2023.12.11
【質問主意書】 我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問主意書
令和5年12月8日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する再質問主意書』
我が国の「移民政策」と外国人労働者に関する質問主意書(第二百十二回国会質問第四九号)(以下「本件質問主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質二一二第四九号)(以下「本件答弁書」という。)に示された答弁について、再質問する。
政府は、「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人について本件質問主意書が「移民政策」であるとしたことに対し、これについては在留期間が「三年、一年又は六月」と定められ、在留期間の更新が、「当該更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可される」との要件があることから、「移民政策」ではないと答弁した。しかし、「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人には、永住権の取得要件を満たせる可能性があり、本件答弁書も認めているように「専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れる」施策を進めることで、外国人を家族帯同で大規模に受け入れることにもなる。これは、結局のところ「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れる」こととなり、本質的には「移民政策」と言わざるを得ない。
本件答弁書によれば、今回の閣議決定による「特定技能二号」の対象を大幅に拡大させる政策の目的は、専ら各産業分野における労働力不足を補うことである。しかし、この拡大によって外国人労働者を受け入れることによる経済的利益と、受入れに伴う社会コストの比較や具体的な数値の試算は行っていないとのことである。政府の判断は、結局のところ当面の各産業分野における労働力不足を短絡的に補うことだけに偏重し、外国人労働者を産業の求めに応じて国内移住させ、それによって生じる生活、文化上の摩擦や教育、福祉政策上の新たな社会的負担については、全く視野に入れていないということが、本件答弁書で明瞭となった。
政府は、この在留資格による外国人労働者の受入れについて言葉の上だけで「移民政策ではない」というが、一時的な労働力補充に留まらず、長期的な移民政策へと発展する可能性があることは今回の導入スキームを見るなら誰にでも明らかであり、慎重に影響を検討すべきものである。さらに、外国人労働者の受入れに伴う経済的利益と社会コストのバランスを考慮し、短絡的な経済重視のアプローチから脱却することも必須である。
他の先進諸国で進められた外国人労働者受入れに関して生起している諸問題、対応のための政策事例を研究し、教訓を活かしてしばしば暴動や従来からの居住者との衝突が生じているような失敗を繰り返さないことが重要である。そして、労働力政策については、長期的には出生率向上、更に未就労者の就労支援、技術者養成など人口政策の観点からも練り上げた総合的かつバランスの取れた、持続可能な労働力政策のあり方を探求し策定することが求められている。
右を踏まえ、質問する。
一 政府は、「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人には、在留期間が限定されていると答弁した。しかし、実際には、在留期間の更新は可能であり、一定の条件を満たせば永住権の取得も可能であると思われる。これを考えるなら、「専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れる」という政府方針は、結果的に多くの外国人移民を生み出すことにつながるのではないか。
二 在留期間の更新が「当該更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可される」との要件について、「当該更新を適当と認めるに足りる相当の理由」とは、いかなるものか。対象となる外国人の個人的事情や職場の条件に基づいて判断されるものか。それだけでなく、我が国の経済状況や、特定分野の人手不足の解消などの労働環境なども加味して行われるものか。
三 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁令和五年十二月一日改訂)では、「原則として引き続き十年以上本邦に在留していること」が要件の一つとして記載されている。この点について、「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人が在留期間の更新を行い、十年以上本邦に在留した時にも、当該要件を充足することとなるか。また、「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人については、永住許可の要件として在留期間にこの期間は参入されるのか。
四 「特定技能二号」の対象業務拡大に際し、必要な人材の確保が困難であると判断する根拠として用いられた有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計、または業界団体を通じた所属企業への調査等の客観的な指標等について、具体的な数値と内容を明らかにして説明されたい。また、生産性向上や国内人材の確保を目指した取組を行ってもなお熟練した技能を有する人材の確保が困難であると判断した際に考慮した「生産性向上や国内人材の確保のための取組」とは何か、具体的内容を説明されたい。
五 本件答弁書によれば、「被送還者の自国民引取義務を適切に履行していない国」からは受け入れず、「その他我が国の出入国管理上支障を生じさせている・・・国からの受入れについては慎重に対応する」とされている。この基準に基づくとして、右の条件に必ずしも当てはまらない国のうち、例えば、我が国との二国間関係が極めて劣悪である国、我が国の安全保障にとり重大な脅威を与える国、経済安全保障の観点から我が国の国益を害する恐れのある国、または、国内において重大な人権侵害が行われている国などからの受入れは行うことになるか。外国人労働者の受入れに際しては、自国民引取義務の履行と出入国管理上の支障だけでなく、相手国の総合的な状況を考慮した選定基準を設けるべきではないか。
六 省令改正にあたっては、パブリックコメントが実施されたとのことであるが、多くの国民にとって議論の経過や問題の所在が十分に明らかにされたとは言い難い状況である。実際にわずか六件の意見が寄せられたに留まっているし、「特定技能二号」の対象業務拡大が報道された際には、これに対しての強い懸念の声が国民から寄せられている。「特定技能二号」の対象拡大に関する国民の意見を聞くための機会がこのパブリックコメントのみに限られているのであれば、この制度の拡大が将来の社会に与える影響などについて、国民に対してより丁寧な説明を行い、広範な国民的議論を促進する必要があると思われるが、政府の見解を示されたい。
七 「経済に与える効果」とは、「特定技能二号」の対象拡大に伴い外国人労働者を受け入れることで、人材が確保され、対象業種が活性化するなど、我が国の経済活動に及ぼす影響を指し、「社会コスト」とは、外国人労働者の受入れに伴い、社会保障費の増加、対象業種全体の賃金の低下、外国人受入れによる地域の行政費用の増加などのコストを指す。これらの問題について、これまで「具体的な数値を試算するような取組は行っていない」のであれば、日本社会全体に影響を与える施策であることを考慮し、今後は、「社会コスト」について具体的な数値を試算し、「経済に与える効果」と比較することが必要ではないか。
八 本件答弁書によれば、「…向こう五年間の受入れ見込み数については、…「特定技能一号」の在留資格をもって在留する外国人受入れの上限として運用する」とのことであるが、かかる「特定技能一号」の在留資格を持って在留する外国人受入れの上限の具体的数値を対象分野ごとに示されたい。
九 外国人労働者の受入れに際しては、人手不足といった各業種のミクロ的な要因だけでなく、在留外国人の総数、家族帯同の有無といった在留形態、長期にわたる在留期間が日本社会に与える影響、それに伴う社会コストなど、社会全体に及ぼす影響を考慮した総合的かつマクロ的な判断基準を設けるべきではないか。
十 本件質問主意書で提起したように、諸外国には、外国人を大規模に受け入れた際に生じる現象やその影響について多くの先例がある。我が国が今後外国人受入れの課題に取り組むにあたり、これら諸外国の先例を研究し、参考にして同じ轍を踏まないことが重要である。これまで諸外国の先例をどの程度研究し、如何なる教訓を得ているか、示されたい。
右質問する。