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2025.6.20

難民認定制度の濫用防止及び審査体制の適正化に関する質問主意書

令和7年6月20日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『難民認定制度の濫用防止及び審査体制の適正化に関する質問主意書』

提出者:神谷宗幣

 難民認定制度は、難民条約に基づき真に庇護を必要とする者を保護するための制度として国際的に重視されている。一方、我が国では、就労目的による偽装申請や再申請を繰り返すことにより、送還を回避し長期的に滞在することを目的とする濫用的な申請が増加しており、同制度の趣旨がゆがめられているとの指摘が相次いでいる。法務省「令和五年における難民認定者数等について」(以下「法務省資料」という。)によれば、令和五年の難民認定申請者数は一万三千八百二十三人であり、認定されたのは過去最多ながらわずか三百三人(認定率二・二%)にとどまった。申請者の国籍は八十七か国にわたり、その中には紛争や迫害が確認されていない国も多数含まれている。

 令和三年四月二十一日の衆議院法務委員会(以下「当該委員会」という。)において、難民審査参与員を務めている柳瀬参考人は「難民と認定すべきと判断できたのは六件だけです。二千件に対して六件だけです。」と発言している。また、法務省資料では、実際に難民条約の対象となる可能性が乏しい申請をB案件(難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件)・C案件(再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件)として分類しており、B案件及びC案件の合計は、令和三年が千二百二十九件、令和四年が千百六十九件、令和五年が千六百十八件である。さらに、近年では欧米諸国における難民・不法移民に対する審査の厳格化や送還の強化を背景として、これまで欧米を志向していた一部の移動者が、相対的に審査期間が長く、滞在中の就労が可能な日本を「代替的な庇護先」として選択する傾向が生じているとの指摘もある。これは国際的な「セカンダリー・ムーブメント(二次移動)」の一環として、制度の濫用を一層助長する懸念がある。また、ブローカーや送り出し業者が難民申請制度を「長期滞在・就労の手段」として宣伝し、偽装申請を誘導する実態も報告されている。特に、東南アジア諸国や中東・アフリカ地域からの申請者においては、同制度への誤認や故意の悪用が深刻な問題となっており、適正な入管行政と人道的庇護との両立のためには、制度全体の見直しと対策強化が急務である。

 以上を踏まえ、以下質問する。

 
当該委員会における前記参考人の発言は、難民認定申請者の大多数が条約上の難民に該当しないという見解と考えられるが、政府は、現時点においても当該見解はおおむね妥当であると考えているか示されたい。また、妥当であると考えている場合、現行の審査運用は制度の目的に照らして適切に機能していると認識しているか、政府の見解を示されたい。

 
難民認定申請のうち、就労目的や在留延長目的と考えられる「制度濫用・誤用」と判断された案件(いわゆるB案件及びC案件)について、令和三年から令和五年における件数を示されたい。また、それらの申請理由のうち、典型的な事例として政府が把握しているものを具体的に示されたい。

 
出入国在留管理庁によれば、令和六年中に三回以上の難民認定申請を行った者は二百九十八人であり、同年六月の改正入管法施行後に送還された者は十七人とされている。この点を踏まえ、三回以上の難民認定申請を行った者について、同年中に審査が終局(難民認定、不認定、取下げ等)した件数及び審査を終局したにもかかわらず送還に至っていない件数を示されたい。また、これらに対して政府が掲げる「審査の早期化」方針の実施状況及びその効果について、制度濫用の抑止及び送還実効性の向上の観点から検証・分析を行っている場合には、その結果を明らかにされたい。

 
欧米諸国において、難民審査の厳格化や不法移民対策の強化が進められているが、こうした動きが我が国への難民認定申請数の増加に影響を与えていると政府は認識しているか示されたい。特に、他国から我が国へと流入する「二次的移動」の実態や日本の制度を選好する傾向の有無について、政府の分析・評価を示されたい。

 
ブローカーや書類代行業者による制度濫用の実態について、政府が把握している事例数、調査結果及び行政処分又は刑事摘発の件数を示されたい。また、送り出し国との連携及び再発防止のための協議について、政府の把握状況を明らかにされたい。

 
難民審査を行う難民審査参与員及び出入国在留管理庁の審査担当職員について、現在の配置状況、一人当たりの平均処理件数及び業務負担の現状を明らかにされたい。また、審査体制の強化に向けた今後の方針について具体的に示されたい。

  右質問する。

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