令和7年6月20日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『同性婚に係る憲法解釈及び国民的議論に関する質問主意書』
提出者:神谷宗幣
現在、同性婚の法制化を求める訴訟が全国で提起され、複数の裁判所において、現行法を違憲又は違憲状態であるとする判断が示されている。こうした訴訟においては、同性婚を主張する原告からLGBT理解増進法への言及や民間によるアンケート調査の提出があり、司法判断の補足的根拠とされる例がある。しかし、政府は、LGBT理解増進法について、令和五年六月九日の衆議院内閣委員会において、「理念法でありますので、個々の人々の行動を制限したり、それから何か新しい権利を加える、こういったものではありません。」(以下「当該答弁」という。)と答弁している。また、民間によるアンケート調査等についても、調査方法や対象に限界があり、司法判断の根拠とするには慎重であるべきと考える。
政府は、同性婚に関する全国的な世論調査を実施しておらず、国民の意識を広く正確に把握しているとは言い難い。情報が限られたまま司法判断が下されるような状況では、判断の正当性にも疑義が生じかねない。そもそも、婚姻制度は、男女が結び付き、家庭を築き、子を育て、社会を次代へとつなぐ営みを支える制度である。これは自然の摂理に根ざした人間社会の基本構造であり、軽々に形を変えるべきものではない。「両性の合意」に基づく婚姻を定めている憲法第二十四条の規定も、この考え方に立脚していると考える。加えて、同性婚の推進運動の背景には、二十世紀以降の欧米左派思想において、家族制度を解体し、社会構造を変革しようとする思想的潮流があるとの指摘もある。伝統的な婚姻制度の否定を通じて共同体の結束を弱めるという試みは、共産主義的思想の一部として展開されてきた経緯があり、我が国においてもこうした思想的背景が現代の議論に影響を与えている可能性について、考慮すべきであると考える。
同性婚の導入は、婚姻制度の定義を根本から変えるものである。同性婚が導入されれば、教育や子ども、生命倫理等の分野に関する政策を転換する必要もあると考える。一部の理念法や限られた調査、十分な国民的議論を経ていない司法判断によって、同性婚の導入が決定されることのないよう、政府には慎重な姿勢が求められる。もちろん、同性の関係を否定する意味ではなく、全ての人の人格が尊重されるべきである。ただし、婚姻制度は個人間の関係にとどまらず、社会全体の土台を形成するものであるから、その在り方については極めて慎重に検討する必要がある。
以上を踏まえて、以下質問する。
一
憲法第二十四条第一項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると規定している。同婚姻の成立を認めることは想定されていないとする従来の見解に変更はないか、政府の見解を示されたい。
二
家族制度の根幹に関わる重要な制度の在り方について、主体的に議論を尽くす必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。また、全国的な世論調査を実施しない理由について、政府の見解を示されたい。
三
当該答弁において言及されているように、LGBT理解増進法は理念法であり、法的拘束力を有しない。それにもかかわらず、同性婚を肯定する司法判断において、補足的根拠の一つとして同法が言及されている例があることについて、政府の認識を示されたい。
四
同性婚制度の導入が子どもの福祉や親子関係の在り方に与える影響に対する検討を行う予定はあるか示されたい。ある場合、当該検討について、具体的に示されたい。
五
同性婚の法制化は、婚姻制度の定義や家族の在り方を根本から変える重大な制度改変である。しかし、政府は、これに関する全国的な世論調査を行っていないため、同性婚に対する国民の意識や理解度について十分に把握されていないと思料する。こうした実態の下で、司法判断や一部の世論によって制度が既成事実化されることに対する政府の認識を示されたい。また、同性婚に関する国民的議論が十分に行われていない現状に問題意識を有しているか、政府の見解を示されたい。
右質問する。