令和7年7月28日 藤野はるか
2022年7月20日、参政党のホームページに投稿された「米国で記事になった参政党」。
この記事に感銘を受けて参政党の「海外情報翻訳チーム」に参加した私にとって、大変思い出深いものである。それだけに、今回の参院選についての海外報道を私が執筆できることは感慨深い。
3年前に初挑戦した参院選の全国比例で177万票と初めての議席を獲得した参政党を国内メディアはおろか、海外メディアもほとんど報じることはなかった。
しかし今回は違う。
ロイター、ブルームバーグ(2)、BBC、CNN(4)、ドイチェ・ヴェレ(DW)(5)など、海外の主要メディアは選挙翌日から参政党について取り上げた。ざっくりまとめると、「元スーパー店長」である神谷宗幣氏が、コロナ禍の2020年に「米国トランプ大統領のMAGA運動に刺激され」て、「オンライン上で」立ち上げ、「ワクチンや国際金融資本についての陰謀論を拡散」しながら成長した「極右ポピュリスト政党」の参政党が、今度は「日本人ファースト」を掲げ「外国人による静かな侵略への警告」をしながら、自分たちの生活が苦しいのを「外国人のせい」だと感じる有権者の「不満をうまく利用」して大幅に議席を増やした、という具合である。
さらにロイターは、日本における在留外国人・訪日外国人が過去最高であることを数字で示した上で、参院選での有権者の関心事の第5位が「外国人問題」であったことに言及した。(1)
BBCも日本の伝統文化を重視し、中国に厳しい態度で臨んだ安倍政権を支持した日本の岩盤保守層が、2022年以降のLGBT理解増進法を通した岸田政権と物価高騰、米国との関税交渉で結果を出せない石破政権に愛想をつかして参政党に投票したと報じた。(3)
「高齢女性は子供が産めない」、「核兵器は安上がり」など神谷代表や候補者の発言の切り取りで参政党へのネガティブキャンペーンを繰り広げる国内メディアに比べると、海外メディアの方が参政党および我が国の現状について客観的に報道している印象だ。
他方で3年前にも参政党を報じた「ワールド・トリビューン」、しばしば大手メディアから「極右」、「陰謀論」、「親ロシア」のレッテルを貼られる新興ブログメディア「ゼロヘッジ」は、前段で紹介した欧米大手メディアとは一線を画した記述がある。
「ワールド・トリビューン」は3年前同様、参政党に安倍晋三元首相の影響を感じているようだ。3年前の記事のタイトルは「中国は安倍氏の暗殺を祝したが、日本の選挙では彼の遺産が台頭」(6)、今回は「安倍晋三氏の遺産は健在:新党の『グローバリズム』、中国共産党および自民党への挑戦」(7)となっている。大手メディアが全く取り上げなかった神谷氏のマイク納めでの「私はみなさんの思いを受け止めて、この80年の戦後体制をひっくり返す、その代表です!」という発言を取り上げている。
「ゼロヘッジ」の記事のタイトルは「日本は国政選挙でグローバリズムと多文化主義に反対票」となっており、今回取り上げた海外メディアの記事の中ではもっとも実態に即していると思われる。石破茂首相を「グローバリストと親和性が高い(globalist-friendly)」と表現し、参政党を「反グローバリズム、強制された多文化主義への抵抗」を掲げる勢力だとしている。さらに日本国内の状況については「進歩的なイデオロギーに抵抗してきた日本は、長年欧米諸国の左派に極右扱いされてきた。日本のメディアはグローバリストの陰謀、コロナ対策、ワクチン接種に関する嘘をいまだに陰謀論扱いしているが、日本の有権者は知恵をつけて、騙されなくなっている」と評している。日本の政界について「安倍晋三元首相の暗殺と影響力低下により自公連立政権は多文化主義を受け入れざるを得なくなっている」、日本への移民についても「(日本とは異なる)第三世界の不潔な場所から連れてこられ、日本の習慣やルールについての理解もほとんどない」と断じている。(8)
この記事の最終段落は、以下のように結ばれている。
「労働力不足への唯一の解決策が移民受入だとする言説は、それぞれの国の文化や国境を消し去り、同質的社会のより大きな安定性を損ねるために大量移民を武器として使うグローバリストが積極的に推進する虚偽である。」
今回の参院選における参政党の躍進は、グローバリストとの戦いの第二幕に突入したことを示したのかもしれない。
【参照記事】
(1)‘Japanese First’ party emerges as election force with tough immigration talk | Reuters
(2)Japan Right-Wing Party’s Gains Risk Unnerving Global Investors – Bloomberg
(3)Sanseito: How a far-right ‘Japanese First’ party gained new ground
(5)What is behind the rise of the ‘Japanese First’ far-right? – DW – 07/22/2025
(8)Japan Votes Against Globalism And Multiculturalism In Latest National Election | ZeroHedge