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2021.04.25

トランプ政権の偉業「2対1ルール」~
数字にすると見えてくる規制廃止の経済効果~

2021/04/25 森雄飛

 

我が国においても何かと話題に上がったドナルド・トランプ前アメリカ合衆国大統領ですが、トランプ政権が実際に打ち出した政策を知っている方は果たして何人いるでしょうか?残念ながら、テレビや新聞ではトランプ氏の派手な言動ばかり扱われ、政策についてはほとんど報道されてないように感じます。

 

そこで、本記事ではトランプ政権の歴史に残る規制改革政策「2対1ルール」について紹介したいと思います。

 

トランプ大統領(当時)が就任して1週間も経たないうちに著名した大統領令13771号 [1] が、いわゆる2対1ルールです。2対1ルールとは、連邦政府の各機関に対して次の2点を要求するものです [1-3]。

 

(1)        新しい規制1件につき2件の規制を廃止すること。

(2)        規制によって生じる経済損失が許容額または上限額を超えないこと。

 

このルールの効果は絶大でした。2017年度の報告書 [2] によると、トランプ政権発足後たった8カ月間だけで、各連邦政府機関は67件の規制を廃止した一方、新設した規制はわずか3件でした。「2対1」を大きく上回る「22対1」です。

 

本大統領令は不要な規制の件数をただ単に減らすだけに留まりません。各政府機関に対して、規制により生じる経済効果または経済損失を算出し、それらの合計が年度ごとに設定する許容額または上限額を超えないことを要求しています。同じく2017年度の報告書 [2] によると、規制廃止による経済効果は政権発足後たった8カ月間だけで81億ドル(約8900億円 ※1ドル110円換算)に達しました [2]。

 

一方、我が国では法規制が年々増えるばかりです。いわゆる「立法爆発」です。1970~80年代の法規制は1000本前後でしたが、2015年8月1日現在は1950本に達しています [4]。この30~40年間で倍増したことになります [4]。

 

また、我が国では規制による経済損失の計算も実施していません。したがって、規制緩和するか、規制強化するかを定量的に判断し、議論することができないのが現状です。このような状況では、規制改革が進むはずがありません。

規制による経済損失計算を行っているのは、アメリカだけではありません。カナダやイギリスでも同様に行われています [3]。我が国でもできるはずです。

 

我が国においても規制による経済損失の計算結果が公表されるとともに、不必要な規制が廃止されていくことを切に願います。

 

参考文献

[1] Executive Order 13771 of January 30, 2017, Reducing Regulation and Controlling Regulatory Costs, https://www.federalregister.gov/documents/2017/02/03/2017-02451/reducing-regulation-and-controlling-regulatory-costs

[2] The Office of Information and Regulatory Affairs, Regulatory Reform: Two-for-One Status Report and Regulatory Cost Caps, Executive Order 13771: Final Accounting for Fiscal Year 2017and Cost Caps for Fiscal Year 2018, https://www.reginfo.gov/public/pdf/eo13771/FINAL_TOPLINE_All_20171207.pdf

[3] The Office of Information and Regulatory Affairs, Regulatory Reform under Executive Order 13771: Final Accounting for Fiscal Year 2018, https://www.reginfo.gov/public/pdf/eo13771/EO_13771_Final_Accounting_for_Fiscal_Year_2018.pdf

[4] 榎並利博, 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary, 立法爆発と法律のオープン化 第1回 立法爆発の実態と専門家の限界, https://judiciary.asahi.com/fukabori/2015091500002.html

 

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