2021.07.29
米国4州で所得税減税法案が可決 ~税をより低く、よりシンプルに~
2021/07/29 森雄飛
2021年6月、アメリカのオハイオ州、アリゾナ州、ニューハンプシャー州、ノースカロライナ州の4つの州で州所得税(以下、所得税)の減税法案が相次いで可決されました [1,2]。
オハイオ州では、所得税の最高税率を3.99%に引き下げる法案が議会で可決されました [1]。また、この法案では税率を下げるだけに留まらず、複雑な累進課税制度を見直して税制をよりシンプルにするため、税率4%以上の2つの所得税区分が廃止されます [1]。
このように、できるだけ税率を一律にして税制をシンプルに分かりやすくすることは「フラットタックス化」と呼ばれています。アメリカ共和党保守派は、このフラットタックスを民主主義の基本と考えています。「主権を有する国民の誰もが政府に支払う税額を専門家に頼らずとも把握できる」ことが重要視されているのです。
アリゾナ州でも、減税とフラットタックス化の法案が議会で承認されました。いままでの所得税率は2.59%から4.5%までの4段階で構成されていましたが、一律2.5%に統一されます [2]。これは全米で最も低いフラットタックスの税率です [2]。
ニューハンプシャー州では、所得税を完全に廃止する法案が議会で可決されました [2]。同州では元々給与所得への課税はありませんでしたが、利息や配当金による所得に対しては5%の税が課せられていました [2]。しかし本法案により、その5%の課税も無くなることになります。
ノースカロライナ州では、所得税の一律税率が5.25%から3.99%に引き下げられる法案が議会で承認されました [2]。
このように、アメリカの各州は「税金をより安くする」とともに、「税制をよりシンプルにする」ことで人材を確保し、雇用を創出し、経済成長し、近隣の州との競争力を高めようとしています [1]。善政合戦が繰り広げられているのです。この州同士の善政合戦は、アメリカの国内総生産(GDP)が世界第1位である理由の一つと言えるのではないでしょうか。
一方、我が国では昨年2020年に年収850万円以上のサラリーマンに対して所得税が増税されました [3,4]。この増税は、基礎控除、給与所得控除および所得金額調整控除といった各種控除制度を変更することで行われました [3,4]。我が国の税制は専門家が必要なほど複雑です。
我が国においても、「減税」と「フラットタックス化(税制のシンプル化)」が必要なのではないでしょうか。
参考文献
[1] Americans for Tax Reform (ATR)、Ohio Passes Largest Personal Income Tax Cut in State’s History、https://www.atr.org/ohio-passes-largest-personal-income-tax-cut-state-s-history?amp
[2] Americans for Tax Reform (ATR)、Three States Pass Historic Tax Cuts on the Same Day、https://www.atr.org/three-states-pass-historic-tax-cuts-on-the-same-day?amp
[3] 日本経済新聞、高所得層は税負担増、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66473160Q0A121C2PPK000/
[4] ARUHIマガジン、収入850万円超は増税に⁉ 2020年の「所得税」をFPがおさらい、https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-2905/