2021.05.20
韓国エンタメの光と闇と、国力とは
2012/05/20 池田みえこ
2012年5月13日、アメリカの代表的な雑誌<ローリングストーン>の6月号表紙が韓国のアイドルグループ防弾少年団(以下BTS)になったことが、SNS等で伝えられた。翌日のハンギョレ新聞では「『BTSの大成功―7人の若いスーパースターは、どのように音楽業界のルールを書き換え、世界で最も人気のあるバンドになったのか』というタイトルの<ローリングストーン>の記事で、彼らの結成過程から音楽制作方法まで、さまざまな内容を扱った」とし、同時に「<ローリングストーン>は彼らの入隊問題に対して、最近、韓国政府が大衆文化芸術で頭角を表した彼らの兵役延期を可能にする法改正に乗り出した」ことを紹介している。
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/995245.html
また同紙の2020年10月17日の記事では「ガールグループ成功確率0.001%の影を取り除くために」というタイトルで、 MBN(放送局)が新たにリリースした番組<ミス・バック>を「『傷を抱いて舞台裏に消えたガールグループ・メンバー』再起のためにアドバイスやコーチングを提供」する番組として紹介し、「1年間にデビューするガールグループは60〜70チーム」あり「K-POP業界は表面だけを見れば大変華やかな産業であるが~略~最も過酷な産業」、エンターテーメント業界のジレンマとして「消費者の需要が変化し続けるので、どんなものが選択されるのかを推測することが難しく、才能を持つ多くの新人が流入しながら多様な試みをしなければ」ならないことを挙げ、「人権が保証されているかどうかを、探ることが難しい産業」とし、 今から10年前に「アイドルグループの『奴隷契約』の問題が明るみになって2009年芸能人標準契約書が導入された」ことなどを引用しながら、今後もより「過熱競争を防ぐための制度を導入すること」などが言及されている。
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/966137.html
一方、5年前の2016年10月12日中央日報「『アイドルの影』練習生、約束のない奴隷契約が放置」では、「多くの契約書は、所属会社の義務であるデビューなど詳細に記述されず、契約期間も明記されていない場合」があり、「練習生の場合、法の死角」に置かれていることを示していたが、ここ数年間、何も改善されていない現状が浮き彫りになった。
https://news.joins.com/article/20712592
華やかで活気あふれる韓国のエンターテイメントは、全世界から注目を浴びている。それは韓国コンテンツ振興院という準行政機関が国策として、Kポップその他「韓流」を営業・販売し輸出しているからだろう。
一方この国の現状として、人気を集めた男性アーティストの「兵役問題」や、芸能企画会社と契約期間約7年によっておこるアイドル7年目のジンクス「解散問題」など、ほんの一握りである成功者0.001%の問題であれば、まだいいのかも知れない。しかし残り99.999%の練習生という名の法的グレーゾーン「奴隷契約問題」などの闇の部分は数年たっても改善されていないことが明らかだ。
韓国の資源とは何かという問いに対して、この国には資源らしい資源がないので「人材」なのだと人はいう。それは、韓国の歴史にもその実例がある。
5世紀の高句麗・新羅の時代から、特に一番盛んであった高麗時代・李氏朝鮮時代にかけて、当時の中国へ「貢女」という女性を朝貢品として献上していた歴史がある。その時代の国力としての「人材」が、結局この国を支えていたのだろう。
一方日本の歴史を見ると、豊臣秀吉や徳川家康が「バテレン追放令」などキリシタン迫害した原因の一つに、イエズス会がキリシタン大名と共謀して民衆を奴隷として世界に輩出ことを阻止した事実がある。
日本において天皇の「大御宝(おおみたから)」である民衆は、韓国とは違って、時の権力者たちによって守られてきた存在なのだ。縄文の時代から天皇の「シラス国」である日本には、そもそも奴隷という概念がなかった。
「国力」とは、いったい何だろうか。
Kポップなど華やかな韓国エンターテイメントを見ながら、そこに地政学的な弱小国の生き残りをかけた戦いによる「儚さ」を感じる同時に、大御心(おおみごころ)と海に守られてきた日本の底力を深く感じてしまうのは、筆者だけなのだろうか。
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