2020.09.16
中国が米国債の保有を削減、
米中デカップリングに備えて、
デジタル円による円経済圏確立を目指せ!
米中のデカップリングに備えて、日本がとるべき動きの一つとして、日本銀行発行のデジ タル通貨である「デジタル円」を創設・発行し、世界に先駆けてアジア・世界に円経済圏の確立を目標とする事である。
9月4日のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によれば、「中国が米国債の保有を 徐々に削減し、最終的には米国債保有額を現状の約1兆ドルから約20%保有を減らし、 8,000億ドルにすると、Global Times(環球時報)が報じた。
米国がロシアの銀行に制裁を課し、2014年のクリミア併合後に 「SWIFTシステムから外すぞ」と脅迫されたことが影響している。(中略)ロシアの中央銀行は、2011年に米国債の保有を1,750億米ドルからゼロに削減。ロシアはまた、米国の影響力の強いSWIFTシステム(注1) に相当する送金・決済転送システムを確立した」と発表した。
ロシアに倣って、中国は、ドル基軸の国際通貨システムから追い出されるという懸念から、中国人民銀行発行のデジタル人民元を用いて、ドル決済とは別に人民元決済による人民元経済圏を確立しようという動きを加速している。 中国は、2014年から導入検討の研究を開始し、すでに成都や蘇州などの4か所でテスト運用され、8月14日の中国商務省発表(注2) によれば、その範囲を上海、北京などの21の直轄市と、 海南、大連などの28の省に大きく広げるようだ。
一方日本では、日本銀行は今年7月20日「デジタル通貨グループ」を設置し、研究を始め たとの事である。読者の中には、デカップリングは、米国企業を優位にするための米国による脅しにすぎないとか、BIS統計(注3)によれば人民元が占める世界の取引 (1日あたり平均) はわずか2850億ドルであり、世界の取引高量6.6兆ドルに対して4.3%に満たない事から、各国と取引ができなくなり、下手をすると中国経済が成り立たなくなる可能性があることから、その可能性はありえないと思われる事かもしれない。
確かにその通りであるが、問題は日本が、世界の取引高量は1.1兆ドルと、世界の1/6を占めており、デジタル円を流通させ得る貨幣の信用、資本移動の自由、法的統治、技術基盤などがあるにもかかわらず、取引高も少なく、資本移動の自由と法的統治が確立されていない。
また紙幣ですら自国民の信用を得ていない国に対してずいぶん動きが遅れている事である。 一刻も早くテスト運行を始め、運用を拡大し、米ドルと同程度に流通する通貨としてデジタル円を世界に広められるよう、この問題に読者が注視し、政府に一日も早い導入を求める事を切望する。
出典 :サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙, Karen Yeung記者、2020/09/04
【参考文献】
注1:SWIFTシステムとは、国際間の決済システムの事:
「スイフト(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)は、銀行間 の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネッ トワークシステムです。」、’全国日本銀行協会‘より引用、
注2:中国商務部,全面深化服务贸易创新发展试点总体方案,2020/08/14
http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2020-08/14/5534759/files/206b8f5f563c4ed5a066d6dd7a833e95.pdf
注3:BIS,Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019, 2019/9
https://stats.bis.org/statx/srs/table/d11.3