令和7年8月1日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『瀬戸内海・笠佐島における中国資本による土地取得と安全保障上の懸念に関する質問主意書』
提出者:吉川りな
令和七年七月二十五日付の産経新聞は、山口県・笠佐島において、平成二十九年から三十年にかけて複数の中国人が土地を取得し、林道整備や電柱の敷設が進められていると報じた(以下、「本件報道」という)。同様の事例は他地域にも及んでおり、令和三年には沖縄県の無人島・屋那覇島の約半分が中国系企業に取得され、地元自治体には自然環境や安全保障への懸念が寄せられた事例も報告されている。
本件報道によれば、周防大島や広島市沖の離島でも、別荘目的の土地購入が増加しており、中国本土から東京・大阪の中国系不動産業者を通じた視察や交渉が継続的に行われているという。地元では「島全体が買い占められるのでは」との不安の声が上がっている。
笠佐島は、海上自衛隊呉基地や米軍岩国基地に近接し、瀬戸内海の要衝に位置する。小型船舶による移動の容易さや、監視の困難さといった地理的・戦略的特性を踏まえれば、外国資本による土地取得は、単なる経済活動にとどまらず、国防及び主権に関わる重大な問題である。
我が国は平成六年にGATS(サービス貿易一般協定)を批准し、外国人の不動産取得を日本人と同様に認めてきた。他国の多くが居住要件や用途制限、課税強化などの規制を設けていることと比較すれば、我が国の制度は極めて寛容かつ無防備と言わざるを得ない。さらに中国では、「国家情報法」「国防動員法」などの国内法により、有事の際には国内外の自国民にも国家への協力義務が課される。このため、中国人が国外で保有する土地や施設が、中国国家の戦略的資源として利用されるリスクは否定できない。
令和四年に全面施行された「重要土地等調査法」は、安全保障上重要な施設周辺や国境離島の利用状況等を調査するにとどまり、土地取得そのものを包括的に規制・禁止する制度ではない。機能阻害行為が認められた場合に限り、勧告や命令が可能であるが、対象範囲が極めて限定的であり、抑止力としての実効性に疑問が呈されている。
このような現状を放置すれば、我が国の領土が実質的に外国資本の影響下に置かれる懸念が一層強まる。主権と安全保障の観点から、土地取得をめぐる法制度の見直しは急務であると考える。
以上を前提に、政府に対し質問する。
一
山口県・笠佐島及びその周辺離島における中国籍個人・法人による土地取得の事実関係を政府は把握しているか。把握できていない場合、その理由は何か。
二
米国や豪州、ニュージーランドなどでは外国資本が軍事施設や国境付近の土地を取得する際、事前審査や承認制を導入し、安全保障上の懸念があれば取引を差し止める制度を有している。我が国においても、こうした制度を整備すべきではないか。政府の認識と方針を示されたい。
三
無人島や離島が外国資本に売却される場合、取引前に地元自治体や住民が情報を把握し意見を述べられる法的手段はあるか。存在しない場合、安全保障上の観点から、事前に売却を防ぐ手段がないという現状を政府はどのように評価するか。
四
外国資本による土地取得が、防衛施設等から千メートル以上離れた場所で行われ、後に安全保障上の懸念が判明した場合、現行法制の下では取引自体を無効化または制限できる制度が存在しないと考えられるが、この認識は正しいか。
五
外国資本による土地取引について、国は仲介業者や取引の流通経路をどの程度把握できているのか。重要土地等調査法にはこうした取引を継続的に把握する仕組みが存在しないと考えられるが、この認識は正しいか。正しい場合、安全保障上のリスクを評価する前提情報を十分に得られない現状を政府は問題視しないのか、その理由を明らかにされたい。
六
外国資本による我が国領土の不動産取得については、国によっては日本人が土地を自由に取得できない不均衡な状況が存在する。こうした不均衡を是正するために、二国間条約や国内法改正を通じて、相互主義の考え方を導入し、相手国の規制水準に応じて同等の制限を課すことは可能か。政府の見解を示されたい。
七
中国の「国家情報法」「国防動員法」により、海外で中国国籍者が保有する土地や施設が有事に徴用される可能性がある。政府はこの法制度の存在が我が国の安全保障環境に与える潜在的リスクについて、調査・分析を行っているか。行っていないのであれば、その理由を明らかにされたい。
右質問する。