2020.09.18
コロナ時代が生み出す責任ある資本主義ー金融資本主義の終焉
長期投資と社会的責任を果たし生き残りをめざすーー欧州企業が生まれ変わるチャンスと捉えるコロナ危機。
このままパンデミックが長引けば世界の多くの企業は生き残れなくなる・・・だが、 もし企業が社会への責任を果たしつつ、適正な利益を上げられることが実現できれば、次の時代を迎えることができるだろう、それがコロナ時代を生き抜く将来像で あると、フランスのシンクタンクが提案している。
世界の企業活動や人的交流を大規模に停止させたコロナウイルス危機。各国は国民の生命を守るために医療、資本を動員して対策にあたるも膨大な犠牲者を出している。アメリカでの死者数はベトナム戦争を上回った。
欧州の政府や企業などは、コロナ以前の社会に戻ることを目指して動き始めようとしていた。しかし、9月になると、欧州にコロナ第2波が襲い始めている。 イギリスのジョンソン首相は、経済が壊滅する国家的な封じ込めは避けたいと、述 べている。経済は重要である。だが今、経済を優先すれば、コロナウイルス感染を鎮めることは不可能なのだ。
こうしたなか、フランスの2つのシンクタンク(モンテーニュ研究所とメディチ委員会)がコロナ時代を経験した企業社会の在り方として、新たな概念「責任ある資本主義」を打ち出している。
これに基づく社会とは、「長期型の投資を行い、企業の目的は、利益の調整と社会のための恩恵。事業計画には社会への問いかけと環境への問いかけが不可欠な部分である」と説明している。これは社会のなかで企業は価値を創造し、貢献していくことを目的とした資本主義のモデルである。
シンクタンクのモンテーニュ研究所は、コロナ時代は企業が責任ある行動をとるチャンスだと捉えている。「企業は、以前から主張していた社会的機能を引き受けること。その責任を試される。さらに、それらは医療関係者の支援なしでは実現しない」という。つまり株主の利潤のみを追求する企業経営では、このコロナ時代に生き残ることは不可能なのである。
責任ある資本主義の理解を深めるために、比較として、現在の金融資本主義とはつまり「短期型投資を行い、すぐに利益は株主に還元するというものだ。また社会問題や環境について大部分は、彼らのビジネスと関係ないところで語られることが多い。優先順位は成長するビジネスを妨げないこと」と、同シンクタンクは解説する。たとえば、非人道的な労働環境であっても、低価格製品のためなら工場を立地し、安い工賃でより高い利潤を求める。
フランスのシンクタンクは新しい資本主義モデルを提示し、世界を牽引しようと考えている。英国が抜けたEUを立て直す構えが見える。コロナ時代に正解は未だない。日本は感染者数を低く抑えていることを実績とし、危機に翻弄されるばかりでなく、これを生き抜く提案を考えなければ、経済力がありながら常に後塵を拝する国となる。
出典) https://www.institutmontaigne.org/publications/le-capitalisme-responsable-une-chance-pour-leurope (より引用)
*モンターニュ研究所:フランスの独立系シンクタンク。公共政策に関する分析や 提案などを行う。2000年から公共政策や財政の改善、社会的結束力の強化などを 支援するため、具体的な提案を行う(モンターニュ研究所HPより抜粋)
*メディチ委員会:責任ある投資の原則、技術、影響を反映したシンクタンク。 (メディチ委員会HPより抜粋)
US Nessie-Travail personnel CC BY-SA 3.0