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2020.12.20

中国によるIUU漁業についての報告

 2020/12/20    飛高 祥吾

 

2020年11月17日、国際的な、とりわけ中華人民共和国による非合法、無報告、無規制な漁業の問題について米高官による電話でのプレスブリーフィングが行われました。ブリーフィングの報告の日本語訳を前後2回に分けお届けします。前編は高官2人によるコメント、後編は質疑応答になります。(訳者)

 

アメリカ合衆国国務省東アジア太平洋局副国務次官補のデイビッド・フェイス氏並びに海洋・国際環境化学問題局局長代理のデイビッド・ホーガン氏との電話でのプレスブリーフィング

 

司会者:ありがとうございます。みなさん、こんにちは。マニラにある米国国務省アジア太平洋メディアハブからです。私はハブディレクターのツィア・シードです。このブリーフィングのために電話をかけてくださったみなさんを再度歓迎致します。

本日、ワシントンD.C.から、東アジア太平洋局の地域、安全保障政策、多国間問題担当の副国務次官補であるデイビッド・フェイス氏と海洋局海洋保全局長代理のデイビッド・ホーガン氏が参加することを嬉しく思います。

本日の電話は、フェイス副次官補とデイビッド・ホーガン氏の発言から始めます。その後、約30分間できるだけ多くの質問に答えられるようにします。

最後に本日の電話が記録されることをお伝えします。ではフェイス副国務次官補に変わります。どうぞ。

 

フェイス副国務次官補:本日は、IUU(illegal, unregulated, and unreported 非合法・無報告・無規制の)漁業というとても重要な問題について話し合うためにお電話いただきありがとうございます。この問題は世界中で、また米国政府全体を通して大きな関心事です。特に懸念されるのはアジア全域、また西太平洋や東南アジアから太平洋諸島にかけての太平洋全域です。これらの広大な地域には、世界で最も豊かな漁場が数多く存在すると共に、非合法で無規制かつ無報告な漁業、とりわけ中華人民共和国からの漁船によるものが世界中で最も存在します。

残念ながらこれは私たちが中国について見るパターンと一致します。それは海洋での違法な漁業に始まり海事や南シナ海の海洋環境破壊、メコン川での水のせき止めにまで至ります。これらのことはすべて多くの国の生活、主権、安全保障に対する重大な脅威であり、また横暴や国際法の軽視、環境破壊などによって特徴付けられる中国共産党の振る舞いの明確なパターンと一致しています。

ご存じのように、インド太平洋地域では、東南アジアの沿岸諸国から太平洋島嶼国に至るまで、漁業によって何百万人もの人々が雇用されています。彼らは何十億もの人々に食糧を供給しています。これらの天然資源は、これらの国々の生まれながらの権利であり、沿岸地域社会の生命線であり、市民の生活そのものです。これらの資源が盗まれたり破壊されたりすることは現在においても将来においてもこれらの国の国民に対する攻撃となります。私たちが目にしているようなIUUの活動は、その地域全体の漁場の持続性を脅かし、法を守る漁師のポケットからお金を奪い、労働者虐待、人身売買などその他の犯罪を助長しています。

世界的には、IUU漁業からくる経済的損失の定量化は困難であると考えられていますが、毎年数十億、あるいは数百億米ドルに上るという点では少なからず同意されていて、世界の最貧国の一部に対して不釣り合いなほどの影響力を与えています。

中華人民共和国は、世界最大級の遠洋漁業船団を保持しています。そして、この艦隊は中国共産党の補助金を受けています。

中国の旗を掲げた漁船は、西太平洋や中部太平洋、アフリカや南米など世界中の沿岸国の排他的経済水域 (EEZ) で違法に操業しています。このことには許可のない漁獲と共に乱獲のライセンス契約も含まれています。

北太平洋など一部の地域では、無国籍漁船に中国籍の特徴が見られます。加えて3,000隻以上と推定される中国の海洋武装勢力が公海や他国の公海において攻撃的な振る舞いを積極的に行い合法的な漁業者を脅かして威圧することで中国共産党の長期的な海洋戦略目標を支持しています。

中国は自身を、非合法な漁業に対するいわゆる「不寛容政策」を持つ責任ある漁業国であると主張している。しかし記録では残念ながらそうではないことが示されています。南シナ海において、中国は軍事化された人工島周辺の海洋環境の広範囲の破壊について責任があります。マイアミ大学のある生物学者はこのことを「人類史上における最急速のサンゴ礁域の永久的な喪失」と呼んでいます。

中国は国際組織犯罪対策会議によって世界最悪のIUU漁業犯罪者としてランクされています。またピュー・チャリタブル・トラスト財団(Pew Charitable Trusts)によると中国の港はIUUで漁獲された魚を加工する可能性が最も高い港としてランクされています。中国は世界最大の遠洋漁業船団を有する国であり国際的なルールと規範を遵守し、自らの約束を守る特別な責任を負っています。

残念ながら中国政府は法を執行しようとする他国の合法的な試みを弱体化させようともしています。例えば最近、領海に不法侵入したとして拘束されている中国人漁師の釈放に関して中国の外務大臣がコロナワクチンへの他国のアクセスを規制しようとしているという不穏な報道がありました。このような戦術は、脅迫と強制による支配によって国際法を入れ換えようとする試みです。

IUU漁業との闘いは米国の外交政策および国家安全保障上の優先事項です。国務省は、米国沿岸警備隊、国防総省、米国海洋大気庁 (NOAA) と共に、国際法の強化や国内の懸念への対応、また持続可能な管理慣行の構築に取り組みつつIUU漁業活動の軽減のための対策に踏み出しています。

この取り組みの一例として米国沿岸警備隊による域内の各国との乗船協定(ship rider agreements)の数を増やすという取り組みがあります。これらの協定によって相手国は米国沿岸警備隊の資源と人員の支援を受けつつ自国の国内法を施行することが可能となります。太平洋諸島のような法執行能力が限られ排他的経済水域が大きい国では特に有用です。

米国の漁船の公海上での漁獲は、パートナーとの交渉、持続可能な漁獲制限及び国際法の厳格な遵守を通じて行われます。

米国はまた、国内外のIUU漁業と戦う能力の強化のために、世界中の国々と協力しています。米国は、IUU漁業と戦うための協働的な監視、管理、監視活動を実施するための国家の政策的、また法的枠組みや運用能力の強化のために、相手国に直接能力開発や訓練、技術援助を提供しています。国防省による、SeaVision海洋ドメイン認識プラットフォームを介しての多くの国々への無料でリアルタイムの船舶交通監視の提供はその一例です。

我々が中国政府に求めるのは、自国の船舶に対して旗国としてより責任のある管理であり国際的な規範及び統治構造の遵守を確保するために必要な措置を示すことです。主権国家は自国の経済資源から利益を得ることができなければなりません。中国や他のIUU漁業者による主権と領土保全の軽視は、他国の安定性、食料安全保障、経済発展を脅かすだけでなく、我々の基本的な国際秩序をも脅かしています。

私たちは、中国共産党が環境保護の空約束という不安定な習慣を終わらせることを望みます。中国政府は世界で最も温室効果ガスと海洋ごみを排出し、世界で最も取引される野生生物や木材製品の世界最大の消費をしています。それだけでなく、今夜我々が議論しているように、非合法、無報告、無規制な漁業の最大の加害国でもあります。この記録を塗り替えることは、世界中のすべての人々と国の利益となります。

今夜お電話くださった皆さん、そしてマニラのメディアハブにいる私たちの同僚にもう一度感謝します。今から海洋・国際環境化学問題局の同僚であるデイビッド・ホーガンに変わります。ありがとう。

 

ホーガン氏:どうもありがとうございます。フェイス副次官補、皆さん、おはようございます。フェイス副次官補が中継した内容に、いくつか具体的で技術的な政策上のポイントを追加したいと思います。これは問題の性質についてのよい概要ともなるでしょう。

米国は世界中のパートナーと協力し非合法、無報告、無規制な漁業と闘っており、国際漁業を規律する規則を強化するための多国間での取り組みや、国際基準に従って責任と説明責任を促進するための世界の旗国、沿岸国、港湾国、市場国との二国間での関与などIUU漁業への取り組みの上でリーダーシップを発揮してきました。米国は、IUU漁船からの漁獲を港湾で降ろしたり国際市場に参入させたりすることができないようにするための画期的な国際条約であるポート・ステート・メジャー協定の実施を支持し、推進しています。私たちは、世界貿易機関において、IUU漁業を支援したり、あるいは乱獲や過剰供給に貢献してしまうような漁業補助金を規制するために働いています。

中華人民共和国の遠洋漁業船団の持つ規模と世界的視野を考慮すると、IUU漁業に参加する中国の船団の船舶は、いつでも、食料安全保障、経済安全保障、環境生産性、そして、沿岸国の多くや水産物の貿易を行っているほとんど国が依存している商業的価値のある漁業資源を支える生態系の基本的能力を脅かしていることになります。

経済安全保障に対する脅威は国家安全保障上の脅威です。

沿岸国、とりわけ開発途上の沿岸国や太平洋島嶼国にとっては乱獲や漁業資源の崩壊による不安定な影響は紛争を意味し得ます。IUU漁業の繰り返しによってこのような危機が導かれる前に対処することは国際社会の責任です。ファイス氏が述べたように米国はこれを優先度の高い問題と考えます。それは米国やその他の多くの国が頼る商業的に価値のある漁業資源への影響のためだけではなく、意図的に行われるIUU漁業に固有の経済的な安全保障上の脅威のためです。

中華人民共和国は旗国として完全な責任を負っており、彼らはそれをより推進する必要があります。彼らはより多くのことができる能力がありながらしないことを選択しています。これが私たちにとって問題の核心です。世界中で交渉されてきた科学に基づく漁業管理体制や各沿岸諸国における科学に基づく漁業管理体制を見ると、IUU漁業がある場合は常にデータが不足し実施されている管理措置についても不確実性があります。そして

より慎重な措置を取ってもなお、どれだけの魚が水から出てきているかわからないため持続不可能な漁業や乱獲につながる可能性があります。これが、自国の船舶を管理せず、またその船舶が沿岸国の領海へのアクセス条件に違反したり、国際的に合意された規則に違反する旗国によって組織的な方法で行われている場合、そのことは漁業管理のための国際システム全

体を弱体化させ、経済的な安全保障と食料安全保障を脅かすものです。それは自国の漁業の持続的な生産性に基づき経済開発を行っている発展途上の沿岸国にとっては極めて重要な問題です。

漁業資源の状態に変化が起きるような海洋の状況があるときにIUU漁業はその変化を悪い方へ導きます。IUU漁業はその他の漁業管理事項や問題も悪化させています。ゆえにそれは国際社会が直面している複雑な課題の一部であり、私たちはそれの根絶に高い優先度を置いています。たとえば、IUU漁業と闘いそれを阻止するために私たちが国際連合食糧農業機関において行ってきた国際的な行動の計画を策定するための作業や、ポート・ステート・メジャー協定の作成と交渉、また国連での公海大規模流し網漁業のモラトリアム採択や破壊的な漁業慣行に対処するための年次漁業決議に含まれているその他の国連の文言、これらはすべて中国のような旗国がその責任を果たさず、自国の船舶に規則を執行せず、それらの船舶の活動に目をつぶっているときに生じる問題に対処することを意図しています。

これらの船舶がIUU漁業に従事しているとき、付近の海洋環境や漁業従事者に悪影響を与えるようなその他の行為にもしばしば関与しています。私たちは問題をより大きな問題の一部とみなしています。私たちは、米国のみでなく国際社会自体に、これらの活動について中国に説明責任を負わせる責任があるというメッセージを世界中に発信していくことを望みます。ご清聴ありがとうございました。

[原点]
https://www.state.gov/telephonic-press-briefing-with-david-feith-deputy-assistant-secretary-bureau-of-east-asian-and-pacific-affairs-and-david-hogan-acting-director-in-the-office-of-marine-conservation-bureau-of-ocea/

中国によるIUU漁業についての報告

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