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LGBT理解増進法の先にある世界

LGBT理解増進法の先にある世界写真:東京レインボープライド2023

令和5年6月16日
藤野 はるか

 

あなたが高校生の娘を持つ母親だったとしよう。ある日、学校から帰ってきた娘がこう言った。「お母さん、私、心は男なんだ。小さいときからなんとなく変な感じがしていたけど、この大きな胸も大嫌いだし、毎月生理があるのも気持ち悪くて耐えられない。赤ちゃんを産むなんて死んでも嫌だ。こんな女の身体で生きていくのは嫌だから、手術したい。」
 
「何を言っているの?頭を冷やしてよく考えなさい。せめて成人するまでは今のままでいなさい」などとあなたが言おうものなら、それは立派な児童虐待だ。娘の父親でもある夫にはもちろん、担任の先生、かかりつけ医に相談しても無駄だ。なぜなら学校も病院も子どもの性転換を認めなければならないからだ。
 
にわかには信じられないかもしれないが、2023年5月3日、米国カリフォルニア州では「親が子どもの性転換を認めないのは児童虐待である」という趣旨の州法が可決した。
 
「最近(=6月6日、筆者注)修正された当該カリフォルニア州法は『子どもの性転換を認めること』を標準的な親の責任および子どもの福祉のひとつとして追加した。これにより、カリフォルニア州法下では、子どもの性転換を認めない親は全員児童虐待の罪で有罪になる。
 
カリフォルニアの裁判所はカリフォルニアの家族法規に従い、LGBTQ+思想を否定する親から子どもを引き離す権利が与えられる。『子どもの健康、安全と福祉』を構成する要件が変更されたことにより、学校、教会、病院などの子どもと関わるすべての組織は、無条件で未成年者の『性転換』を認めるか、さもなければ児童虐待の罪に問われる可能性がでてきた。」
California Bill Would Classify ‘Not Affirming Child’s Gender’ as Child Abuse (dailysignal.com)
 
別の事例も紹介しよう。
 
女性であるあなたは女性専用スパに行き、裸でくつろいでいた。そこへ突如、男性器のある「トランスジェンダー女性」が入ってきた。あなたは驚いて、スパの受付に電話し、対応を求めた。しかし受付担当者の答えは「当スパはトランスジェンダーの方々への差別をなくす法律を遵守し、トランスジェンダーのお客さまに配慮した経営を行っております。どうかご理解くださいませ」であった。
 
2023年6月9日、米ニューヨークポスト紙が「女性専用スパ:男性器のある全裸のトランス女性客を歓迎すべし」という見出しで報じている。
 
「ワシントン州の判事は女性専用のヌードスパに対して、男性器のあるトランスジェンダー女性を受け入れるよう命じた。シアトル地方裁判所のバーバラ・ジェイコブズ・ローズステイン判事は月曜(=6月5日、筆者注)、地元のトランス活動家、ヘイヴン・ウィルビッチがオリンパス・スパに対して行った『差別である』との申立を支持した。
 
この老舗の韓国スパは『女性専用のルールは、我々の顧客の安全、法的保護、高い満足のために欠かせないものです』と主張していた。また『男性器を取り除く手術を受けた』場合に限るとしながらも、トランスジェンダー女性も受け入れていた。
 
裁判資料によると、ウィルビッチは、性自認が女性である生物学的男性で、男性器の外科的手術は受けていない。本人への取材によると、このスパに電話したところ『外科手術が終わっていないトランスジェンダー女性は入場不可』と言われ、この対応はワシントン州の州法に違反していると考え、その違反を報告するために訴えたのだという。」
Women-only spa must welcome naked trans clients with penises (nypost.com)
 
以上は民主党が強いカリフォルニア州、ワシントン州のニュースだが、共和党が強いフロリダ州では、2023年3月に「8年生(=中学2年生、筆者注)以下の生徒児童へのLGBT教育を禁止する」という法案が可決された。
 
この法律の主旨は以下のように報じられている。
 
「この法案は公立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校に性別を『不変の生物学的特徴』と定義することを強制し、その性別と一致しない代名詞を使用することは『間違い』だとしている。教師は生徒と話すときに自分の好きな代名詞を使うことを禁じられ、学校は教師や生徒に、たとえ本人が望んだとしても、生まれながらの性別と異なった代名詞を使うことを求めることができないとしている。」
 
分かりにくいが、つまりこういうことだ。

・ 学校は「生まれたときの性別は一生変わらない」という前提で教育活動をすべきである。
・ 学校では好むと好まざるにかかわらず、生まれながらの男性にはheを、生まれながらの女性にはsheを使わなければならない。
 
共和党が強いはずのフロリダ州でさえ、このようなことをわざわざ法律として成立させなければならないところに現在のアメリカの異常さを感じる。
 
「この法律により、学校が性教育で使用するすべての教材は州教育省の認可が必要となる。この法律では、保護者や市民がポルノだと見なしたり、性行為が含まれていると認識される教材について、異議を申し立てる権限が強化されている。学校は5日以内に、異議申し立てがあったすべての教材を教育活動から排除しなければならない。学校は、自らが選んだ教材が使用可能かどうかを決定するために公開での会議を開かなければならない。保護者がその決定に反対した場合、学校は教材の見直しと、新たな決定をするために州の教育省が選任した特別判事のための費用を支払うことを求められる。」
Florida House passes bill extending ban on sexual orientation and gender identity instruction to 8th grade | CNN Politics
 
このような法律が必要になった背景に思いを巡らせるとぞっとするのは私だけだろうか。住民の税金で運営されている公立学校が、過激な性教育をやりたい放題だったことが容易に想像できる。
 
LGBT理解増進法が成立した日本にとって、これらのニュースはいよいよ対岸の火事ではなくなった。国民一人一人が、自分ごととして真剣に考えなければならないときが来た。
 
政治に無関心でも、無関係ではいられない。

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