2021.09.30
インドもお隣の国が厄介です
2021/09/30 松本裕子
ロシア、北朝鮮、韓国、中国など、お隣の国との友好は難しい。これは、ご近所問題がどの家にもあるのと同じで、世界中で見られる現象だ。ちょうど良い距離感とはどれぐらいだろうと思い、大学で経済学を教える30代のインド人にインドの隣国問題をインタビューした。南アジアで大人気のスポーツ、クリケットの話題から始まった。
南アジアは、クリケットが盛んでプロリーグもありますよね。とりわけパキスタン対インド戦は国をあげての興奮状態になると聞きますが、なぜですか?
「大袈裟のようですが、死ぬか生きるかみたいな気持ちで見ています。W杯のパキスタン戦となると、ほぼ全国民がテレビにかぶりつきです。心臓に良くないです。パキスタンでも同じだと思います。単なるクリケット、されどこれは戦場なんです。」
インドのプロチームにパキスタンの選手はいますか?
「2008年の印パ紛争後、パキスタン選手はインドでクリケットが出来なくなりました。一方で、1992年のW杯でパキスタンが初優勝した時の主将、イムラカーンが現首相です。パキスタン以外の選手(アフガニスタン、バングラデシュ等)はインドリーグにいます。インド選手は他国のリーグに行ってはいけないという規則があります。
イスラム教徒とかは関係ないのですね?
「バングラデシュがパキスタンから独立する時、インド軍が力を貸しました。仲がいいですよ。だからか、W杯のイスラム教のバングラデッシュ対ヒンズー教のインドの試合には力が入りません。異教徒同士ですが、どことなく身内の試合って感じですかね。」
インド国内でイスラム教徒とヒンズー教徒との対立はあるのですか?
「インドにおけるイスラム教徒は、インドネシアに次いで多いのです。クリケットでのパキスタン戦の敵対感や、バングラデッシュ戦のゆるい感じは、国民全体が共有しています。一方で印パのカシミール領土問題があります。紅茶で有名なアッサム地方は、バングラデッシュとの国境地域に当たります。土地を守るという意味でヒンズーイズムが強調されています。宗教といより領土問題です。海によって国境が守られている日本人にはわかりにくいかもしれません。」
インドとイスラム教国との関係はどうですか?
「インドとパキスタンは政治的に対立しています。中国も対立国です。これらの大国と立ち向かうために、その他の国とは仲良くしようとしています。パキスタンの向こう側のイランやサウジアラビア、隣国バングラデッシュやスリランカは友好国です。テロリストがインド国内に入ってきてほしくないのでアフガニスタンを支援しています。例えば、お隣とけんかしていたら、その向こう側の家とは仲良くしますよね。それと同じで宗教で友好国とか対立国とか分けているわけではありません。
アフガニスタンと言えば、今タリバン政府になっていますが、マスコミと違う見方をされていますか?
「マスコミが言うことも正しいと思います。でもこれは事実の一部です。友人の父親は医師(ヒンズー教インド人)で、国連関連事業に参加して、アフガニスタンで患者を診ていました。タリバンの人も診ていました。その友人の父が危ない目にあった時、恩義を感じていたタリバンは自分の身を顧みずに友人の父を守ったそうです。その方は、無事にインドに帰りました。」
ありがとうございました。
常に変化するお隣さんとの距離感。その中で相手とどれぐらいの距離感を取るのか。日本としては悩ましい問題ですが、様々な国を観察分析し、日本は日本人のために賢く立ち回る必要があるという、このことを多くの日本人が共有できれば良い方向に向かうのではないかと、筆者は思っています。
参考資料
https://ja.wikipedia.org › wiki › インド・パキスタン関係
https://ja.wikipedia.org › wiki › クリケット・ワールドカップ
https://ja.wikipedia.org › wiki › バングラデシュ独立戦争
イムラン・カーン パキスタン・イスラム共和国首相 – Ministry …