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2025.4.17

戦後八十年に際する政府の対応及び有識者会議の在り方に関する質問主意書

令和7年4月16日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。

『戦後八十年に際する政府の対応及び有識者会議の在り方に関する質問主意書』

提出者 神谷宗幣

 本年は先の大戦が終結して八十年目に当たり、戦後、我が国は国民の多大な努力によって復興を成し遂げた。その一方で、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)のWGIP(War Guilt Information Program/ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)により、戦争の経緯や背景が連合国側の視点から一方的に描かれ、「日本のみが絶対的加害者」とする偏った歴史認識が形成され、いわゆる「自虐史観」が国民の歴史認識の中に刷り込まれる形となった。その後も、一部の近隣諸国において、歴史認識をめぐる一方的な主張や、日本の立場を貶める発信が継続的に行われており、我が国の名誉や国際的評価に影響を与えかねない情報戦が今も続いている。

 このような情勢の中で、これまで戦後の節目には、歴代首相による談話が閣議決定により発出されてきた。五十年及び六十年談話においては「お詫びの気持ち」が繰り返し表明されたが、それは既に法的に解決された戦後処理を再び蒸し返し、我が国自身が自虐的な歴史観に縛られる姿勢を助長した側面も否めない。一方、七十年談話においては、「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」との表明とともに、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との決意が示され、ようやく過度な謝罪外交からの脱却と、真実に基づく歴史認識への転換が示された。我が国が未来に向かって誇りを持ち、建設的に歩む姿勢を明確にした点で、新たな歴史認識の方向性を示した談話であった。

 新たに談話を発出する必要性は乏しく、むしろ七十年談話の精神を継承し、その歴史認識の方向性を国民的に共有すべきである。しかるに、石破首相は、戦後八十年談話の発出は見送るとしつつも、「日本がなぜ無謀な戦争に突き進み、甚大な被害を生じさせたのかを検証する」として、有識者会議を令和七年四月に設置し、同年八月に成果を公表する意向を示している。このような方針は、むしろ新たな歴史認識の対立を国内外に生む可能性がある。今、求められるのは、七十年談話の精神を国民が共有し、いまだ続く一部近隣諸国による「情報戦」や「歴史戦」に対し、的確かつ能動的に対処することであると思料する。特に、戦後八十年目の本年において、歴史認識をめぐる対外的な発信が既に活発化しており、情報戦の様相が見られる。例えば、中国による「七三一部隊」を題材とした映画制作や、韓国における慰安婦像の海外設置の継続など、我が国の歴史的立場に関わる動きが続いている。

 我が国としては、こうした動きに対して効果的に対処するだけでなく、先手を打って能動的に行動する姿勢が求められる。特に、先の大戦を通じて日本が国際社会に対して果たした貢献、すなわち多くの植民地の独立に資する契機を提供したこと、朝鮮半島や台湾の統治においてインフラ整備などの基盤を築いたこと、さらには、国際社会において初めて人種差別撤廃に関する提案を行ったことなどについて、事実に基づき積極的に発信していく必要があると考える。

 以上を踏まえ、以下質問する。

 
戦後七十年談話では、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との明確な方針が示された。政府として、この趣旨を国内において徹底するため、これまでいかなる施策を講じてきたか示されたい。また、教育現場においてこの趣旨をどのように反映してきたか示されたい。さらに、いわゆる「自虐史観」からの脱却をどのように図ってきたか示されたい。

 
石破首相は「戦後八十年談話」は発出しないとしつつ、有識者会議を設置し、令和七年八月を目途に成果を公表する方針と報じられている。しかし、報道されているような「日本がなぜ無謀な戦争に突き進み、甚大な被害を生じさせたのかを検証する」といった一面的な視点から議論が行われるのであれば、いわゆる「自虐史観」への回帰を招き、歴史認識をめぐる国内外の対立を再燃させる懸念がある。また、令和七年四月から八月という短期間での結論ありきの議論は拙速であり、他国による情報戦の格好の材料となるおそれも否定できない。前記に鑑み、当該会議を設置するか否かには充分に慎重な検討が必要であり、仮に設置するとしてもその具体的な形態には適切な検討が必要である。
 以上を踏まえ、そもそも当該会議の設置が必要であるのか、仮に設置するのであればその目的、議論の視座、スケジュールの妥当性及び外交的影響などについて、政府の見解を示されたい。

 
歴史認識をめぐる議論に大きな影響を与える有識者会議を設置するということであれば、その構成に当たっては、見解の多様性と中立性が強く求められる。政府として、当該会議を設置する場合は、その有識者をどのような基準で選定する方針か示されたい。また、戦後七十年談話の精神を正しく踏まえ、いわゆる「自虐史観」に捕らわれない歴史認識を有する有識者の意見が適切に反映されるよう配慮する考えがあるか、政府の見解を示されたい。

 
有識者会議を設置するのであれば、国際的な歴史認識をめぐる議論や、我が国の対外的な情報発信の在り方を見据え、歴史的事実に基づく発信の強化に資する体制とすることが最も重要であると考える。その際には、いわゆる「自虐史観」に捕らわれない歴史認識を有する有識者の意見を取り入れることや、産業遺産情報センターにおける展示、新たに検定合格した教科書に示されている視点なども議論の参考として活用すべきと考える。政府として、こうした構成や検討の基本的な方向性について、どのような考えを有しているか示されたい。

 
戦後八十年という節目を迎えるに当たり、我が国の歴史的立場を貶めるような宣伝活動が、国外において改めて顕在化している。こうした動きに対し、政府としては受け身に構えるのではなく、先手を打った戦略的な対応が求められると考えるが、現時点においていかなる施策を講じているか示されたい。また、今後の対応方針について、政府の見解を示されたい。

 
これまでにも、「紅いコーリャン」及び「黒い太陽七三一」など、我が国の戦争に関する歴史を否定的に描いた映画が各国で上映されてきた。これらの作品には、歴史的事実との整合性に疑義のある描写が含まれているとの指摘もある。令和七年には「七三一部隊」を題材とした新たな映画の公開が予定されていると報じられており、国際社会における日本の評価や歴史認識に一定の影響を与える懸念がある。
 政府として、こうした動きに対し、過去、いかなる広報・外交的対応を行ってきたか示されたい。また、映画「七三一部隊」の公開に先立ち、事実に基づく正確な情報発信や誤解を避けるための説明など、何らかの対応を行う考えがあるか、政府の見解を示されたい。

 
「Japan’s Holocaust: History of Imperial Japan’s Mass Murder and Rape During World War II」と題する書籍が令和六年に刊行されたが、その内容には、史実との整合性や学術的信頼性に疑義があると指摘されている。この点に関し、国内外の有識者によって反論書籍の刊行が予定されていると承知しているところ、こうした民間の主体的な取組を政府としてどのように受け止めるか示されたい。また、我が国の立場や歴史的事実に基づく情報を国際社会に正確に発信する観点から、こうした動きを外交的広報の参考とする考えがあるか、政府の見解を示されたい。

 
否定的な報道や発信に対し、受け身の対応にとどまらず、我が国の歴史的貢献について積極的に発信していくことが重要であると考える。例えば、植民地の独立促進への影響、朝鮮半島や台湾におけるインフラ整備、人種差別撤廃に関する提案など、事実に基づく歴史的功績について、戦後八十年の節目を機に改めて発信強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

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