令和7年4月2日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『LGBT理解増進法における「不当な差別」の定義の明確化に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
私が第二百十三回国会に提出した「LGBT理解増進法における「不当な差別」の定義の明確化に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第一七五号。以下「本件質問主意書」という。)に対する答弁(内閣参質二一三第一七五号。以下「本件答弁書」という。)では、多くの質問に明確に答えず曖昧な回答にとどまった。
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和五年法律第六十八号。以下「LGBT理解増進法」という。)に係る差別の内容に関して、本件答弁書は、「「差別」という語は、様々な文脈で用いられていることから、御指摘のように「明確に示」すことが困難である」として具体的な説明を避けた。さらに、「「性的マイノリティの人々などが不当な差別を受ける事案」について網羅的にお答えすることは困難であり、また、一部の「事案」のみを殊更に示すことは予断を与えるおそれがあることから差し控えたい。」として具体例の提示も行わなかった。
しかし、同法は「国民の理解の増進に関する施策の推進に関し(中略)性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的と」し、地方公共団体に施策の実施を求めている。その一方で、施策や条例の基準が不明瞭なまま進められれば、地域社会に無用な対立や混乱を生じさせる懸念が一層強まる。
また、本件質問主意書で指摘したとおり、令和六年二月、「共生社会と人権」に関するシンポジウムでのビデオメッセージにおいて、岸田総理(当時)は、「雇用や入居などの場面やインターネット上において、外国人、障害のある人、アイヌの人々、性的マイノリティの人々などが不当な差別を受ける事案を耳にすることも少なくありません」と発言した。しかし、本件答弁書は「令和五年において新規に救済手続を開始した人権侵犯事件のうち、「性的指向」又は「性自認」を理由として受けた「差別待遇」に関するものの件数は、二十二件」と答弁している。全体の人権侵犯事件九千九百七十九件のうち、該当するのはわずか二十二件にすぎない。さらに、そのうち人権侵害と認定され、勧告等の措置が講じられた事例はゼロ件である旨、令和七年三月十二日の衆議院法務委員会において答弁がなされた。
このような状況にもかかわらず、岸田総理(当時)が「性的マイノリティの人々」に対する「不当な差別」が存在するかのような発言をしたことは、実態とかけ離れていると言わざるを得ない。同法の立法事実も実態を十分に反映しているとは言い難く、同法は、十分な議論が尽くされないまま拙速に決定されたと言える。
以上を踏まえて、以下質問する。
一
本件答弁書で示された「二十二件」の具体的内容について、個人が特定されないよう配慮した上で、可能な限り明らかにされたい。また、人権侵犯事件の報告書(「令和五年における「人権侵犯事件」の状況について(概要)」)において「令和五年中に法務省の人権擁護機関が救済措置を講じた具体的事例」が紹介されているにもかかわらず、性自認に関する事案について例示しない理由を示されたい。
二
令和五年の人権侵犯事件の取扱総数九千九百七十九件のうち、「性的指向」又は「性自認」を理由として受けた「差別待遇」は二十二件であり、この中で人権侵害と認定され、勧告等の措置が講じられた事例はゼロ件であるにもかかわらず、岸田総理(当時)が「不当な差別」がある旨発言した根拠を示されたい。
三
ハラスメント(セクハラ、パワハラなど)の内容に関しては、公的に詳細なマニュアルを作成しているのに対して、LGBT理解増進法に係わる差別は「網羅的にお答えすることは困難」、「一部の「事案」のみを殊更に示すことは予断を与えるおそれがある」とするのは一貫性がないと考える。LGBT理解増進法に係る差別のみ、具体的な内容を明らかにしない理由を示されたい。
四
LGBT理解増進法に基づき、政府は基本計画や指針を策定する必要があるが、性急に進めるべきではなく、政府が一方的に押しつけるような手法は適切ではないと思料する。これらを進める際には、十分議論を尽くし、国民の意見を具体的に反映させることが重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、懸念を抱く国民も多い中で、どのように意見を反映させていくのかを含めて、今後の進め方について政府の見解を示されたい。
五
LGBT理解増進法の施行後、政府が基本計画や指針等を示さない中で、既に地方公共団体の職員向けの研修や説明会が進められていると思料するが、現在、地方公共団体において実施されている施策の内容を明らかにされたい。過度な施策の事例や施策等により混乱が生じている事例がある場合は明示されたい。また、こうした事態を防ぐために政府が講じている対策について示されたい。
六
LGBT理解増進法の施行後、同法の理解増進に関し、民間団体への委託事業は実施されたか示されたい。また、基本計画や指針等を示さない中で、適切な委託事業の実施は困難であると考えるが、政府の見解を示されたい。委託事業が実施された場合は、委託先の選定基準や事業の進捗管理、成果の評価はどのように行われているか、具体的な事例に基づき示されたい。
右質問する。