令和7年8月1日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『選挙演説妨害の取締強化に関する質問主意書』
提出者:あだちゆうじ
公職選挙法第二百二十五条第二号においては「交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、(略)その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき」に「選挙の自由妨害罪」として「四年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金刑に処する」という刑事罰が定められている。これは、法律で定められた短期間の選挙運動期間において、有権者が候補者の選挙演説を十分に聴き、候補者の主張内容を知る機会を確保し、選挙演説の内容を投票の判断材料とするために、刑事罰をもって選挙演説の自由を保障したものと考えられる。
昭和二十九年十一月二十九日大阪高等裁判所判決(昭和二十九年(う)第一六八四号)においては、「演説の妨害となることを認識しながら他の弥次発言者と相呼応し一般聴衆がその演説内容を聴き取り難くなるほど執拗に自らも弥次発言或は質問等をなし一時演説を中止するの止むなきに至らしめるが如きは公職選挙法第二百二十五条第二号に該当すると解すべきである。」と判示しており、一般聴衆が聞き取りにくくなるほど執拗に野次発言や質問をし、一時演説を中止せざるを得なくさせる行為が公職選挙法第二百二十五条第二号の演説妨害に当たると判断している。
しかし、令和七年七月三日告示・同月二十日投開票の第二十七回参議院議員通常選挙の選挙運動期間中には、街頭で選挙演説中の候補者に対し、集団で執拗に野次や絶叫を繰り返す行為や、メガホンや拡声器を用いて候補者の演説を聞き取りにくくする行為等が見受けられた。また、候補者に対して殺害予告が行われた事案も発生している。
選挙演説の自由を確保することの重要性は、民主主義社会にとって言うまでもない。また、選挙演説に対する妨害行為の取締りが厳格に行われなければ、妨害行為が更に過激化しかねない。例えば、安倍晋三元内閣総理大臣は令和四年七月八日、白昼の選挙演説中の銃撃により暗殺されている。また、岸田文雄前内閣総理大臣は令和五年四月十五日、和歌山市内で街頭演説中に爆発物によって演説中止に至らしめられた。
選挙の自由妨害罪を設けた公職選挙法の制度趣旨を踏まえ、選挙演説に対する妨害行為には毅然と対応し厳格な取締りを行うことが必要であるとの観点から、以下質問する。
一
公職選挙法第二百二十五条第二号における演説の妨害について、取締り実務上、政府はどのような行為が同条に該当し得ると整理しているか。過去の判例に加え、警察庁又は総務省が運用上参考としている基準を示されたい。
二
公職選挙法第二百二十五条第二号に関する取締りの運用について、警察庁又は総務省が定める通達・通知・ガイドライン等が存在するか示されたい。存在する場合、その概要と運用状況を示されたい。
三
第二十七回参議院議員通常選挙の選挙運動期間を対象とする選挙の自由妨害罪又は同選挙に係る威力業務妨害罪の認知件数・検挙件数・検挙人員について示されたい。
四
選挙演説の妨害行為などの選挙の自由妨害罪及び候補者に対する殺害予告などの威力業務妨害罪に対する取締り及び検挙の強化について、政府の見解を示されたい。
五
候補者及び選挙運動員の街頭演説時の安全確保策について、前記の令和四年及び令和五年の襲撃事件を踏まえ、政府として見直しを行ったか示されたい。見直しを行った場合、その概要及び今後の取組方針を示されたい。
右質問する。