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2025.8.05

SNSにおける言論操作及び政府答弁の整合性に関する質問主意書|神谷宗幣

令和7年8月1日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『SNSにおける言論操作及び政府答弁の整合性に関する質問主意書』

提出者:神谷宗幣

 私は令和七年四月二十一日、「日中「友好交流」を通じた地方自治体・青少年・メディア等に対する中国の統一戦線工作・影響力工作に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第一〇四号。以下「質問主意書」という。)を提出した。質問主意書は、政府機関又はその関係者がSNSプラットフォーム運営事業者(X、YouTube等)に対して、中国にとって不都合とされる政治的情報や言論に関し、投稿の削除、表示制限、アルゴリズム操作等の介入を要請した事実又はそれを容認・黙認していた事実があるか否かを質問したものである。これに対する答弁書(内閣参質二一七第一〇四号。以下「答弁書」という。)において、政府は御指摘のような事実はない旨答弁し、SNS上の情報空間に対して政府が関与し、特定の政治的意図の下に世論を誘導していることはないとの認識を示した。

 しかし、初代デジタル大臣で自由民主党広報本部長を務める平井卓也衆議院議員は令和七年七月十七日、インターネット番組に出演した際、「我々、相当「消し込み」にはいってますからね。どんだけやっても追いつかない」と発言した(以下「当該発言」という。)。これは、自民党がSNS上の投稿内容に対して組織的な「消し込み」、すなわち削除・抑制等の介入を行っていることを事実上認めるものと受け止められ、波紋を呼んだ。

 平井議員は同月二十五日、SNS上において、通報機能を用いた対応であったことを明確に認めている。当該発言が示すとおり、個人の判断ではなく、党として一定の基準や体制に基づく対応であった可能性が高い。そして、その主体が政府・与党であることを踏まえれば、公共的言論空間への影響は極めて重大である。また、平井議員は「アカウントの凍結等の措置は、各プラットフォーマーが自らの利用規約に基づいて判断するもの」と弁解しているが、実際には政府・与党関係者がSNS上の言論環境に対して、組織的かつ恣意的な統制を加えていた可能性を自ら示唆したものであり、政府が従来示してきた答弁の内容との間に明らかな齟齬が生じる。とりわけ、SNS空間が現代の民主主義社会において国民の政治的意思形成や政策批判の中核的役割を担っている現状を踏まえれば、与党による情報空間の操作は、国民の知る権利、表現の自由、選挙の公正性を著しく損なう。

 諸外国においても同様の問題意識が顕在化しており、SNSに対する政府の関与の是非が憲法訴訟や制度設計の核心課題として取り上げられている。例えば、米国では、バイデン政権によるSNSプラットフォーム運営事業者への投稿削除要請をめぐって、令和五年、連邦地方裁判所及び連邦控訴裁判所が、政府による働きかけが表現の自由(憲法修正第一条)を侵害するおそれがあると判断した事例があった(Murthy v. Missouri事件)。また、令和七年一月二十日、トランプ大統領は「言論の自由の回復と連邦政府による検閲を終結させる大統領令」(Executive Order 14149)を発出し、政府関係者がSNSプラットフォーム運営事業者に対して言論の削除や制限を要請することを禁止する政策的姿勢を明確に打ち出している。

 さらに、欧州連合(EU)では、令和四年に施行されたデジタルサービス法(DSA)により、政府からの削除要請やプラットフォームによる削除決定に関し、理由の開示、利用者への通知義務、異議申立制度、透明性レポート等の手続的保障が制度化されている。これにより、表現の自由との整合性を確保しつつ、プラットフォームと政府の関与の透明性を制度的に担保している。

 これらの国際的な事例に照らしても、SNS上の言論に対する政府・与党の関与が、どのような法的根拠に基づき、いかなる判断基準で行われているのか、透明性と憲法的整合性の両面から検証されるべきである。

 よって、政府として、平井議員の発言の真意及び事実関係、SNSプラットフォーム運営事業者との関係性、過去の政府答弁との整合性並びに言論の自由との関係について、国会において明確な説明責任を果たすべきであると考える。

 以上を踏まえて、以下質問する。

 
当該発言について、「消し込み」が具体的に何を意味すると政府は認識しているか示されたい。また、当該発言は、政府の関与を示唆するものなのか、政府の見解を示されたい。

 
当該発言は、SNS空間に対する与党の組織的介入を示唆するものであり、公共的言論空間の中立性や表現の自由に関わる重大な意味を持つと考える。政府として、当該発言の趣旨や内容について把握しているか示されたい。また、把握していない場合でも、当該発言が一定の政治的影響を及ぼしている以上、事実関係を調査すべきと思料するが、今後調査を行う考えがあるか示されたい。同様の発言や行為が現に政府関係者によって行われていた場合、それは国民の表現の自由や選挙の公正性を損なうと政府は認識しているか、政府の見解を示されたい。

 
SNS上の投稿削除、表示制限、アカウント停止等について、政府関係機関又はその職員が、SNSプラットフォーム運営事業者に対して要請・通報・協力などの行為を行った事例があるか。ある場合、その件数、対象内容、実施時期、法的根拠を示されたい。

 
答弁書における御指摘のような事実はない旨の政府答弁と当該発言との間に整合性があると考えるか、政府の認識を示されたい。

 
「誤情報対策」や「差別的投稿防止」を名目とした政府・与党によるSNS投稿に対する削除・制限・可視性制御等の働きかけが、特定の政治的言論や政策批判の抑圧につながっていると思料するが、政府の見解を示されたい。

 
政府又は政党によるSNS上の投稿に対する働きかけや削除要請の実態を国民が把握できるようにするため、透明性確保の仕組み(要請履歴の記録と開示、報告書の義務化など)を制度化する考えはあるか、政府の見解を示されたい。制度化する考えがある場合、制度設計の方針を示されたい。

 
米国やEUにおいては、政府によるSNSへの関与に対する透明性の確保や、憲法上の表現の自由との整合性を確保するための法的枠組みが整備されつつある。政府として、こうした国際的な潮流と比較し、国内における制度設計の在り方についてどのような見解を有するか示されたい。また、今後の法制度整備の必要性について、認識を示されたい。

 右質問する。

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