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2023.12.13

【質問主意書】 女性専用スペースの保護に関する質問主意書

 令和5年12月13日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『女性専用スペースの保護に関する質問主意書』
 

 今年六月に公布・施行された性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(以下「LGBT法」という。)については、法案審議以前から、法律の規定等の理解に幅があることなどの影響により、風呂、トイレ、更衣室などの女性専用スペースの利用に混乱が生じるのではないかという懸念が女性団体などから上がっていた。それを反映し、法案成立後すぐに「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」も発足している。
 
 このような懸念を裏付けるように、三重県桑名市にある温泉施設の女性風呂に、女装した男性が侵入し建造物侵入の現行犯で逮捕されるという事件(以下「本件事件」という。)も発生している。報道によれば、容疑者男性は「心が女なので、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか全く理解できない」と供述していたという。
 
 厚生労働省が示す公衆浴場における衛生等管理要領等では浴場と脱衣所を男女別に区分することが定められている。同省のこの要領等では、この男女の区分を身体的特徴により行い、運用するとしている。この運用に従うなら、桑名市の事件で逮捕された男性については、その内心に関わらずこうした社会通念で認められるべきところの公衆浴場運用ルールを逸脱したものであることは明らかである。
 
 一方、労働安全衛生規則によっても、事業者は特定の条件のもとで、男女別のトイレや休養室又は休養所を設ける義務がある。しかし、同規則では、男女の区分を身体的特徴に基づいて行うという内容は見当たらない。また、更衣室については男女別に設置するという内容も見当たらない。この点は、公衆浴場の要領の場合とは異なっている。
 
 本件事件を契機として、女子トイレ、女子更衣室などの他の形態の女性専用スペースの安全性について、「基準があいまいになった形では安心して利用できない」と、女性から不安の声が上がっている。このような女性の不安は、何も自認する性別に基づいて生活を送りたいと考える人々を尊重しないという趣旨ではなく、同法を奇貨として、女性スペースに近づく男性がいるのではないかということに対する不安である。性犯罪の圧倒的多数が男性から女性に対するものであり、トイレや更衣室は、度々性犯罪(盗撮やのぞき行為等も含む)の発生場所となってきたことも、こうした不安の根拠となっている。
 
 今後も、女性スペースの整備と利用について運用規定などがLGBT法施行の影響で曖昧化し、矛盾を来しているような状況を放置すれば、桑名市のような事件よりも重大な事件が発生していく可能性がある。自認する性別に基づいて社会生活を送る権利を尊重しつつ、特に犯罪の起きやすい空間については、物理的に犯罪を誘発することを避ける措置をとり、圧倒的多数の女性が安心して利用できることでその人権を守るという視点が必要と考える。
 
 以上を踏まえ、質問する。
 
 女性専用スペースの安全な利用に関する懸念が高まっている状況下、政府は実際に起きている事件などに鑑み、どのような措置を検討しているか。公衆浴場、トイレ、休憩所他の設置や管理、利用に関わる要領、基準について安心・安全をより確保するための改定や新たなルール設定など、具体的な検討を行っているか、示されたい。
 
 令和五年七月十一日、最高裁は、性同一性障害である旨の医師の診断を受けた公務員の庁内の女性トイレ使用について、個別具体的な判断を行い、職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求を認めなかった人事院に対して裁量権を逸脱していると判断したが、少なくとも「身体的性と性自認が異なる」場合に本人の性自認の主張のみを基準に女性専用スペース(浴場、トイレ、休養室、休養所、更衣室など)に立ち入ることについては、他の女性の精神的安寧、人権を脅かすおそれがあることから、明確に禁ずる必要があるのではないか。そうした基準を性的マイノリティの人々を含めた社会のコンセンサスにしていく取組が求められているのではないか。「LGBT法」施行後に求められる課題として、政府は以上に関しての認識を示されたい。
 
 当面、「LGBT法」施行による新たな条件下に対応して性犯罪を予防し、公共スペースでの安全を確保するために、政府はどのような社会教育及び学校教育での計画を策定し、実施しているか。社会的な啓発活動に関してはいかなる施策を実施しているか。現状での実施状況とその効果、見通しについて具体的に示されたい。
 
 右質問する。

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