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2024.04.04

ジュネーブにおける人知れぬ闘い〜沖縄先住民族問題①

ジュネーブにおける人知れぬ闘い〜沖縄先住民族問題①ジュネーブ国連本部 筆者撮影

2024年3月26日 吉岡綾子(ドイツ在住)

 
◯ 国連とは世界の代表者で世界政府のトップなのか?
 
United Nations(連合国)を「国際連合」と和訳したのは一体どこの誰なのだろう?いっそのこと「戦勝国連合」と名付けてくれれば随分わかりやすかったのに、そう思う一方で、そんなことはあり得ないとため息をつく自分がいる。言葉の吟味には意図が込められるものなのだから、自らの正体を現すネーミングをする訳などありえないのだ。しかし世間の多くの人々は「国連」に何かしらのブランドのイメージを持っていると思う。
 
例えばアーサー・C・クラーク著SF傑作小説に「幼年期の終わり」という作品がある。ある日突如として世界各国の大都市上空に現れた巨大な宇宙船。宇宙人オーバーロードの導きによって、世界中の「国」という既存のシステムは崩壊。その後、国連の事務総長が世界の代表者として、宇宙人(オーバーロード)と交渉を重ねていく、、、。①
あれから年を経た今になって気付いた。A・C・クラークの意図はともかく、国連と言えば世界を取り決める世界政府のような巨大な組織だと思い込むに十分なプロパガンダ作品であったことは疑いようがない。
 
国連とは文字通り第二次世界大戦連合国を意味する。敗戦枢軸国の戦後処理の場と言い換えてもよい。国際連合憲章条文第53条、第77条、第107条に「敵国条項」が定められている点からしても、フェアな取り決めをする場ではあり得ないし、ましてや世界政府の頂点など勘違いも甚だしい。
 
しかしながら国連に対する世間の大雑把な評価は上記の通りだし、現実に様々な取り決めが行われている。昨今話題になっているWHO(世界保健機構=国連の保健機関)のいわゆるパンデミック条約改正・IHR(国際保健規則)改正の流れからも、国連が国家の枠組みを超えた世界規模で各国に影響を及ぼさんとしている経緯は明瞭だ。一旦拘束力を持った決議がなされると撤回するのは容易なことではない。今回、筆者が関わった沖縄問題もまさしく国連という、日本の現場から一万キロメートル離れた場所で行われる闘争であった。
 
この度、筆者は沖縄政策フォーラム代表である仲村覚氏の行った国連スピーチとサイドイベントに同行させていただく機会に恵まれ、国連という場をこの目で見、体験してきた。そのレポートを述べていこう。
 
◯ 誰も知らない「沖縄先住民族決議勧告」
 
2008年より国連から既に6回にわたって出されている、日本政府に沖縄の人々を正式に先住民族と定めてその権利を認めるべきとの勧告に対し、その撤回を求める派遣団(団長:日本沖縄政策研究フォーラム理事長仲村覚、南城市つきしろキリスト教会牧師砂川竜一氏)が2024年3月20日、スイス・ジュネーブにある国連に到着した。翌21日には各国のNGOを招きサイドイベントを開催し、これらの勧告が根拠のないものであることを訴えた。②
 
仲村氏はスピーチで、国連において「沖縄の人々の先住民族決議がなされた事実をほとんどの沖縄県民が知らされておらず、沖縄県民がそもそも認識も議論もしていない」状態であること。そして県民の側から発せられたわけではないテーマが国連で何度も俎上に載せられているという事実が、「特定の政府の侵略的意図を前提とする」ことを訴えた。③
 

沖縄の人々が先住民族として国連から決議勧告を受けていることを知っている日本国民はどれくらいいるだろうか?沖縄県民でさえこのことをほとんどの人が知らない。県議会で議論されたこともましてや採決されたこともない。そもそも沖縄の人々とは誰のことを指し先住民族の定義はどういうものなのであろうか?
 
驚くべきことに国連広報センターの「先住民族」ページには定義されるべき基準が規定されることなく保護活動の重要性のみ取り上げられている。④ そして「沖縄の人々」とは沖縄県民を指さず、戦前から沖縄県に住む地元の人々(ウチナーンチュ)を漠然と指すらしい。ではウチナーンチュは先住民族なのかと問われればその答えは完全にNOである。DNA鑑定からも言語学的にも史実を辿っても沖縄から独立運動など起こった事実は無く彼らは普通の日本人なのである。⑤
 
先住民族というとアボリジニやアメリカインディアンなどを思い浮かべるかもしれない。入植者達によって迫害を受け虐げられ騙され土地を奪われ絶滅の危機に瀕している民族のことだ。沖縄の人々はかつてそうで、そして現在もそうなのだろうか?しかしここで驚くべき事実を知ることになる。国連にはそもそも「先住民族」の定義すら無いというのだ。いつからどのくらい定住していれば良いのか?どれほどの民族純度を保っていれば良いのか?これらは個々の事例によって事情が異なるため、特に定義を設けていない、、らしい。
 
誰も知らない、定義も対象者もわからない人々が大和民族(つまり日本人)によって迫害の歴史を辿ってきたという妄想を決議する機関が国連の人権問題審議会の正体であると結論付けても良さそうだ。
 
◯ 裏に隠された目的〜狙われた沖縄
 
沖縄の人々が「先住民族」であり保護さるべき対象なのだと主張するグループがある。その急先鋒が玉城デニー沖縄県知事を担いでいる琉球独立派だ。沖縄県民に街頭インタビューでも行って、あなたは沖縄県が琉球王国として独立することを望んでいるかと尋ねたならば、それは一体どこのテーマパークのイベントなのだ?と答えが返ってくるのがオチだろう。県民の民意を受けぬ、この琉球独立には一体どの様な意図が隠されているのであろうか?
 
「戦後、沖縄が米軍統治下にあった時には車のナンバーには、”KEYSTONE OF THE PACIFIC” と書かれていた」ほど沖縄は日本及び全てのアジアの国々の自由主義を守る安全保障の重要な場所でありアジアを共産主義の侵略から守る最も適した位置にあった。そのため中国は、その「米国の太平洋覇権を突破するために、第一列島線、第二列島線という防衛ライン」を設定した。 
 
ジュネーブにおける人知れぬ闘い〜沖縄先住民族問題①第一・第二列島線
       
ジュネーブにおける人知れぬ闘い〜沖縄先住民族問題①スクランブル発進ルート
 
スクランブル発進ルートが「沖縄の島の間の宮古海峡が中国軍機の太平洋に出る幹線道路となって」いる状況やスクランブル発進がここ10年で10倍に急増している。(仲村氏のサイドイベント演説)
 
台湾統一を宣言している中国が、現在、武力統一にあたって最も邪魔なのが台湾の隣りにある日米両軍である。しかしながら「宮古海峡の制空権を有しているのは日米」であり有事の際、中国には勝ち目がない。それゆえ「沖縄の人々を先住民族とする」運動を行うことによって分断を誘う作戦に出た。つまり一連の動きは「中国が背後にあって、進められている在沖米軍撤退工作沖縄の人々を先住民族とする政治工作」であると解説した。
 
沖縄の人々を先住民族とする国連勧告は、この中国の太平洋進出を全面的に後押しするものとなっている。
 
ジュネーブにおける人知れぬ闘い〜沖縄先住民族問題①
何故なら、先住民族の権利に関する国連宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)30条では、先住民族の土地での軍事活動は禁止されているからなのである。このように「先住民族の保護」とは、沖縄に利益を生むどころか敵に付け入る隙を見せ侵略の入り口を開け、招き入れることになり得る非常に危険なものだということなのである。ところが沖縄は東アジアにおいて、最も軍事的緊張の高いエリアであるにもかかわらず、国連の人種差別撤廃委員会及び自由権規約委員会は2008年より合計6回も沖縄の人々を先住民族とする勧告を出した。
 

これらの勧告は、沖縄を利用する様々なNGOや政治団体に沖縄を非武装、独立に扇動するツールとして使われ、東アジアの軍事情勢を不安定にさせている。
また、近年中国メディアでは、琉球が明の時代、清の時代より中国の藩属国だと繰り返し報じており、事が起きたときに、日本に対して琉球解放を求めて核恫喝をする危険性すらあるという。国連の沖縄の人々を先住民族とする国連勧告は、中国のこのような恫喝に対して正当性を与えるものになりかねない。
 

① A・C・クラーク「幼年期の終り」ハヤカワ文庫SF341
② 八重山日報 「国連の先住民族韓国撤回を」2024年3月21日
United Nations HUMAN RIGHTS COUNCIL 37th Meeting 20 March 2024
国際連合広報センター「先住民族」
⑤ 仲村覚「狙われた沖縄」ハート出版

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