令和7年6月4日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『太陽光パネルの災害リスクと情報提供の不備に関する質問主意書』
提出者 吉川りな
電気料金に上乗せされるいわゆる再生可能エネルギー賦課金の国民負担額が、平成二十四年の制度開始以来、累計で約二十三兆円に達していることが報じられている。
令和七年度には、国民負担額が初めて年間三兆円を超える見込みとなり、標準家庭でも年額約一万九千円の負担となるとされている(産経新聞令和七年三月二十一日、二十三日)。
政府は、国民に大きな負担を強いて、再生可能エネルギーの導入を推進しており、太陽光パネルの設置は、住宅用・事業用を問わず現在も拡大を続けている。しかしその一方で、太陽光パネルの約八割が中国製であるとの指摘があり、巨額の国民負担が、国内産業や国民生活に十分に還元されていないとの批判も高まっていると承知している。
我が国は、災害が多く、南海トラフ地震の発生も予想されている中にあって、設置後の水没や破損時における感電・火災リスクに対する住民向けの情報提供や対策は、必ずしも十分とは言えないと考える。実際、令和六年の能登半島地震では、斜面設置型のメガソーラーが崩落して道路を塞ぐ事例や、倒壊建物に設置された太陽光パネルの発火リスクを設置者が把握していなかった事例が報告されており、災害時における安全確保とリスク情報の周知が課題として明らかとなっている。
このような災害リスクに対する懸念は、既に各地で広がっている。岩手県議会をはじめとする複数の地方自治体からは、破損パネルの感電、火災及び有害物質による危険性とその対処法について、国民への周知が不十分であるとする意見書が出されていると承知している。
にもかかわらず、こうした教訓が制度面に十分反映されているとは言い難い。例えば、いわゆる新築住宅へのパネル設置義務化条例が施行された東京都においても、公式ウェブサイトに経年劣化後の交換費用や廃棄時に有害物質処理の費用負担、災害時の消火困難や水没時感電リスク等への注意喚起や具体的な対応策を記した文書は確認できず、住民への安全対策の指導も限定的であると考える。
これらの状況を総合的に見れば、太陽光パネル設置後の災害リスクに関する国民向けの周知や対応も、依然として不十分であると言わざるを得ないと考える。
一方、総務省消防庁は平成二十五年三月、太陽光発電システムを設置した一般住宅に関する感電・落下リスクについて、各都道府県を通じて各市町村等に周知するよう求める事務連絡を発出している。
この中では、いわゆるモジュールが光によって常時発電を継続する構造にあるため、火災の初期から残火処理に至るまで感電事故の可能性があること、また、屋根上作業時の転落リスクや、取外し後における感電防止の措置など、現場での対応が具体的に示されている。
しかし、こうしたリスク情報は消防機関内にとどまっており、政府自身が把握している危険性が設置者に十分伝わっていないことが懸念される。
以上を前提に、政府に対し質問する。
一
太陽光発電の設置に伴う災害リスクや廃棄費用に関する国民の認知度について、近年、政府による全国的な実態調査は行われているのか。行われていないのであれば、現状の周知状況や課題を正確に把握するため、改めて調査を実施すべきではないか。
二
住宅向け太陽光パネルの営業経験者からは、災害リスクや廃棄・買換えについて十分に理解しないまま設置を勧めていたことを悔やむ声があると承知している。営業担当者自身がこうしたリスクを把握していなかったのであれば、住民がそれを正しく認識できるはずもなく、結果として多くの設置が十分な理解のないまま進められてきたのではないかと考える。こうした中で、太陽光発電の導入を推進している国が、リスクの周知を徹底すべきではないか。
三
自治体からは、太陽光パネルの破損による感電・火災・有害物質のリスクについて、住民への周知が不十分との指摘があると承知しているが、こうした指摘に対し、現状の情報提供の在り方の見直しを含めた対応を検討しているのか、見解を示されたい。
四
地方自治体の多くが、住民向けのリスク情報を十分に発信できていない実態が指摘されていると承知している。政府として、各自治体が住民に対し適切に注意喚起を行えるよう、モデルとなる周知文書の作成や、設置業者による説明を制度的に位置付けることも含め、支援策を講じる考えはあるか。
五
令和六年の能登半島地震では、斜面設置型メガソーラーの崩落や、倒壊建物に設置された太陽光パネルの発火リスクが問題となった。こうした災害時における太陽光パネルの安全確保や、住民・関係者へのリスク情報提供について、政府は現時点でどのような教訓を得ているか示された上で、今後の災害対応マニュアルへの反映や、設置者への情報提供体制の強化についての方針をそれぞれ示されたい。
六
経年劣化後の設備や機器の交換と廃棄の費用は、設置者や、住宅を購入した者が負うことになるが、その周知と説明が正しく行われていると政府は認識しているのか、見解を示されたい。
七
固定価格買取制度においては、一定の事前積立等の対策が講じられているものの、売電事業者の倒産・廃業が実際に散見される中で、今後、制度の対象外となる小規模・個人設置者による設備廃棄費用が国民負担とならないよう、積立制度の強化や対象範囲の拡大など、更なる対策を講じるべきではないか。
右質問する。