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2025.1.10

一通の手紙から始まった子ども選挙 投票率100%

山口県宇部市議会議員 三好保雄

1 小学生のときからリアルな投票体験を

全国的に投票率の低下、政治への無関心さが懸念される今、主権者教育の重要性が叫ばれています。我が宇部市でも同様です。直近の市議会議員選挙の10代と20代の投票率は10%台でした。
今回、形式だけ真似た形ではなく、子どもが自分事として地域のことを考えられるように工夫された全国にも類を見ない形で子ども模擬選挙が実施され、市議会議員として参加協力できたので紹介します。
実施後の子どもからの感想や保護者の感想、この地域の衆議院選挙での投票率の高さにも成果が認められました。

2 市長への手紙からはじまる

2023年4月23日投票の宇部市議会選挙の投票率が37%と過去最低だったことから、宇部市立内の小規模校小野小学校のある5年生児童が、5月に市長にこんな手紙を出したところから始まりました。
「こんにちは宇部市長様。いきなりですが、私は子どもたちも投票に参加してもいいと思います。ですが今日本の法律ではそれができない。一つ提案です。選挙の時、子どもたちは、模擬投票というものをすればいいと思います。・・・」
小野小学校は、全校児童21人で、1・2年、3・4年、5・6年の複式授業を行っている小規模校です。
受け取った篠崎市長は、専門家と相談して前向きに検討することを約束されました。

3 実現までの足どり

通常の市の選挙に関する小中学校への出前講座では、投票箱・記載台は持ち込まれても、立候補者役は、教師や生徒だったりします。
今回は、入場整理券の発行、現職議員による選挙公報の作成、市内の選挙掲示板に貼られたポスターと同じものが校内の選挙掲示板に貼られるなど実際の選挙に可能な限り近づける方針で行われました。
現職の議員4人による演説と質問会により、子ども達は自分たちの暮らす地域について具体的に考えました。
議員に与えられたテーマは、「より良い宇部市にするために取り組んでいくこと『小野校区』を含めた宇部の北部のために取り組んでいくこと」です。
小野地区は、市の北部の農業地域で自然豊か。市の水道の水源地である小野湖があります。人口減少により中学校が廃校になった校区です。(宇部市の南部は、瀬戸内海に面しており工業地域と中心市街地です。)
私は、以下に示す公約を選挙公報に書きました。

市長・教育委員会・選挙管理委員会・議会事務局が連携を取り合い実施されました。現職議員が動くとなると公職選挙法に関して問題が発生する可能性もありました。いろいろな配慮をされての実施でした。公平性に留意して議会の全会派に呼びかけがあり、私も希望しました。
小野小学校の担任の先生・校長先生・教頭先生が児童の日記から市長への手紙へと実行に移されたことで実現した子ども選挙でした。

2023年11月9日2校時
民主主義や選挙についての事前学習
篠崎宇部市長から子ども選挙についての話

4 ポスターの前で悩み・考える

2023年11月14日~21日
統一地方選挙で実際に使用した各議員のポスターが、選挙管理委員会が校舎内の廊下に作った本物の掲示板に1週間掲示され、現職議員が子ども用にひらがなで書いた選挙公報を見ながら、休み時間などに子ども達はポスター前でどの議員に投票するか会話する姿が見られたとのことでした。

5 現職の議員による政策演説と質問会

2023年11月20日4校時
1週間後、現職の議員が、4月の統一地方選挙で実際に使用したたすきを付け、5分間ずつの政策演説と質問会を行いました。その後、議員と子ども達は一緒に給食を食べました。

6 公民館で投票

2023年11月21日5校時
次の日、選挙管理委員会が作ってくれた個人の氏名が印刷された入場整理券を持って、投票所に入り、昨日演説した4人の現職議員のうち一人を選び、投票しました。
本物の記載台で本物の投票用紙に書き、本物の投票箱に投票しました。
最初の児童は、投票箱には何も入ってないことを確かめる役割もしました。

7 宇部市選挙管理委員会による開票

選挙管理委員会職員による開票作業の後、選挙管理委員長による開票結果の発表です。
小野校区の方も立会人として参加されました。
保護者や学校運営協議会委員の方も子ども達を見守りました。

8 終わりに

日常、政治の話は敬遠されがちです。戦後の占領政策により政治に関心を持たないように我々日本人は教育されてきたようです。いつの間にか、ラジオ・新聞・テレビでしか情報を得ようとせず、先人たちが勝ち取った権利である選挙に行かない人々が多数になってしまいました。
子ども模擬選挙後の子どもの感想「今の大人が投票しないと住んでいる小野が悪くなったり、良かったことが悪くなったりしたらいけないから、今の投票が大切なんだなと思った。」を読むと今回の子ども模擬選挙に関わり、小学生の年代から自分たちの地域の課題を考え、候補者の意見を聞き、地域の課題を解決する上でどの候補者を選ぶかについて真剣に考え、その中の一人の名前を書き投票するという体験の意味を改めて認識しました。
また、幼くても1年生は1年生なりに選挙というものを受け止めていたようです。
小規模校であるからこれほどリアルに実現できた内容ですが、本物の議員が各校を訪問して、地域の課題や政策について語り、模擬投票をすることは全国各地で進めて行くべきであると思いました。

今回の子ども選挙の様子は、NHKが取材されていました。
こども選挙 山口県宇部市 主権者教育 | NHK政治マガジン
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/104844.html
に詳しく出ています。


三好 やすお
Miyoshi Yasuo

所属議会
宇部市議会議員(山口県)

経歴
千葉大学教育学部保健体育科卒業
関市内宇部市内で43年間小学校教員を勤め、3学期末子ども達を進級させた後、立候補して宇部市議会議員となる。(1期目) 

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