令和7年6月2日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『再生可能エネルギー発電事業者の倒産・廃業及び太陽光パネル放置・撤去費用に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
太陽光発電や木質バイオマス発電などの再生可能エネルギー発電事業者の倒産件数は令和六年度に八件となった。休廃業・解散を含めると過去最多となる計五十二の再生可能エネルギー発電事業者が市場から撤退したと報じられている。
政府はこれまで、固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)を柱に再生可能エネルギーの導入を推進してきた。その結果、山林を伐採して造成された発電施設が全国各地に広がり、保安林や尾根部を含む森林の破壊が各地で進行している。
令和元年に林野庁が公表した「太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会報告書」では、FIT制度下における太陽光発電施設の建設を目的とした林地開発許可案件の急増に伴い、大規模な森林改変や地域住民の反対、林地開発許可の対象外地域での太陽光パネル崩落・土砂流出といった問題が指摘されている。つまり、これらのリスクは七年前の段階で既に認識されていたと言える。それにもかかわらず、開発行為を容認する政策が継続された結果、一部の自治体からは文化財保護法や森林法に抵触する事例が生じていると報告されており、事業者の不適切な計画やずさんな調査体制が問題となっている。
FIT制度の終了・縮小に伴い、今後、発電設備が大量に寿命を迎える「二○三二年問題」が現実味を帯びる中、所有者不明や倒産によって放置される太陽光パネルの増加が懸念されている。特に、太陽光発電設備の廃棄には高額な費用が掛かるため、廃棄費用の積立てが不十分なまま撤退した場合には、撤去・処理費用が自治体や市民に転嫁されかねない。実際、資源エネルギー庁によれば、平成二十八年十月から令和六年三月末までの間に、再生可能エネルギーに関する住民からの相談が千百八十件寄せられ、そのうち千百件が太陽光発電に関するものであったとされる。さらに、その内容は、廃棄や維持管理、周辺環境への影響など多岐にわたり、地域社会における不安の広がりを示している。
環境省資料では、発電を終了し電気的接続が切断された太陽光発電設備が放置された場合、ガラスの破損や水ぬれなどによって火災や事故に発展するおそれがあるため、適切な管理が必要であると指摘されている。また、環境省及び経済産業省が合同で公表した資料においても、不適切な管理状態にある設備が存在しており、将来的な廃棄等に対する地域の懸念が高まっているとされ、こうした課題への対応の必要性が示されている。こうした状況を踏まえると、売電を停止した太陽光パネルが放置され、適切な廃棄措置が講じられないという懸念は、既に現実になりつつあると言える。
以上を踏まえて、以下質問する。
一
再生可能エネルギー発電事業者の倒産・撤退件数が令和六年度に過去最多となったことについて、政府はどのような要因が背景にあると分析しているか示されたい。あわせて、FIT制度の終了に当たり、採算悪化による事業者の倒産や撤退が相次ぐ事態を政策決定時に見通していたか示されたい。
二
FIT制度における廃棄費用の積立開始時期は、売電開始から十年後以降となっており、それ以前に撤退・倒産した場合、費用確保の仕組みが事実上機能しないリスクがある。この空白期間について、政府は現在どのように対応しようとしているか示されたい。
三
FIT制度下で認定された太陽光発電設備のうち、事業者の倒産などによって管理主体が不明となった設備が全国各地で放置されているとの指摘がある。こうした設備の件数や所在などについて政府は把握しているか示されたい。
四
FIT制度では廃棄費用を含めた調達価格が設定されており、結果的に再生可能エネルギー発電促進賦課金という形で国民がその一部を負担している。それにもかかわらず、積立てが行われず撤去もなされないのであれば、国民負担と制度成果との間に深刻なねじれが生じていることになる。このような制度設計上の矛盾について政府の見解を示されたい。
五
太陽光発電を含む再生可能エネルギー事業は参入障壁が低く、事業主体の変更が行われやすいことから、管理不全や倒産後の設備放置が発生しやすいとの指摘がある。こうした無責任な事業運営が可能となってしまう制度設計上の課題を政府としてどのように認識しているか示されたい。また、こうした事態を未然に防ぐため、参入要件の厳格化や監督権限の強化について検討しているか示されたい。
右質問する。