2021.07.30
ベトナムにおける日本のアニメ・ドラマ人気
2021/07/30 橋本 秀行
筆者が仕事関係でベトナムに駐在していたのは、2014-16年の2年間。最初に驚いたのは、首都ハノイ中心地の電線・バイク・美人の多さ!ベトナムでは交差点を渡るタイミングが非常に見極め辛い。信号を守らないベトナム人が多くてびびる、、のも事実だが、その実情は交差点に佇む女性たちの美貌に気を取られ横断チャンスを失していた、というのが事実だったかもしれない。
のちにもっと驚いたのは、ドラえもんと名探偵コナンの認知度の高さであった。Saigoneerによると、ドラえもんのマンガが初めてベトナムで発刊されたのが1992年。しかし、このころは俗に言う“海賊版”(違法)であり、正規のルートでの出版ではなかった。
その後、「1998年に発行元である小学館とキムドン社(ベトナムの発行会社)で正式に出版権に関する契約が交わされた。」また、ドラえもんの作者である藤子不二雄氏の意向もあり、海賊版でのドラえもん発行期間で得られた著作権料をそのまま奨学基金『ドラえもん基金』の設立にあて、2017年の時点で10,574人の成績優秀なベトナム人がその基金から奨学金を得ている。
少し古い情報であるが、ウィキペディアによると、「2013年時点で、ベトナムにおけるドラえもんの発行部数は1,200万部を超える。」
実際、駐在当時の事務所の裏が幼稚園で、その幼稚園から毎朝必ずドラえもんの歌(こんなこといいな できたらいいな あんなゆめ こんなゆめ いっぱいあるけど)が流れてくるだけでなく、子供たちが一緒に歌いだす光景を目の当たりにして度肝をぬかれたのと同時に、『あ、これは“いい意味”での洗脳教育だな!』と思ったのを今でも覚えている。
ドラえもん、のびたもしずかちゃんのお風呂場シーンを覗くのにどこでもドアを使うのもいいが、こういった外国の地で、幼稚園児がドラえもんの主題歌を毎日歌っている光景もどこでもドアを使って見て欲しいと思う。
次にDetective Conan world.comによると、「名探偵コナンのマンガがベトナムで初めて発刊されたのは2000年。アニメの放映が始まったのが2009年で、土日毎週17時からの放送であった。」それから20年以上も人気が継続しており、実際、Thanhnien.vnによると「最新のマンガ単行本97-98巻は、あらゆる出版社を完全に圧倒できる印刷量(発行部数)を持っている(国内のあらゆる本:約30万部)。」
実体験としても、コロナ禍以前の2019年ごろ、月に1回程度のペースでベトナムに出張に行っていた頃、時期によるが必ず名探偵コナンの映画が英語・ベトナム語の字幕つきで見られるようになっていたし、駐在時もドラえもんと名探偵コナンの映画が毎回リリースされていたのを覚えている。
近年では、「鬼滅の刃、呪術廻戦、JOJOの奇妙な冒険、ワンパンマンなどが人気で、」それらをNetflixを通じてみているとのことだが、マンガ・アニメ以外のエンタメ、例えば、日本のドラマ・映画などになってくると、その認知度はあまり高くないと思われる。実際駐在時に、TBSがJIN-仁などのヒット作を試験的にベトナムで放送を試みたと聞いたが、その後日本のドラマが継続的に放映されたという話は余り聞かない。
一方、2000年初頭から積極的に自国のドラマ・映画をベトナム市場に売り込んできた韓国は努力の甲斐もあり韓国のドラマが好きと答えたベトナム人の比率が54%(日本のドラマの同比率は30%)、映画52%(日本36%)と、我が国のドラマ・映画人気の比率を上回っている。
だが日本のドラマ・映画の認知度・人気は戦略次第だと考える。それらの認知度・人気があがることにより、派生の商品・サービス、例えば、人気俳優の着ているT-シャツが欲しい!同じ髪型にしたい!同じコスメを使いたい!ドラマの主題歌をSpotifyで聞きたい!などの経済的波及が可能となる。それを実現させるためにも、産業界を横断した緻密なマーケティング戦略が必要だと感じる。
出典 : Saigoneer/2017/12/11
Doraemon and 25 Years of Fostering Friendship in Vietnam
https://saigoneer.com/saigon-culture/12042-doraemon-and-25-years-of-fostering-friendship-in-vietnam
(一部参照)
【参考URL】
1.ウィキペディア 「ベトナムにおけるドラえもん」
2.Detective Conan 「Detective Conan in Vietnam」
https://www.detectiveconanworld.com/wiki/Detective_Conan_in_Vietnam
3.Thanhnien.vn 「Giải mã thương hiệu Conan và lý do khiến chàng thám tử ‘mãi không lớn’」
4.World Voice 「日本のアニメ・コミックはベトナムでどのくらい人気があるのか?」
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/yoshihiromiura/2020/12/anime.php
5.Qandme.net 「Popularity of Korean and Japanese contents」
https://qandme.net/en/report/popularity-of-korean-and-japanese-contents.html
6.Tienphong 「Trao 540 học bổng Doraemon cho học sinh xuất sắc」
https://tienphong.vn/trao-540-hoc-bong-doraemon-cho-hoc-sinh-xuat-sac-post981831.tpo