令和7年6月17日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『外免切替制度をめぐる安全対策と加害者責任の追及に関する質問主意書』
提出者:吉川りな
外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替える制度(以下「外免切替制度」という。)を通じて免許を取得した外国人が交通事故を起こす事例が相次いでいる。過去の質問主意書(内閣衆質二一六第二八号)でも同様の指摘を行ったが、その後、令和七年五月には、ペルー国籍の男性が外免切替で取得した免許で高速道路を逆走し逮捕され、同月には中国国籍の男性が小学生四人を負傷させるひき逃げ事件を起こすなど、外免切替をした者による重大事故が続いている。
警察庁によれば、外国人ドライバーによる交通事故件数は令和六年に七千二百八十六件と、五年前より約千八百件増加している。全体の事故件数が減少傾向にある中で、外国人による事故の相対的な増加は看過できない。
加えて、こうした事故の増加に伴い、事故の相手方が外国人である場合には、事故後の責任追及の困難さや、言語の壁に起因する現場対応などの課題も無視できない状況にある。
外免切替制度は、主に外国免許を取得した日本人が帰国後に日本の免許へ切り替える場合や、駐在員などの一時的な滞在者が日本で運転するために利用されてきたとされる。しかし、その後の外国人受入れの拡大に対し、制度の見直しが後手に回ってきたと言わざるを得ない。令和七年五月には、住民票提出の義務化や知識確認の問題数の増加などの見直し方針が示されたものの、依然として根本的な課題が残されていると考える。
すなわち、外免切替は、海外の行政機関が発行した運転免許証を持つ者が、運転に支障がないと確認された場合に、日本の運転免許試験の一部を免除できることとされているが、実際の確認は、十問程度の知識確認のほか、短時間のコース内の技能確認にとどまり、公道での実地走行や交通マナーの把握は行われていない。
さらに、こうした確認の簡略さは、申請者の出身国における免許制度の水準を十分に考慮していない点にも問題がある。各国の中には、厳格な技能試験や教育を経る国もあれば、そうではなく形式的な手続のみで免許を取得できる国もあり、その水準のばらつきは大きい。そうした背景を考慮せず、外免切替時に一律の簡易な確認のみで「運転に支障がない」と判断することは、安全運転能力を適切に見極める手段として不十分である。特に、右側通行や非漢字圏など、日本と大きく異なる交通文化を持つ国からの申請者に対しては、こうした簡易な確認では適応力を見極めるには不十分である。例えば、ペルーの交通事故死亡率は人口十万人当たり約十三.六人であり、日本(二.一人)の六倍を超える。外務省もペルーについて「信号無視、無理な追い越し、一時不停止等が常態化しており、交通事情は劣悪」と警告している。ベトナムについても同様に、令和五年の交通事故死者数は一万人、発生件数は約二万件とされ、外務省が邦人向けに注意喚起をしている。こうした高リスク国からの外免切替に対し、書類試験と簡易な技能試験のみで「運転に支障がない」と判断する現行の制度では、安全性の担保として不十分である。日本の交通マナーや安全意識を実地で体得させる仕組みの導入が不可欠であり、現行制度の根本的な見直しなくしては事故の再発防止にはつながらないと考える。
以上を前提に、以下質問する。
一
交通マナーや標識、右側通行や異なる交通文化を有する国の免許保持者が外免切替を行う場合において、日本の道路環境に適応するための路上講習の義務化などを含む、技能面での見直しが必要ではないか。政府の見解を伺う。
二
外国人運転者が事故や当て逃げを起こした後に帰国し、捜査や責任追及が困難となる事案が報じられている。特に短期滞在者や運転免許証の不正取得が疑われる場合には、身元特定が難航するケースもある。このような事案について、出入国在留管理庁・警察庁・国土交通省の間でどのような情報共有・連携が行われているのか。また、実際に追及困難となった件数や傾向を政府として把握しているか。再発防止のための方針を伺う。
三
外国人が使用していた車両について、帰国後に名義変更が行われ、実際には当該人物が保有・使用していない車両が多数登録されるといった事例が報道されている。こうした実態が放置されれば、車検切れや保険未加入のまま運行される車両が流通し、事故等のリスクを高めるおそれがある。このような名義変更が不正に行われた事例の件数や傾向を政府として把握しているか。併せて、不正な名義変更の抑止に向けた現行制度の運用状況およびその限界、今後の対応方針について、それぞれ政府の見解を問う。
四
外国人が日本国内で交通事故を起こした後に帰国し、十分な補償がなされないまま責任の履行が困難となる事例が指摘されている。とりわけ加害者が無保険であった場合には、被害者への補償が政府保障事業によってなされることとなり、最終的には国費によって賄われることとなる。こうした責任の放棄が実質的に容認されている状況は、国民感情に沿わないと考える。このような無保険・無補償の事故が実際に生じているか。また、このような事案を防止する観点から、運転免許情報と在留資格・出入国情報等の紐付けを強化し、事故発生時や出国時に適切な確認が可能となるような仕組みの整備が必要ではないか。政府の見解を問う。
五
日本語を十分に理解できない外国人運転者が、交通違反時に内容を正しく理解しないまま書類に署名する事例があると指摘されている。違反現場においては、通訳の確保や外国語による説明など、本人の理解を確保するための対応が適切に行われているか。現場対応の実態とその課題について、政府の見解を問う。
右質問する。