2023.05.29
日本はイタリアの気概を見習え!
令和5年5月27日
藤野 はるか
「ステイホーム」「ブレイクスルー感染」「ブースター接種」「ダイバーシティ&インクルージョン」「グレートリセット」「トランスジェンダー」・・・
メディアに登場する日本の政治家たちが頻繁に使う、意味がよく分からない、英語として正しいのかさえ怪しい「横文字」の数々にうんざりされている向きも多いのではないだろうか。
2022年10月にイタリアの首相に就任したジョルジャ・メローニ氏は2023年3月、このような外国語の乱用を排除すべく、法整備に着手した。ロイターは以下のように報じている。
「ジョルジャ・メローニ首相が率いる政党『イタリアの同胞』は、公式な情報公開・情報伝達においてイタリア語の代わりに外国語、特に英語を使用した公的および民間機関に対して最大10万ユーロ(=約1,500万円、筆者注)の罰金を科す法案を提出した。
この法案は『これは単に流行りのスタイルといった問題ではない。この流行りも度を超すと、社会全体に大きな影響を及ぼす』と主張し、イタリア語を守り育むことを目指している。」
Meloni’s party looks to shield Italian language from foreign contamination | Reuters
この件を扱ったほかのメディアは、この法案の背景を以下のように報じている。
「ジョルジャ・メローニ首相の政権与党は、『イタリア国民のアイデンティティの保護』を実現するため、イタリア語の代わりに英語を使う企業に対して、最大10万ユーロの罰金を科す法案を提出した。イタリア語への英語の借用は、イタリアの文化と伝統を脅かすものであるとし、それを取り締まることを提案している。(中略)文化財・文化活動大臣は、イタリア人の国民性とアイデンティティを保護する観点から、英語やほかの外国語の使用は制限されるべきだと主張している。」
さらにこの記事では、具体的に規制される行為を以下のように説明している。
「企業での商品やサービスの宣伝活動については、イタリア語を使わなければならない。イタリア国内での職業の肩書についても、イタリア語に翻訳することが不可能な場合を除き、イタリア語で表記するべきである。(中略)大学では、外国語を教える場合を除いてイタリア語のみで授業を行うべきである。さらに法案は、イタリア語を母語としない外国人が働く企業においても、イタリア語が第一言語でなければならない、としている。」
‘Anglomania’: Why Italy’s government wants to restrict use of English words – The Local
上記は記事中の客観的事実のみの翻訳だが、これらの記事の論調は全体として、この法案に対して極めて批判的である。メローニ政権への「極右」のレッテル張りに始まり、「イタリア語では回りくどくて分かりにくい表現も英語なら簡単に表現できるのに」という主張を展開し、この法案に対する「イタリア語言語研究専門家の権威」の批判や「イタリアに住む国際人」の不満を多く取り上げている。
翻って我が国はどうだろうか。この法案で禁止される、社内公用語を英語にした楽天株式会社、株式会社ファーストリテーリング、ソフトバンクグループ株式会社などの影響で、日本の学生が感じる「英語ができなければならない」というプレッシャーは年々強くなり、その結果、学校教育現場においても、参政党が危惧している「お金が外国に流れる仕組み」が出来上がっている。たとえば、下記の東京都教育委員会ホームページの「4 高等学校・中高一貫教育校の取組」には、以下の記述がある。
「2 Global Education Network 20の設置及び指定
東京グローバル人材育成指針に基づく東京都におけるグローバル人材育成に係る取組の充実を図るため、先進的な取組を推進する学校20校を令和4年度から「Global Education Network 20」として指定し、各校の特色を生かした3つのグループに分けて取組を進めています。(以下、具体的な都立高校名 略)
Global Education Network 20に指定された学校では、JET青年(=英語を母語とする外国人英語補助教員、筆者注)の複数配置、生徒対象のオンライン英会話研修、生徒の外部検定試験受験補助、SDGs等の国内外の課題解決に関する生徒の研究・発表、海外の学校等と継続的な国際交流の推進及び海外語学研修等、海外大学等進学支援、大使館や大学等の外部機関との連携による交流等の取組を行っています。」
グローバル人材の育成(外国語・国際理解)|東京都教育委員会ホームページ (tokyo.lg.jp)
このように考えていくと、参政党アドバイザーの武田邦彦氏がよく言っている「横文字はダメ!」というのは国護りの第一歩であることが分かる。日本から遠く離れたイタリアのメローニ政権が防ぎたいのは、この事態ではないだろうか。
改めて1本目に引用したロイターの記事の最終段落を紹介したい。
「この法案は、イタリアの農産食品遺産を守るために実験室で作られた食品を禁止することで、イタリアのもう一つの重要な文化を保護しようと行動を起こした数日後に提出された。」
これは具体的には、次のことを指している。
「イタリアは食品に昆虫を使用することに反対しており、昆虫食をイタリア料理と関連付けられることを望んでいない。そのため、イタリア政府はピザやパスタの製造に使用される小麦粉として昆虫が含まれているものを禁止した。」
Italy bans insect flour in pizza and pasta – The Nordic Times
翻って我が国は・・・。もう読者は知っていることだろう。
イタリアは日本と同様、第二次世界大戦の敗戦国であり、EU内で2010年前後に始まった欧州通貨危機において、経済基盤の弱い国としてPIIGSという不名誉な呼び方もされていた。そのようなイタリアが、グローバリストからの攻撃を覚悟で、自らの言語と食を守るために立ち上がったことを我々もしっかり見習うべきである。
写真:ロイター