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2025.8.05

戦後八十年に際する首相見解の形式及び位置付けに関する質問主意書|神谷宗幣

令和7年8月1日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『戦後八十年に際する首相見解の形式及び位置付けに関する質問主意書』

提出者:神谷宗幣

 二〇二五年は戦後八十年の節目に当たる。これまで、五十年、六十年、七十年の節目には、いずれも当時の内閣により、歴史認識に関する首相談話が閣議決定を経て発出されてきた。歴史認識をめぐる首相談話は、時に内外の強い関心を呼び、国内的にも評価が分かれる中で、外交・教育政策に長期的な影響を及ぼしてきた。こうした背景の下、戦後七十年においては、歴代談話の立場を全体として引き継ぐとした上で、将来への方向性を打ち出す形で一定の整理が図られた。

 戦後八十年に際しても、談話の発出を予定していることが報じられたため、私は二〇二五年四月、「戦後八十年に際する政府の対応及び有識者会議の在り方に関する質問主意書」(第二百十七回質問第九七号)を提出した。当該質問主意書では、有識者会議の設置方針や戦後七十年談話の継承、歴史認識の扱いなどについて政府の見解を質したが、政府は何ら決まっていないとのみ答弁し、具体的な方針は明らかにされなかった。

 政府は当初、二〇二五年四月中に有識者会議を設置し、多様な意見を踏まえ、戦後八十年に際する首相見解(以下「首相見解」という。)を策定する方針を検討していたものの、最終的には実現に至らず、本質問主意書提出時点においても有識者会議は設置されていないと承知している。終戦の日まで約二週間となる中、首相見解の内容や形式については政府内で一定の整理が進められていると推察されるところ、報道によれば、首相見解は、戦前の統帥権や文民統制の検証、現行憲法下での自衛隊の位置付けを主題とする一方、歴史認識には「踏み込まない」構成とされている。

 しかし、有識者会議を通じた開かれた議論もなく、準備過程が不透明なまま、重大な国家的メッセージが発出されることには強い懸念が残る。首相見解が閣議決定を伴わない形式であっても、終戦の日に内閣総理大臣名で安全保障に関する基本的立場を示す文書が発出されれば、それは個人的見解にとどまらず、内外に重大な影響を及ぼすことは避けられない。内容や形式の曖昧さは、従来の首相談話との整合性や国政の継続性、対外発信の信頼性を損ねるおそれがある。とりわけ、報道されているように、自衛隊の位置付けといった安全保障上の核心に触れるのであれば、その前提となる歴史認識や戦後処理に関する前提の整理と説明は不可欠であると考える。

 政権の安定性や国民的理解が十分に得られていない状況で、手続の正当性や議論の透明性を欠いたまま、新たな見解が示されようとしていることには、強い懸念を抱かざるを得ない。首相見解を終戦の日に発出する意義及び将来の政権への継承性の担保策については、発出前に国民に説明されて然るべきと考える。

 以上を踏まえて、以下質問する。

 
戦後七十年に際しては、当時の安倍晋三内閣総理大臣の下で「二十一世紀構想懇談会」が設置され、歴史や政治に造詣の深い有識者が幅広く参加し、戦後の歩みと今後の国の役割について多角的な議論が行われたと承知している。戦後八十年に際し発出が予定されている首相見解は、閣議決定を経ない形式で発出される予定か示されたい。また、首相見解の策定に当たり、有識者の意見聴取や閣僚間の協議は行われたのか示されたい。

 
首相見解の形式が閣議決定によらずとも、内閣総理大臣名で発出され、歴史認識や安全保障に関わる重大事項に言及する以上、実質的には政府の公式見解として受け止められることは避けられないと考える。政府としてもそのような認識に立っているのか示されたい。また、首相見解の内容について、政府は説明責任を果たす立場にあると考えるか示されたい。

 
首相見解が閣議決定を経ずに発出された場合、その内容は将来の政権において継承されるべきものと位置付けられるのか示されたい。継承される場合、根拠を示されたい。継承されない場合、節目の年に首相見解を発出する意義を示されたい。

 
戦後五十年・六十年・七十年の歴史認識に関する首相談話は、いずれも閣議決定を経る形式で発出されてきた。今回、閣議決定を経ない形式とする場合、その理由を示されたい。また、閣議決定の有無が内外に与える影響について、政府の認識を示されたい。

 右質問する。

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