世田谷区議会議員の岡川大記です。今回は、私たちの生活に深く関わるプラスチックごみの分別について、その実態と課題を考察したいと思います。
私たちの生活には「分別収集」が当たり前のように組み込まれています。特にプラスチックごみの分別収集は、環境保護の重要な取り組みとして認識されてきました。しかし、その実態は私たちが想像するものとは大きく異なっています。多くの自治体が分別収集を余儀なくされる中、その効果と意義について、改めて考える必要が出てきています。
2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法により、自治体によるプラスチック製品の分別収集が実質的に義務化されました。この法律では、違反した場合の罰則規定も設けられており、自治体は対応を迫られています。
東京23区を例にとると、世田谷区は分別収集を実施していない数少ない自治体の一つでしたが、法律の施行を受けて分別収集の導入を決定しました。これからの数年間でプラごみの分別収集に舵を切ることで、区民の生活様式や区の廃棄物処理システムに大きな変更が求められることになります。
※プラスチック資源循環促進法:プラスチック製品の設計から廃棄物の処理までを包括的に規制する法律
2023年、日本国内で排出された廃プラスチックは769万トンにのぼります。その処理方法の内訳は以下の通りです。
– サーマルリサイクル:約64% (燃やしてエネルギーを熱や蒸気などで回収する)
– 単純焼却:11% (そのまま燃やす)
– マテリアルリサイクル:22% (材料としてリサイクルされる)
– ケミカルリサイクル:3% (化学原料に戻し、再利用可能な物質にする)
つまり、分別して収集されたプラスチックの75%が、最終的には何らかの形で焼却処理されているのです。
※サーマルリサイクル:廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収し、発電や温水製造に利用する方法
※マテリアルリサイクル:使用済みプラスチックを原材料として再利用し、新たな製品を製造すること
※ケミカルリサイクル:プラスチックを化学的に分解し、化学原料として再利用する方法
現行のリサイクルシステムには、複数の重大な課題が存在します。
1. エネルギー消費の問題
収集、選別、洗浄、溶解、再成形など、各工程で大量のエネルギーを消費します。このエネルギー消費自体が新たな環境負荷となっている可能性があります。
2. 高額な処理コスト
専用の収集車両、選別施設の運営、リサイクル設備の維持など、膨大なコストが発生しています。これらは最終的に住民の税負担として跳ね返ってきます。世田谷区で産出されている予算は年間20億円を超えます。
3. リサイクル品の品質劣化
プラスチックは再生利用を重ねるごとに物性が低下し、使用できる用途が限定されてしまいます。完全な循環型リサイクルの実現は、技術的に困難な状況です。
※物性:材料の持つ物理的・化学的な性質
4.自治体の大きな負担増
収集・運搬システムの整備や、住民への周知・啓発活動、新たな処理施設への投資、- 人員確保と教育など多くの乗り越えなければいけない課題があり、これらすべての負担は、最終的に住民の税負担増加につながっていきます。
プラスチックごみ問題の本質的な解決には、以下のようなアプローチが必要だと考えます。
1. プラスチック使用量そのものの削減
2. 生分解性プラスチックなど、環境負荷の少ない代替材料の開発
3. リサイクルを前提とした製品設計の推進
4. より効率的な廃棄物処理システムの構築
※生分解性プラスチック:微生物の働きにより分解される性質を持つプラスチック
2021年度がプラごみ総排出量824万トンで2023年度の総排出量769万トンと2年間で約55万トン(7%程度)のプラスチックごみが削減されるなど、プラスチックの使用に対する意識の変化など一定の成果は出ています。しかし、リサイクルに掛かるその効率性や経済的な観点から見た妥当性については、慎重な検討が必要です。
現在、日本経済は低迷期にあり、国民の生活負担は増大の一途をたどっています。このような状況下で、効果に疑義のあるプラスチックごみの分別収集に多額の予算とランニングコストを投じることが、本当に賢明な選択なのでしょうか。分別収集したプラスチックの大半が単なる焼却用の材料として使用されていることや、マテリアルリサイクルの名目で海外に輸出され、国富が流出している現状を踏まえると、環境保護の重要性は認識しつつも、国民への負担が大きく効果が限定的な現行の方式を見直し、日本の国益に適った、より効率的で実効性のある廃棄物処理の方法を模索すべき時期に来ているのではないでしょうか。
この問題について、皆様のご意見もお聞かせいただければ幸いです。持続可能な社会の実現に向けて、環境保護と経済性のバランスを考慮した、より良い解決策を共に考えていきたいと思います。
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岡川 たいき
Okagawa Taiki
所属議会
世田谷区議会議員(東京都)
経歴
京都産業大学経済学部 卒業
株式会社TIPPING POINT 勤務
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