私は高槻市議会議員になるまで15年以上海外に住んでおり、イギリス、マレーシア、シンガポール、タイ、オーストラリアと様々な国で生活をしてきました。その中でも特に印象に残っている「オーストラリアのOp Shop文化」についてご紹介させていただきたいと思います。
オーストラリアには、市民が寄付した中古品を低価格で販売し、その収益を福祉活動に還元する「Op Shop(オポチュニティショップ)」が全国に広がっています。単なるリサイクル店舗ではなく、「寄付 × 雇用支援 × 循環型経済」を組み合わせた社会モデルとして注目されています。
Op Shopは「Opportunity Shop」の略称で、市民から寄付された衣類や家具、雑貨などを販売し、その収益を地域の福祉活動や慈善事業に充てる店舗です。
オーストラリアのOp Shopは、キリスト教系の教会組織や慈善団体が運営母体となっているケースが多く、具体的には以下のような団体が代表的です。
これらの団体はOp Shopの収益をもとに、ホームレス支援、障がい者支援、医療・教育支援、動物福祉など、地域に根ざしたさまざまな社会貢献活動を行っています。
また、各地域の教会が自主運営するOp Shopも多く、小規模ながら地域密着型の活動として重要な役割を果たしています。
※以下の画像は「RSPCA Op Shop 店内の様子」です。
Op Shopは、単なる販売店としてだけでなく、働く場としても重要な役割を果たしています。ボランティアやスタッフとして働くことで、長期失業者や障がい者が社会復帰への一歩を踏み出すことができるのです。
オーストラリアの福祉制度には、「Mutual Obligation(相互義務)」と呼ばれる就労支援プログラムがあり、生活保護受給者がコミュニティ活動や就労体験を行うことが求められています。Op Shopでの活動は、その受け皿となる場の一つとして機能しています。
働く場を提供することで、労働習慣の回復や地域との繋がり、自信の醸成につながることが期待されています。
日本でもフードバンクやリユース活動が徐々に広がりつつありますが、「寄付されたモノを福祉財源とし、同時に就労支援の場として活用する」Op Shopのような仕組みは、まだ一般的ではありません。
これからの日本社会には、寄付文化・循環型経済・雇用支援を組み合わせた新しい福祉政策モデルの導入が必要です。既存の補助金や給付金だけに頼るのではなく、地域住民が主体となり、モノの寄付・労働・福祉が循環する仕組みを整備することが、真に持続可能な福祉社会への道だと考えます。
Op Shopと並んでオーストラリアで特徴的なのが「Gumtree」を使った個人間での売買・譲渡文化です。Gumtreeはオンライン掲示板型のマーケットプレイスで、使わなくなった家具や家電、雑貨を市民同士が直接やり取りしています。
Op Shopが「福祉支援を伴う循環」のモデルだとすれば、Gumtreeは「市民間での助け合いと再利用」の象徴的存在です。粗大ゴミとして廃棄されるはずだったモノが、別の誰かの生活を豊かにする。こうした循環型社会の意識が、社会全体に根付いています。
オーストラリアのOp Shop文化は、寄付・雇用支援・循環型経済が一体となった地域社会モデルです。日本でもこの仕組みを取り入れることで、地域が主体となる福祉の新しい形を作ることができるはずです。
モノを「捨てる社会」から「活かし合う社会」へ。寄付文化を基盤にした福祉政策を進めていくことが、日本社会にとって重要な課題になるでしょう。
—
小森 さだゆき
Komori Sadayuki
所属議会
高槻市議会議員(大阪府)
経歴
(英国)ノッティンガム大学 ビジネス経営学部 卒業
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100088567598306
HP:https://go2senkyo.com/seijika/185873