2020.10.24
BRICS関係の終焉、セキュリティダイヤモンド構想の下、
インド、ロシアを取込め!
2020/10/24 橋本秀行
BRICS(注1)という“造語”は、2001年当時、ゴールドマン・サックスでグローバルエコノミーリサーチ部門の部⻑であった、ジム・オニール氏によって生みだされた。その背景には、日本を含む先進国クラブである、G7の経済成⻑率が鈍化していた一方で、BRICSの今後の経済成⻑が⾒込まれていたからである。
実際、オニール氏の予想通り、2001‐2010年のG7の平均経済成⻑率は1.4%。一方、同期間のBRICSの平均経済成⻑率は6.1%。しかし、近年特にロシア、ブラジルなどは、G7並の経済成⻑率に止まっており、2015年に至っては、両国ともにマイナス成⻑率に陥っている。
一方、中国、インドの2カ国は、2008年に起こったリーマンショック後も順調に経済成⻑してきているが、イギリスのメディアBBCによると、今年(2020年)6月に、「インド東部ラダックエリアで両国が軍事衝突し、インド側に20名の死者が出ている」と、現在も同エリアでの緊張状態が続いている。
また、インドのインターネットメディアのTFIPOST(以下、TIFPOST)によると、今年(2020年)9月に、BRICSの内、インド、ブラジル、南アフリカの3カ国の「外相レベルの会合が開催され、COVID-19、安全保障上の懸念、テロへの対抗、気候変動に至るまで、複数の問題について審議された。ここで興味深いのが、BRICSの中で、中国、ロシアを抜かした3カ国が、IBSA(注2)の旗の下会合を開いた事である。」
その会合に参加していないロシアも、中国に輸出している武器・戦闘機などを含む軍事産業関連製品を、中国がコピーしてしまう問題に⻑年悩まされており、特に、2014年のクリミア半島併合後の⻄側諸国からの制裁に苦しむ中で、中国依存からの脱却の意図を、インドとの関係性からも垣間見る事が出来る。
実際、ソ連崩壊後、今も⼈⼝減少に⻭⽌めがかからず、経済も停滞しているロシア極東エリアの開発のために、「インドは今後、約10億ドルを融資枠として拡げていくと、」モディ首相は言及している。
一方、TFIPOSTによると、同エリアにおいて、「中国人投資家への恒久的な土地譲渡を禁止し、今後、中国資本関連のプロジェクトには、地元住⺠(ロシア⼈)を80%雇用することを義務付けた。」
このような動きからも、既にセキュリティダイヤモンド構想(注3)で連携を深めている日本とインドが、人口減少に苦しんでいるロシア極東エリアで共同開発をしていく事は、中国への依存を軽減させるだけでなく、安全保障上のリスクヘッジにも繋がる事から、プーチン大統領にとっては魅力的に映るだろう。
出典:インド・TFIPOST,SanbeerSinghRanhotra記者、2020/09/17
注1:BRICSとは、B=ブラジル、R=ロシア、I=インド、C=中国、S=南アフリカの5カ国を示す。注2:IBSAとは、I=インド、B=ブラジル、SA=南アフリカの3カ国を示す。注3:安倍晋三前首相が、2012年に国際NPO団体PROJECTSYNDICATEに発表した英語論文『Asia’sDemocraticSecurityDiamond』に書かれた外交安全保障構想。オーストラリア、インド、アメリカ合衆国(ハワイ)の3か国と日本を四角形に結ぶことで4つの海洋⺠主主義国家の間で、インド洋と太平洋における貿易ルートと法の⽀配を守るために設計された。
【参考URL】
https://www.imf.org/external/datamapper/NGDP_RPCH@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD2.
https://www.goldmansachs.com/insights/archive/archive-pdfs/build-better-brics.pdf