2021.06.15
日本防衛軍の創立
2021/06/15 山下 政治
米国ではチャイナに対する感情が超党派で高まっている。ニューヨークでの一連のアジア人に対する暴力を見ると政治の世界のみならず一般の人々の間でもチャイナへの嫌悪感は高まっているのだろう。(筆者が思うに「アジア人」とはアジア人全体ではなく「チャイナ人」に対する米国人の嫌悪感であろうと理解している。)
チャイナに対する感情が高まった大きな原因は香港の政治的服従とウイグル人への人権弾圧であろう。その前段にはFree Tibet キャンペーンがありこれらの人権弾圧に米国は超党派でチャイナを非難している。米国シンクタンクのAmerican Enterprise Institute (AEI) は「新疆のハイテク監視国家は、そこで行われているウイグル人への拷問、大量監禁、レイプ、強制不妊手術などの惨状は、過去の専制君主の不朽の手法に似ている。 [1]」とすでにチャイナの蛮行をこのように分析している。
チャイナはGDP世界第2位の経済的な大国になり米国をも脅かす存在となった。今年3月にアラスカで行われた米中高官会談では「アントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障顧問が中国の行動に対するアメリカの不満を簡潔に述べた後王毅外相と楊潔篪外相がアメリカの外交・国内慣行を痛烈に批判したのである。[1]」
アメリカを相手に一歩も引かぬという剣幕ぶりの裏には経済大国になったという自信があるのだろうか?
1971年に当時大統領補佐官であったキッシンジャー氏が極秘電撃訪中して以来米中の親交が始まりチャイナはその後経済成長を成し遂げてきた。もちろん米国はチャイナとの結びつきによりそれなりの利益を得たことは事実だ。しかしチャイナの成長の副産物としてチャイナをモンスターにしてしまい世界の厄介者とさせてしまったことも忘れてはならない。
チャイナは、「歴史は今や退廃したアメリカの民主主義国家ではなく、台頭する共産主義政権の側にしっかりとある[1]」と印象付けようとしているが、今までの歴史を見る限りこの主張は現実的ではなく独裁国家は自由主義国家に打ち負かされている。
だが、チャイナの向かうところは中華思想であり、チャイナが世界の中心であり、主導権を握り支配的な地位を確保することなのだ。
「チャイナでは4つの目標を掲げた壮大な戦略が展開している[1]」、とAEIは指摘している。その内容は、まず共産党が絶対権力を維持すること。このために「生活のあらゆる面で共産党の主導的役割を確保する。[1]」第2にチャイナを完全なかたちにする。
このために「台湾や香港などの疎外された領土を中国共産党主導の国家に再び組み込む[1]」。台湾や香港は疎外された地域であるという認識をもっていることにもチャイナの傲慢さが見え隠れする。3つ目はチャイナを優位な位置に着かせるために、「ワシントンをはじめとする外部のアクターが周辺に追いやられるような地域的な勢力圏を作りたい[1]」と考えていることで、「複合的な国力と国際的な影響力を持つ世界的なリーダー[1]」になることだとしている。
このように世界の覇権を得るためチャイナはすでに香港を政治再編入し台湾には威嚇的軍事演習を行いフィリピン、ベトナムといった周辺諸国を脅かしている。 また「30年前から軍備を増強しており2014年から2018年の間にインド、スペイン、イギリス、ドイツの海軍が保有していた船を合わせた数よりも多くの船を海に出している。[2]」同じ自由主義国であるアジア諸国を挑発する行為は米国を睨んでのことであろう。今のチャイナの戦力では米国には太刀打ちできないが周辺諸国には十分対抗できるものである。
チャイナの戦略はさらに拡大し一帯一路構想ではオセアニアからラテンアメリカまでの国々に経済的、外交的、そして軍事的な影響力を与えようとしている。
中国の一部の戦略家や知識人は、「『中国を中心とした新しい世界経済秩序』を公然と提唱し、目的に合わなくなった米国主導のシステムを捨て去るべきだ[2]」と言っている。まさにこれはキッシンジャー氏が提言した“帝国は国際システムの中で活動することに興味はなく、国際システムになることを望む ”という帝国主義をチャイナは習得しようとしている。
アジアで台頭しているチャイナをこのまま自由主義国側が黙って指を咥えている訳はない。歴史上独裁国家が覇権を握ることは今まで一度もないのだ。
KATO Instituteの昨年8月に出した「日本は武装してでも中国と真剣に向き合わなければならない[2]」というタイトルのレポートがある。このレポートでは「中国に対抗する最も重要な米国の単独のカウンターウェイトは日本である。[2]」カウンターウェイトとはエレベーターやクレーンで荷重のかかる反対方向へかける重りのことである。米国と同じ志を持つ同盟国であるということだ。米外交問題評議会のミラ・ラップ・フーパー氏は”日本はますます、日本の手段で自国の防衛を賄わなければならなくなっている。”と言っており「日本を占領していたアメリカが課した有名な『平和憲法』は、技術的には軍隊の保有を禁じているが、その解釈は非常に難解でねじ曲がったものになっている。[2]」と指摘しておりもはや憲法第九条を早く改正せよ、と米国は促しているのである。
日本は今のところ軍事的には米国の後ろ盾がある。チャイナの脅威に対して「日本は、対応するために必要な時間と空間を持っている。自国を守るために必ず使用する核兵器を早急に製造することが必要である。[1]」とついにAEIの論文に核武装容認の内容が記された。核武装するための時間はアメリカが稼ぐから日本は核武装せよ、とラブコールを送っているのではないか!
チャイナ問題に関して前述のKATO Instituteは「さらに根本的な問題として、核兵器の問題がある。米国が怒りに任せて核兵器を使用した唯一の標的である日本は、この問題に特別な思いを持っている。しかし、ワシントンの『拡大抑止』政策は、中国の核武装が進むたびに懸念材料が増えていく。東京のためにロサンゼルスやシアトルなどを危険にさらす必要があるだろうか。一方、日本が独立した抑止力を持つようになれば、北京は東京に対して攻撃的な行動を取る前に慎重に考えなければならなくなる。[2]」独立した抑止力とは詰まるところ核武装だ。日本が核武装しなければ米国に危機が迫る、ということを隠すことなく言っている。
そして最後に「中国は米国にとって重要な課題であるが、それ以上に近隣諸国にとって重要な課題である。これらの国々は結果として生じる脅威に対応するために率先して行動すべきだ。特に日本は。しかし、それはワシントンが一歩下がって初めて可能になる。経済的な現実を考えると、パクス・アメリカーナを終わらせる必要があるのである。[2]」
パクス・アメリカーナとは超大国アメリカ合衆国の覇権が形成する「平和」である。つまり米国が世界の警察であることを終了することで日本の独自武装を促している。アメリカは、米中戦争はしないが日中戦争は容認する。その準備をしておかないと大変な事になるぞ、と警笛をならしているのである。
今後日本は米国の後ろ盾がなくなる日が来るだろう。その日がくる前に日本は憲法改正と自衛隊から防衛軍への変革が必要になる。そして核武装を余儀なくされることであろう。しかしそれは日本がやっと大東亜戦争後GHQが仕組んだWGIPが解かれ戦後レジュームから抜け出すことを意味している。むしろ筆者は日本が、真の日本を取り戻すときであり歓迎すべきことではないかと考える。
(了)
参考文献
[1] American Enterprise Institute Aprel 18, 2021. China’s creative challenge-and the threat to America
https://www.aei.org/op-eds/chinas-creative-challenge-and-the-threat-to-america/
[2] KATO Institute August 20, 2020. Japan must take china seriously, even if that means arming up
https://www.cato.org/commentary/japan-must-take-china-seriously-even-means-arming
画像
https://www.mod.go.jp/asdf/special/download/wallpaper/F-2/index.html