルや発電用風車が見られる。平成二十五年度から令和四年度の間に再生可能エネルギー事業のために林地開発許可処分がされた面積は、一万七千百七十八ヘクタール(東京ドームおよそ三千七百三十四個分)に及ぶ。
 
 水源涵養機能の維持や、土砂災害防止のために指定されている保安林についても、再生可能エネルギー事業のために指定解除ができるようになり、すでに九十八ヘクタールが指定解除された。このために森林部の開発が急加速し、貴重な森林面積が減少している。
 
 日本は森林が国土の三分の二を覆い、世界でも土地に占める森林率が相当に高い国である。多雨で山が多く、急峻な地形を持つ日本において、豊かな生態系の中で数百年の期間をかけて作られた森林、とりわけ林齢の高い天然林となっている奥山の働きは、生態系・生物多様性保全の観点から極めて重要である。あわせて、森林は、樹木の根が抱え込む土壌や堆積した落ち葉等が表土の浸食を抑えることで土砂流出を防ぎ、雨水を蓄える保水機能を持つおかげで、河川流水が適度に調整され、水不足も洪水をも防いでいる。同時に蓄えられる水は、農業はもちろんあらゆる産業を支えており、私たちの暮らしに欠かせない極めて重要な資源である。逆に考えるなら、森林減少は保水機能の減退につながり、水不足や水害の被害を広げることになりかねない。
 
 令和二年十月、当時の菅首相は、所信表明演説で、二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。これにより政府は、地球温暖化対策の一層の推進を掲げ、太陽光発電施設及び大規模風力発電施設の建設を飛躍的に推進するため、内閣府に、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」を設置し、再エネ推進に障害となるあらゆる規制の緩和の検討と早期の規制緩和に向けて動き出した。しかし、結果として前述のような森林減少による弊害を引き起こしつつあり、また酸素供給元をも減らすことから、一面的な数値目標の追求で新たな矛盾に陥っているものと言わざるを得ない。
 
 現在、政府の旗振りで進められるようになった奥地脊梁山地の開発は、水源、生態系への影響が大きい。奥地林は保安林や緑の回廊に指定されているにも関わらず、再生可能エネルギー事業が展開される計画が策定されている。
 
 このような状況について、地元住民や地方自治体から、疑問の声が上がっている。岩手県知事が、「「(仮称)薮川地区風力発電事業」計画段階環境配慮書に対する岩手県知事意見」(令和四年十一月二日)の中で、「保安林は、指定の趣旨から森林以外への転用は抑制すべきものであることから、検討に当たっては保安林を除外すること」を求めているのは、その代表的な例である。
以下質問する。
 
 再生可能エネルギー事業のために二酸化炭素の吸収源である森林を伐採することは、まったくの矛盾となる。森林保全と再生可能エネルギー開発の関係について、数値的な「貢献度」の目標を含め、どのような戦略課題を展望しているのか。太陽光パネル設置や風力発電によって減らされる森林について、どのような形で補うのか。
 
 再生可能エネルギー事業において、保安林の指定解除が可能とされているが、保安林指定がめざす事業目的をどう担保するのか。その災害対策上の役割を何によって代替しようと考えているのか。保安林転用についての許容範囲について、どのように考えているのか。
 
 岩手県知事の「保安林は、指定の趣旨から森林以外への転用は抑制すべきものであることから、検討に当たっては保安林を除外すること」との意見について、政府はどう受け止めているのか。どう回答したのか、具体的に示されたい。
 
 風力発電事業においては、森林の尾根である奥山が開発対象となる事例がある。奥山の持つ環境保全上の重要性に鑑み、緑の回廊の区域内など特に保全が必要とされる区域においては、積極的に開発対象から除外すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
 
 保安林指定解除を行わず、保安林作業許可で再生可能エネルギー事業のための大規模な道路開設や風況調査のための設備設置等が実施される事例があることについて、政府は、把握しているのか。把握している場合には、場所、面積について具体的に回答されたい。また、保安林指定解除を行わず、保安林作業許可で再生可能エネルギー事業が実施されることは、保安林指定の趣旨から妥当と考えているのか。
 
 政府は、再生可能エネルギー事業のために国有林野の貸付けを行っているが、今後も同様の貸付けを行う数値的な計画を有しているのか。また、貸付けを実施する国有林野の選定は、いかなる基準、目安で行っているのか、具体的に説明されたい。
 
右質問する。

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