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2020.11.21

浸透する極東オウンゴール文化

2020/11/21     伊達 善信

 

中国外務省の趙立堅副報道局長が10月15日に行った記者会見は、左派の成れの果ての代表格たる中共の体質を象徴するものであった。上海の共産党委員会傘下、澎湃新聞の記者がポンペオ米国務長官の「中国の宗教の自由」に関する発言について発言の機会を仕組むと、次のように捲し立てた。「米国は、自国の人権と宗教の自由の状況が悪い。(中略)米国内の少数民族の宗教的状況は心配だ。調査データによると、アメリカのイスラム教徒の75%は、アメリカ社会がイスラム教徒に対して重大な差別を行っていると考えている。アメリカ全体の清真寺(モスク)の数は、中国の新疆一自治区の1/10にも満たない。米国が他国をいたずらに非難する資格があるのか!」

まさしく笑止千万である。彼の言葉を借りるなら「事實勝於雄辯(事実は雄弁に勝る)」だ。ウイグルの人民が中共成立前から作ってきた清真寺の数々を破壊してきたのは誰だというのであろうか。世界がヤルカンド大虐殺の件を忘れたとでも思っているなら愚かなる誤解である。一方の米国では保守層の執拗な攻撃にうんざりしたイスラム教徒らが極左と結託して民主党を支援しているが、それを以ってイスラム教徒が共和党政権によって虐殺されたなどという話は筆者は寡聞にして知らぬ。

我が翻訳チームの中国語担当者からは「報道官も習近平を礼賛しなければ仕事を失い、命を失うのでしょう」と憐れみの声が上がっている。筆者も中共の報道官の発言の信憑性はその程度であろうと感じるところである。お気の毒さまなことだ。中共海軍司令部の元中佐の姚誠氏は「新唐人」テレビのインタビューに答えて中共は「全民皆兵」の作戦で米国に立ち向かうとした上で、このように語っている。「彼らが退いた後、人々は恨みを晴らそうとする」「そのために武器を手放すつもりはなく、14億人まとめて一緒に死ぬとし、戦争は避けられない。時間と規模の問題」なのだという。中共を野放しにしておいても誰も得をしないのだ。姚誠氏はさらに、​軍事的圧力を続け、中国経済を破壊させなければならず、経済が破綻すれば「中共は潰れる」、現在中共に対して軍事行動を行って解放軍部隊を消滅させても、中共政権を転覆させることはできないとの見方を示した。

そんなさなか、中共国務院は11月9日「対外貿易の革新的発展の推進に関する実施意見」を発令した。中国大陸の毎日経済新聞は同日の記事で「​RCEPの早期署名を推進」と報じている。記事では​「意見」は、国内の大循環を主体とし、国内国際の双循環が相互に促進する新たな発展構造の構築をめぐって、国際市場配置、国内の区域配置、経営主体、商品構造、貿易方式などの「5つの最適化」と対外貿易モデルチェンジ基地、貿易促進プラットフォーム、国際営業販売システムなどの「三項目建設」を加速することで、新たな情勢の下、国際協力と競争の新たな優位性に関与、対外貿易の革新的発展を実現させると分析する。やはり、前出の姚誠氏の分析は正しいようで、中共は中国市場の限界を打破して経済における攻めの一手を以って政権の延命を図る方針のようだ。ところが、日本政府は世界平和には興味が無いようである。情けない事に米国大統領選挙において親中派のバイデンが優勢とみるやいなや、(東アジア地域包括的経済連携)RCEPに飛びついた。筆者は兼ねてより「我が国は今、決断の時を迎えている」と警鐘を鳴らしてきたが、日本政府は中共側に付くことに決めたようだ。前出の毎日経済新聞の記事によれば、中共は国境経済協力区と国境を越えた経済協力区の建設を加速し、周辺国との経済貿易往来を拡大してくれるそうだ。日本国民の良心に信頼して中国語の学習を怠けて来た筆者としては絶望が深い境地だ。これから文字通り人食い鬼だらけになる我が国の人民はすぐにでも全集中の呼吸に取り組むべきであろう。

ちなみにこのRCEPにより日本は韓国と初の自由貿易協定(FTA)を締結することになるわけであるが、昨年来実施してきた対韓輸出規制も台無しだ。経済的にも地政学的にも日本は転落することになる。こういう話をすると、決まって誰かが言い出すのが「中国が経済的に豊かになることで先進国としての相応しい振る舞いをする国に生まれ変わる」という謎の言説だ。このような半世紀もの間なんら成長もしなかった昭和時代の亡霊たちは、ともすれば外国勢力より余程現代の日本を貶めているもっとも深刻な課題だ。暗黒の時代を生き抜いてきたインドネシアとの距離感が縮むのを好機と捉えて新時代の生き方を習いに行く謙虚さが求められるといったところであろうか。今までに増して国民一人一人の意識改革が必要だ。

浸透する極東オウンゴール文化

The headquarters of the Association of Southeast Asia Nations (ASEAN) in South Jakarta, Indonesia (Gunawan Kartapranata, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ASEAN_HQ_1.jpg; CC BY-SA 3.0, https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.en).

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