2023.12.31
東・南シナ海における日本の安全保障戦略
2023/12/30 山下 政治
11月の筆者の記事は「(防衛)装備品はチャイナを取り巻くアジア諸国へ配備し、 満洲、モンゴル、ウイグル、チベットへも配備し支那を包囲することを計画したい。壮大な計画だがここまで強固にしてこその安全保障だ。
アジアの名士として、そしてグローバリストを駆逐する尖兵となるのが日本の役目なのだから。」(i)と締めくくった。
この筆者の締めくくりに追従するようなレポートがForeign Policy Research Institute/外交政策研究所から今年8月に「日本のフィリピンへの安全保障関与」と言う題目で出ているので紹介したい。
海上保安庁最大級の巡視船「あきつしま」を今年6月、フィリピンに派遣した。そして日本は史上初の対外軍事援助供与を準備し、フィリピンへ1500万ドルの無償供与を履行した。これは「南シナ海を通るシーレーンの安全補償を強化する装備品の購入費用」(ii)のためだ。金額規模としては比較的小さいが、「東南アジアとの安全保障上の結びつきを深めようとする日本の20年近くにわたる取り組みの最前線にある、フィリピンに対する日本の安全保障上の関与の高まりを実証するものであった。」(ii)
フィリピンは日本に沿岸警備を強化するための支援を要請していたが1967年の三原則政策によって支援を行えなかったのである。この政策は「共産主義圏の一員、国連安全保障理事会決議による武器禁輸の対象国、国際紛争に関与している国への武器輸出を禁止するもので、1976年にはさらに厳しくなり、基本的にすべての国が対象となった。」(ii)
しかしアジアの海洋周縁部におけるチャイナの攻撃的な行動は日本国民に海外での安全保障への関与の必要性を認めさせた。さらに2014年当時のフィリピン大統領ベニグノ・アキノ3世の「日本政府に他国を支援する権限が与えられれば、善意の国々が恩恵を受ける。」(ii)という発言が日本の平和主義的な安全保障政策を修正する動機になったのではないだろうか?
今回の支援がなぜフィリピンなのか?について本レポートが説明をしている。まず、「東南アジアの中でフィリピンは日本にとって自然な安全保障上のパートナーである。」(ii)これは日本と同様にフィリピンが群島国家であることを挙げている。尖閣諸島にチャイナからの威嚇があるのと同様にフィリピンではスプラトリー諸島との係争やスカボロー諸島を封鎖されておりチャイナによる海洋威嚇があるためである。
また、「日本とフィリピンは長年にわたるアメリカの同盟国でもある。〜中略〜日本の指導者たちはすでにフィリピンとの安全保障上の結びつきを強めれば米国との二国間同盟と強調して西太平洋における抑止力をさらに強化できると考えており米国も同意している。」(ii)
物資支援については前述の三原則政策の本格的な修正により大きなハードルを乗り越え、2011年に人道的・平和的目的の武器輸出や武器の共同開発・製造に関連する武器輸出の一部を除外した。さらに「2013年の参議院選挙において安倍晋三氏が国民に訴え決定的な勝利を収めた翌年、安倍政権は『防衛装備品・技術移転三原則』を刷新し、海外への防衛装備品の提供をより容易にした。」(ii)
しかし日本には軍事援助予算がないので軍事物資の移転費用を支払う方法を見出さなければならなかった。そこで安倍首相は国際協力機構(JICA)の政府開発援助プログラムを利用したのである。経済開発には海上安全も含まれると解釈し「フィリピン沿岸警備隊向けの非武装44メートル、パローラ級巡視船10隻の建造資金を調達することができた。その後、国際協力機構は新型の97メートル級巡視艇の建造にも資金を提供し2022年に最初の巡視艇が海上試験を実施した。」(ii)
さらに安倍首相は日本の自衛隊からの余剰装備を費用回収なしに移転する方法にも取り組み「海上自衛隊の退役したTC-90練習機3機を海上哨戒機として使用するためにフィリピンに譲渡することを協議し余剰防衛物資を当初の費用よりも低い金額で譲渡した。」(ii)
日本は防衛装備品・武器等の輸出を安倍首相の頭脳プレーにより事実上可能にしたのだ。そして日本は、まずは同じ海洋国家であるフィリピンに対しての物資支援を開始したのである。
チャイナによる海上威嚇によりフィリピンは日本の生命線であるオイルロード12,000kmを守る要になる。日本のフィリピンへの安全保障関与は必要不可欠だ。フィリピンにとっても日本からの軍事支援はチャイナとの係争地域への強力なバックアップ戦力となる。互いに利益があり大きな意味がある。
また、チャイナによる台湾有事が勃発した場合でも日本とフィリピンによる台湾防衛にも有効と考えられる。
日本の対外軍事援助供与は、未だ防衛しかできない日本が、戦闘ができる東南アジア諸国との協力を得ることで防衛力の強化につながる。そして次の段階としてやっと普通の国家、つまり軍隊を持つ国家になることが目標ではないだろうか。
日本国内では「正式な軍隊を持ち、集団安全保障の取り決めに参加できる国になるのではないか、と懸念する声もある。日本の一部の有権者にとってはそうかもしれない。」(ii)とレポートは指摘しているが、「米国が実践しているような安全保障への関与を日本が完全に発展させるには間違いなく時間がかかるだろとう。しかし日本は長い道のりを歩んできた。東京が安全保障上のパートナーに殺傷能力のある武器を輸出できるようにすることだ。そうすれば兵器を受け取る側だけでなく、その兵器を製造する日本のメーカーにとっても有益になるだろう。」(ii)と外交政策研究所は言っている。アジアにおける安全保障はそろそろ日本が担うべきだ、と言いたいのであろう。
フィリピンへの対外軍事援助はさらに進展し既にベトナムへも巡視艇を提供している。今後マレーシアとフィジーは日本の軍事援助を受ける可能性があると示唆している。
筆者の11月の記事の締めくくり部である「防衛装備品はチャイナを取り巻く周辺諸国へ配備するべき。」(i)と指摘したが、明らかに日本の東南アジアへの安全保障関与が始まりさらに加速していくことであろう。
了
参考文献
(i)日本の国家安全保障戦略 2023年11月
(ii) Foreign Policy Research Institute Aug 2023
画像
海上保安庁